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パチスロ「メタルギア」、海外ファンから批難轟々

木曽崇国際カジノ研究所・所長

日本においてもアニメやゲームコンテンツのパチスロ化には、原作ファンから批判を浴びるリスクが常に伴います。しかし、そのような批判が海外を中心に形成されたのは本タイトルが初めてではないでしょうか。6月1日、ゲーム開発大手コナミの子会社、KPEはパチスロ「メタルギアソリッド」の公式PR映像を公開しました。この動画は海外の主要なゲーム関連サイトにおいて「コナミのメタルギア最新作はパチスロ」などとして報じられたことで、現在までのおよそ2ヵ月ほどの間に100万回を超える再生数に達しました。しかし動画サイト上の評価では、これを「好評価」とする者が千5百あまりであるのに対して、「悪評価」が5万6千票も集まり、コメント欄には主に外国語による批判が集まっています。

パチスロ「メタルギアソリッド」ティーザー

今回、パチスロ化されたのは世界でシリーズ累計約5千万本の販売数を誇る「メタルギア」シリーズの中でも、ファンの間では名作として認知される「スネークイーター」と呼ばれる作品です。開発元であるKPEはゲームコンテンツのパチスロ化にあたってCG映像を焼き直し、さらに原作にはない特別な演出映像を追加しました。しかし、これらパチスロ化にあたって行われた一連の改変が原作ファンの怒りに火を付けたようです。海外ファンからは「オリジナルのグラフィックを利用するなど、せめて原作に対するリスペクトを見せるべきだ」など辛辣なコメントが相次いでいます。

Metal Gear Solid 3 Remastered for Pachinko? WTF KONAMI!

(コナミのク●野郎が、メタルギアソリッド3をパチンコ機としてリメイク?)

海外の主要なカジノ市場では、青少年のカジノへの関心を不要に煽ることを防止するため、アニメやゲームコンテンツのカジノゲームへの転用に一定の制限がかけられています。多くの場合、原作となるコンテンツに定められた「利用対象年齢」に準ずるものとされおり、カジノを利用できない年齢層を対象として開発されたゲームやアニメコンテンツがカジノに流用されることは殆ど有りません。日本においてはアニメやゲームのパチンコ、パチスロ化はもはや普通のことになっていますが、その様な在り方に慣れていない海外ファンとっては衝撃的に受け止められたのでしょう。

また、その背景として昨年判明したゲームクリエイター小島秀夫氏とコナミの確執が存在するようです。小島秀夫氏はメタルギアの開発を一貫して主導した著名なゲームクリエイターでありますが、昨年コナミ社からその任を解かれ、独立ゲームスタジオを設立することとなりました。メタルギアの熱狂的ファンは同時に「小島ファン」であることが多く、このことがファンのコナミ社に対する不満を募らせてきた。それが、パチスロ化を引き金として表面化したのが今回の大騒動であるとも言えます。

【参考】「”メタルギアソリッド”に小島秀夫は必要ない」、KONAMI幹部がインタビューにて回答

http://damonge.com/p=11516

小島秀夫監督のいなくなった”メタルギア”に、その遺伝子は伝わっていくのだろうか。個人的なファンの意見としては、落差が怖いのであまり期待しないでおきたい。スピンオフとしての良さと本筋としての良さは別物だと思うが、今のKONAMIにとっては同一のものに感じられているのだろうか。

パチンコ業界としては他業界の著名コンテンツが転用されてくることは、新しい客層の獲得という意味も含めて喜ばしいことであります。しかし日本のアニメやゲームが既に世界の市場を相手に展開している以上、コンテンツを管理する側に立場の方々は前出のような「海外での常識」や、それで失う社会評価の毀損リスクも念頭に置いた上で、今後のコンテンツ転用の在り方を考えてゆくことが必要となりそうです。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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