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捏造だけじゃない、ビジネスジャーナルの闇

木曽崇国際カジノ研究所・所長

「相対的貧困」という社会テーマに深く切り込んだNHK特集「貧困の子」を批判的に取り上げた記事が全くの捏造であったとして、ネットメディア「ビジネスジャーナル」が炎上しまくっております。以下、問題となった捏造記事に対するお詫びを掲載した同誌記事からの転載。

お詫びと訂正

http://biz-journal.jp/2016/08/post_16526.html

当サイトに掲載した8月25日付記事『NHK特集、「貧困の子」がネット上に高額購入品&札束の写真をアップ』における以下記述について、事実誤認であることが発覚しましたので、次のとおり訂正してお詫びします。[…]

当該記事では、「今回の疑惑に対しNHKに問い合わせのメールをしてみたところ、「NHKとしては、厳正な取材をして、家計が苦しく生活が厳しいという現状であることは間違いないと、担当者から報告を受けています。ですので、ネット等に関しましては、取材の範囲ではありません。但しご意見は担当者に伝えます」との回答を得た」と報じましたが、実際には、弊社はNHKに取材しておらず、回答は架空のものでした。

上記お詫び文を読んでみると「取材が十分ではありませんでした。NHKに対し、深くおわびいたします」ととおり一辺倒の謝罪はしているのですが、実際は取材をしていないNHKに対して「問い合わせのメールをしてみた」とし、そのコメントを創作するというのは「取材が不十分」どころの話ではなく、「悪質な捏造」なのではないでしょうかね?

現在炎上騒動を起こしているビジネスジャーナルというのは、月刊誌「サイゾー」を核として日刊サイゾー、リテラ、ビジネスジャーナルなどを含む様々なオンラインメディアを展開している株式会社サイゾーが運営するメディアの一つ。私の専門に係るところではビジネスジャーナルの姉妹メディアとして「ギャンブルジャーナル」というギャンブル専門メディアも展開しており、私自身も目にする事が多いメディアグループの一端であります。

一方、このサイゾーグループの悪質性というのは今回の捏造騒動に留まりませんで、実は私自身がずっとその危険性の啓蒙を続けてきた「違法なネット賭博の利用」を、一方で推奨してきた代表的なオンラインメディアとしても知られています。例えば、2015年9月のサイゾーにおいては、以下のような連載が始まっておりました。

【横山美雪】のカジノのすゝめ「まずはオンラインで気軽にラスベガス気分楽しんじゃいましょ♪」

http://www.premiumcyzo.com/modules/member/2015/08/post_6143/

読者の皆様、こんにちは。当連載のナビゲーターを務めさせていただく横山美雪と申します。サイゾーさんにはたびたびお世話になっている私ですが、過去の取材で「ラスベガスにも足を運んじゃうくらい、カジノが大好きで♪」と話したことが功を奏してか、こうして案内役を拝命いたしました。ま、“カジナー”を公言しているくらいの私ですから、この連載では、読者のみなさんにオンラインカジノの基本の“キ”から、ハウツーまでをお伝えしていければと思っています![…]

オンラインカジノのご入金/ご出金に関しましては、ネッテラー(※オンライン上で決済できる電子マネーサービス)などのサービスをご利用いただくことになります。もちろん、換金も可能ですよ

本記事はweb版のみならず、書籍版の月刊サイゾーにおいても掲載された連載記事でありますが、AV女優をナビゲーターとして立てながら、オンラインカジノの遊び方を指南する内容であり、記事中では「ネッテラーなどを利用すれば換金可能」と明記をしております。ところが、当ブログでもこれまで散々扱ってきた通り日本から海外の賭博サイトにアクセスを行いギャンブルする行為は刑法の禁ずる違法行為であり、既に国内では一般利用者の中で逮捕者も出ている状況です。

【参考】詳細解説:海外ネットカジノ利用者に逮捕状請求

http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/9197863.html

実は上記記事は本誌の月刊サイゾーでの広告掲載とセットになったオンラインカジノのPR記事であるワケですが、サイゾーはこのような違法行為を推奨することで広告料収入を獲得するというコンプライアンス上、非常に問題のあるビジネスを行っている。このような記事というのは月刊サイゾーのみではありませんで、例えば今回炎上騒動のおこったビジネスジャーナルの過去記事の中にも見る事ができます。以下、ビジネスジャーナルの該当記事へのリンク。

【参考】美女と遊べるオンラインカジノ「36BOL」を知ってる?初心者でも手軽に稼ぐチャンス!?

http://biz-journal.jp/2015/06/post_10216.html

実はこのようなサイゾーグループにおける違法なオンラインカジノのPR記事に関して、たまたま機会が有ったので以前、サイゾーグループのオーナーである苫米地英人氏に直接、問題を指摘したこともあるのですが、苫米地氏は「編集権には介入しないのだ」といった理屈で、当時の私の指摘をかわしております。「編集権の不介入」というのはメディア企業の株主としては殊勝な心がけではあるとは思うのですが、「違法行為の推奨で利益を得ている」というのは編集権以前のコンプライアンス上の問題だと思うのですがね。

当然、そこから配当を得る立場のオーナーとして、自社の行っている問題のある営業行為を放置する立場というのは如何なものかと思うワケですが、同時に実は苫米地英人氏は「カジノは日本を救うのか?」というタイトルで書籍を出しており、自身の著書の中で「カジノは不正の温床だ」という論を大々的に展開し日本のカジノ合法化反対を表明して居たりもしています。しかも、出版社は当のサイゾーで。

「カジノは日本を救うのか?」苫米地英人著(出版社: サイゾー 2014/11/17)

私としては「オマエ等、どの口でカジノ合法化の反対するんだ?」としか申し上げ様が御座いません。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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