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第1エンド「平昌五輪プレシーズン開幕! どうぎんカーリングクラシックで今季を占う」

竹田聡一郎スポーツライター
ソチに続き平昌五輪も出場を狙う北海道銀行フォルティウスのスキップ・小笠原歩。

ニッポンカーリング界にとって重要なシーズンが始まる。

リオ五輪も開幕していないのに何を気の早いことを。と感じる方も多いと思うが、2018年平昌五輪は2月8日から始まるため、カーリング界のカレンダーで確認すると、五輪は2017/18のシーズン真ん中に位置する。

つまり、実質、2016/17の今シーズンがプレシーズンとなるのだ。

カーリングの五輪出場枠は男女共に10カ国。五輪から逆算して直近2回の世界選手権、つまり2016年と17年の結果から選定される。世界選手権の順位に応じたオリンピックポイントが振り分けられ、その合計の上位7チームに開催国の韓国を足した8チームが今季終了時までに出揃う。ちなみに残りの2枠は、世界選手権出場実績のある国が、17年12月に開催予定の最終プレーオフで競うことになる。

日本勢だが、まず女子の現状をさらっていこう。

2月に青森で開催された日本選手権を制したロコ・ソラーレ北見(以下LS北見)が、日本代表として3月にカナダ・スウィフトカレントの世界選手権に派遣された。

予選リーグを首位で通過し、決勝トーナメントでも高いパフォーマンスを見せ、決勝では惜しくもスイスに敗れたが、銀メダルに輝いた。日本カーリング界初となる世界選手権でのメダル獲得という快挙である。

これで得たオリンピックポイントは12。同じレギュレーションで争われた14年ソチ五輪出場レースで、上位7チームに入るために必要だったボーダーラインのポイントは9。つまり、来年3月に北京で開催される世界選手権に仮に日本は出場できなくても、日本代表として平昌五輪出場枠はほぼ確定である。

続いて男子。

同じく2月の日本選手権の王者であるSC軽井沢クラブが、4月にスイス・バーゼルで行われた世界選手権に出場し、こちらも4位入賞という過去最高の成績で9点のオリンピックポイントを獲得した。

14年ソチ五輪出場に必要だったボーダーポイントは10であるため、平昌出場には若干の上積みが求められる。そのためには11月のパシフィックアジアカーリング選手権(韓国・義城市)で中韓などアジアのライバルを倒し2位以内に入り、来年4月の世界選手権(カナダ・エドモントン)へ進出しなければならない。

女子はほぼ確実、男子はPACCさえ突破できれば安心。ジャパンの平昌五輪への視界はそれぞれ良好と言えそうだ。

では、国内選考はどうなっているのか。

カーリングは他の競技と違い、アスリートの記録や成績を基に代表選手が選考されるのではなく、チーム単位で日本代表が決まる。コミュニケーションの共有が欠かせないゲームであるためで、サッカーでいうと例えば鹿島アンドラーズがJリーグを制したら、鹿島アントラーズがそっくりそのまま日本代表となる。

上記のサッカーの例でいうと、Jリーグにあたるのが毎年、2月に開催される日本選手権(2017年の大会は冬季アジア大会開催の関係で1月に軽井沢で開催される)で、それを制した2チーム、前述のように男子はSC軽井沢クラブ、女子はLS北見が今季は日本のナショナルチームとして活動する。

平昌五輪については、男女共にこの2チームと来年の日本選手権優勝チームで開催される代表決定プレーオフで競われる。つまり、SC軽井沢とLS北見が連覇を達成した場合、五輪代表チームに内定されるのだ。

つまり、今季は平昌五輪代表チームが決定するシーズンだ。

SC軽井沢やLS北見をはじめ、男子のチーム東京や札幌4REAL、女子のチームフジヤマや北海道銀行フォルティウスら有力チームはすべて、来年1月の日本選手権に向けてピーキングしてくるだろう。

その重要なシーズンの開幕戦にあたるのが、今週末に開催される「どうぎんカーリングクラシック」だ。昨季、誕生したばかりのタイトルながら国内では最大級のカップ戦で、今大会からは男女別となり、出場チームも男女それぞれ8チーム、計16チームが札幌に集う。

男女共に、日本選手権トップ3がエントリーし、海外からはカナダやドイツ、中国、韓国からもナショナルチームが出揃った。本場カナダを中心に展開するワールドカーリングツアーや、世界選手権とも比較できるハイレベルのゲームが期待できそうだ。

男子の軸は前回王者のTeam KOREA、同2位で世界選手権4位のSC軽井沢だ。そこにドイツ代表、中国代表といったナショナルチームが絡んでくるという展開になりそうだ。

ダークホースとしては地元の札幌4REALが挙げられる。日本カーリング協会の専任コーチとして女子の「チーム青森」を指導し、トリノ、バンクーバー両五輪にも参加した阿部晋也が98年長野五輪出場の佐藤浩と共に立ち上げたチームだ。今季から日本ジュニア代表経験もある札幌学院大学の元スキップで「ジュニアレベルではトップクラスのスキルがある」と阿部が評する谷田康真を新メンバーとして迎えた。新しい矢を得てホームの利を活かし、世界を相手にアップセットを狙いたい。

女子は16年世界カーリング選手権2位のロコ・ソラーレ北見(以下LS北見)や同4位のカナダ、10位のドイツ、アジアからは韓国と中国、参加の半分以上がナショナルチームという豪華なチームが揃った。

地元札幌からは北海道銀行フォルティウスが参戦。男女混合の昨大会で唯一、表彰台に上った女子チームで、今季はそれ以上の成績を残したいところだ。

五輪代表権を争うLS北見とは別ブロックだが、両チームが世界の強豪相手に勝ち進めば決勝トーナメントでの対戦が実現する。五輪に向けて国内選考の前哨戦になりそうだ、とメディアが水を向けても「オリンピックの前に今やるべきことがあり、それらをこなすことが第一です」(北海道銀行/小笠原歩)、「まずはしっかり自分たちのカーリングをすることに集中したい」(LS北見/藤澤五月)と、両スキップは自チームの始動と調整を今大会の優先事項としている。

とはいえ、両チームとも秋から開幕するワールドカーリングツアーに参加するため、欧州や北米を転戦する。“本番”の日本選手権を前に国内で対戦する機会は今季、最初で最後であることは間違いない。

「トップカーラーが極上の『涼』を贈る」と銘打ったこの大会。涼しいアイス上で、五輪まで見据えた熱いゲームが数々、展開されることだろう。重要なシーズンの幕が上がる。

「どうぎんカーリングクラシック」

■日時

8月4日(木)-7日(日) ※競技は5日(金)から。

■会場

どうぎんカーリングスタジアム(札幌市豊平区月寒東1条9丁目)

■入場料

各日500円

http://www.sapporo-curling.org/hbcc/

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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