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第9エンド「カーリング日本選手権3日目、SC軽井沢が無傷でプレーオフ進出決定。追うは札幌か、北見か」

竹田聡一郎スポーツライター
SC軽井沢のリード・両角公佑。このそこはかとない小動物感に萌える女子、一定数。

3日目を消化した「第34回 全農 日本カーリング選手権大会」だが、首位のSC軽井沢クラブが今日も連勝を重ね、2試合を残しプレーオフ進出を決めた。

昨年の決勝カードとなった朝のI.C.E.(チーム東京)戦では、序盤から連続スティールで得点を重ね、そのまま危なげなく逃げ切る。まずリードの両角公佑(もろずみこうすけ)がしっかりと、ガードストーンを効果的な位置に散らし、そこを土台に山口剛史、清水徹郎が相手が無視できないストーンを続けて投げ、対するI.C.E.はどうしても1手遅れた展開を強いられた。スキップの両角友佑も「コースケがしっかり形を作ってくれた」と珍しく実弟をねぎらった。

午後の札幌学院大学戦は後攻でゲームに入りながらも、ミスから2点スティールを許し、今大会初の2点リードを奪われたが「あれで逆に締まった」と清水が語るように石を大胆にためつつ精緻にウエイトもコントロールし、ビッグエンドを続け5連勝を豪快な逆転勝ちで飾った。

プレーオフ進出を決めたということでチーム全員が揃って取材を受け(通常はスキップひとりが対応する)、「五輪について改めて思いを聞かせてください」という問いに、両角友は「だんだん(時期的に)近づいている実感と同時に、実力もついてきたと思えるようになった」、両角公は「バンクーバー、ソチに続く挑戦ですが、今回はメダルを取りに行く挑戦にしたい」とそれぞれ語る。ほとんどすべての他チームが「五輪出場」を目標に掲げる中、五輪でのメダルを公言できる、世界に目を向ける余裕があるのは現状では彼らだけだ。果たしてこの王者の5連覇を阻むチームは出てくるのだろうか。

昨年準優勝のI.C.E.はSC軽井沢戦に続き、午後の東京CA戦も落とし1勝5敗という最下位で残り2戦に挑む。かろうじてプレーオフ進出の望みを残しているだけに、彼らの持ち味である「チームとしてやれることを共有して淡々と遂行する」といったシンプル・イズ・ベストなゲームでの復調が待たれる。

そして明日の4日目、プレーオフ進出の順位に直結してくるであろう、キーとなるチームがある。札幌4REALだ。3日目は1戦1勝で通算、4勝1敗とし2位につけているが、明日は朝に背水の陣を敷くI.C.E.戦、午後には王者SC軽井沢戦も控えるタフな一日だ。

スキップの阿部晋也はこれまでの戦いを振り返り「しっくりきていない部分もあったけど、シートごとの(ストーンの)曲がり具合をしっかり掴んで戦いたい」としたうえで、明日の2連戦については「まずは朝にしっかり東京に勝って、SC軽井沢戦を迎えたい」と一戦必勝の構えだ。

このゲームは明日、2日(木)午後16時から、NHK-BSで生中継の予定だ。日本最高峰、そして五輪がかかってくるゲームをぜひご覧いただけたらと思う。ここで紹介した選手の熱い咆哮が聞けます。はしっこのほうで緑のパタゴニアを着て、その上から報道用の黄色いビブスをかぶっている小太りなおっさんがいれば、それは僕です。そこは絶賛、ウォーあるいはスルーしてくれていいですけど。

3日目のホットハンドは、SC軽井沢の5連勝とプレーオフ進出の原動力となったリード・両角公佑だ。

おそらくリードとしては参加チーム1位であろうショット率で「調子は上がってきました」と本人も語り、「もう一段階、上がれば世界トップのリードになれる予感もしてきた」とメディア用にリップサービスをするくらい好調を維持している。ショットだけではなくスイープでストーンを伸ばすを場面も多い。開幕前、「マカロン竹田とかいって、全然、僕らにはマカロン差し入れてくれませんね」とチクリと言われてしまったので今回、優勝したらしっかり進呈しようと思う。

明日の首位決戦ではまず、この両角公佑と4REALの若手“ヤス”こと谷田康真(たにだやすまさ)の両リードが、いかに効果的に、あるいは相手の嫌がる場所にストーンを置くことができるか。そして相手のそれをうまく払うことができるか。そのあたりが鍵になってきそうだ。

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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