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第10エンド「カーリング日本選手権4日目、王者SC軽井沢に北の刺客、札幌4REALが噛み付く」

竹田聡一郎スポーツライター
1月に全道を制した札幌4REAL。右から2人目が“氷上のチョイ悪”こと林佑樹。

大会4日目、予選リーグの8戦を終えた「第34回 全農日本カーリング選手権大会」だが、男子は昨年3位の4REAL(札幌)が首位を走る王者SC軽井沢クラブに初黒星をつけた。

スキップの阿部晋也は昨日の試合について「全然、ダメ」と自虐的なコメントを残していたが、午前中のI.C.E.戦で「少しずつアジャストできた」と復調の兆しを見せると、午後のSC軽井沢戦では好ショットを連発。クロスゲームを制して通算成績を6勝1敗とし、SC軽井沢と同率で首位に並んだ。大会規定によると勝敗が並んだ場合、プレーオフの進出を巡るケースではタイブレークが行われるが、プレーオフ進出を決めたチーム同士の順位決定には直接対決の結果が反映される。つまり明日、SC軽井沢と4REALが共に勝利、あるいは敗北した場合は4REALが1位で予選通過となる。

それにしてもハイレベルなゲームだった。序盤から両チームとも高い集中力を保ち、ミスらしいミスは1〜2度。一方が好ショットを決めれば、相手はそれを無効化するようなショットをかぶせ、ハウス内に石を積んでゆく。センチ単位で石を置き、0コンマ何秒かの判断で適切なラインコールを指示する。技術と戦術を駆使してハウスの中で勝負し続けた。

結果は4REALに軍配があがったが、どちらに転んでもおかしくないゲームだったことは確かだ。「国内でこのレベルのゲームを観られるようになった」と関係者も感無量で語ってくれたほど、好ゲームだった。プレーオフ、あるいは決勝でまたこのようなゲームが期待される。

残る2枠だが、4チームで競うことになる。ボーダーは通算5勝あるいは4勝だ。

まず、札幌学院大学とアイスマン(北見)がそれぞれ4勝を挙げており自力でのプレーオフ進出が可能だ。札幌学院大学は4REALと、アイスマンは3勝のチーム荻原との対戦を残す。チーム荻原はなんとか勝利してタイブレークに持ち込みたい。同じく3勝の青森CAも条件付きではあるが、最終戦のI.C.E.(チーム東京)に勝てばタイブレークが見える。

このように今大会、消化試合がまったくなかった。大混戦の中、昨年準優勝のI.C.E.が下位に沈んだが、これは男子カーリング界の底上げにほかならない。SC軽井沢の両角友佑は「ここ(日本選手権)まで来たチームはどこも技術があるので楽に勝てるゲームなんかないし、どこが勝ってもおかしくない」と初日に言っていたが、その言葉を裏付けるように首位の4REALもチーム荻原に金星を献上した。長く男子カーリング不毛の時代が続いていたが、これだけの熱戦を展開できるリーグが出来上がったのは選手や協会の努力の賜物だろう。来季以降も最終戦まで全チームに可能性が残るようなリーグ戦を期待したい。

大会4日目の「勝手にホットハンド」は暫定首位に浮上した、4REALのセカンド“氷上のちょいワル”こと林佑樹だ。キーエンドとなった8エンドで1投目タップ、2投目でダブルテイクアウトをしっかり決め、大勢を決すショットを放ったスキップの阿部晋也、90パーセント以上のショット率を叩き出しゲームメイクしたサードの松村雄太も捨てがたいが、彼らはプレーオフやファイナルでさらなるスーパーショットを見せてくれるだろう。という期待込みで見送りたい。

林佑樹も80パーセントを超えるショット率を記録し、クリアリングでもノーミスだった。最終エンドでも阿部が「あれで勝ちを確信できた」というダブルテイクアウトを力強く決め、NHKのオンアイスのカメラにドヤ顔を抜かれるなど、これで全国区の人気者なってほしいものだ。そもそも彼は紳士で、10代の頃から…これ書くとまずいけど、とにかくこの日は2試合とも安定したパフォーマンスでチームを支えた。

いよいよ週末を迎え、予選リーグ最終戦とタイブレーク、プレーオフだ。五輪代表まで4試合。最後に笑うのはどのチームだろうか。

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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