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第19エンド「ミックスダブルス日本選手権、初日と2日目。推薦強化3チームがいずれも3連勝」

竹田聡一郎スポーツライター
常呂三大名産品は、ホタテ、タマネギ、カーラー。その最高品質がこのふたりだ。

「第10回 全農 日本ミックスダブルスカーリング選手権大会」が3月1日に開幕し、初日と2日目で予選リーグの3試合が開催された。

注目の強化推薦3チームはいずれも3連勝。高いデリバリー技術をベースに圧倒的なパフォーマンスを……と思いがちだが、当の本人たちは謙虚そのものだ。

「どのチームも戦い方を知っているので毎試合、勉強している。ゲームを重ねれば重ねるほど課題が出てくる」とチーム阿部の小笠原歩がコメントすれば、チーム松村の松村雄太も「僕らが見たことない、難しい形を作ってくる」と警戒を解かない。初戦で歴代を最多優勝を誇る賢司・美智子のチーム苫米地と対戦し、5-0から1点差まで追い上げられたチーム谷田の谷田康真も「リードされてても、しっかりゲームを作ってきたので怖かった」語るなど、各チームとも4人制とはまた異なる未知のプレッシャーを感じた様子だ。

その一方できっちり勝ち切る勝負強さを見せ、選手によっては新たな可能性も感じさせてくれた。3試合目で勝負を決めるショットを託されたチーム谷田の小野寺佳歩は「すごい気持ち良かった。ドローのほうが(テイクより)好きなので」と4人制ではなかなか披露する機会のないラストドローを沈めてご満悦だった。

逆にチーム松村の吉村紗也香にはその能力の高さを改めて示す場面があった。2点をリードした7エンドで、チームは昨季から導入された新ルール・パワープレーを今大会、初めて宣言。センターではなくコーナーガードを置いた状態からのスタートで攻め方を確認した。松村は「最後(吉村)にタフなショットを残してしまったけど、『あれくらいだったら大丈夫』と決めてくれた」と振り返ったように、ガードに守られたハウス中央に相手の石が残る、スティールの危険もあるプレッシャーショットだった。しかし、吉村はこれを冷静に決め勝負を決める3点を奪った。決定力の高さは相変わらずで、このペアが上位進出するための大きな武器となるだろう。また、Aブロックでここまで相手に3点以上のエンドを与えなかったのは彼らだけだ。松村の「(点を)取っても、取られないカーリングをしたい」という言葉は大きな説得力を持つ。今後も安定したゲームマネジメントが予想される。

Bブロックはチーム阿部と前回準優勝のチーム青木が共に3連勝。チーム阿部の阿部晋也が「やっとミックスの流れを掴めてきた」と言い、小笠原は「昨日より良くなってきた」と徐々にエンジンが温まってきた模様だ。リードが広がったエンドでは「スコアアップで逃げてみたけれど、逃げられないのが分かった。なんとか2点にならおさえることはできる」(阿部)と試しと探りを繰り返しながら、ゆっくりとミックスの世界にアジャストし続けている印象だ。

地元出身コンビとあって、幼少の頃からふたりを知る観客が会場に駆け付けた。ふたりがかりでスイープする場面では「歩ちゃんがフルスイープしている!」「阿部君、半袖だ!」などと珍しい光景にホールは湧いた。また、ミックスについては途上ということもあって、小笠原がドローの場面でテイクを放ったり、阿部が先攻で唐突にパワープレーを宣言したりと、4人制では決して見られない天然のミスも飛び出し、ますます親しみやすいペアになりつつある。

どの選手にとってもカーラーとして新たな幅を生む、あるいは能力の高さを実証する5日間となることは間違いなさそうだ。

そして「勝手にホットハンド」だが、史上初の選出なしとしたい。

これは、どう説明しても書き手としては言い訳になってしまうのだが、正直、とても難しい。ミックスダブルス特有のハウスを狭くする縦に石を積むショット、センチ単位で強いストーンが入れ替わる攻守の切り替え、場面によっては幅よりアングルが重視されるストーンの集まり方、それぞれを実際に目の当たりにすると、「結局、どのショットが効いていたのか」という結論がなかなか出ない。両軍5投ずつなので、ある意味ではすべてがキーショットに化け、時には3投目でスキップショットのような役割が求められたりもする。

そのあたりを前回王者のチーム札幌(蒔苗匠馬/まかなえたくま・荒木絵理ペア)の小高正嗣コーチに相談してみると「確かに難しいです。僕もコーチや運営スタッフ、審判員として5季ほどミックスに携わらせてもらっていますが、戦術的にまだ把握していない部分も小さくない。ナイスショットは多いですけど、それがデフォルトみたいな部分もある。でもそれを真っすぐに伝えるという意味では、『まずは該当者なし』でもいいんじゃないですか」と、いかにも東大卒、しかも大学院数理科学研究科博士課程修了という感じでメガネのブリッジを音を立てずに上げてアドバイスしてくれた。続いて、小高さんは昨年の世界選手権(スウェーデン・カールスタッド)にも帯同したらしく、「北欧は良かったですね。美しい街並はモダンとレトロが混在し~」とか話し出したのでそれは聞かずに早めに離脱した。

ということで、目を皿のようにして観戦し、なんとか4日土曜、予選終了時までに予選のホットハンドを選べるようにしたい。誰も楽しみにしてないかもしれないが、もう少しお待ちいだければ幸いです。

現状では3連勝を果たした強化推薦3チームの6選手をはじめ、同じく3連勝のチーム青木の藤井美香、青木豪らのミスの少ないショットセレクション、2勝1敗で追う苫米地夫妻の試合巧者っぷりなどが光った。それぞれの個性をもって、誰もが見せ場を作ってくれた印象だ。各チームこのパフォーマンスを維持できるか、あるいは尻上がりに調子を上げてくる他のチームが現れるのか、まだまだ予想がつかない。予選リーグは残り4試合だ。

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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