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「ねじれ」国会解消への一歩:自民党、都議選大勝

竹中治堅政策研究大学院大学教授

都議選結果の意味

6月23日に行われた東京都議会選挙で自民・公明両党が圧勝した。自民党は59議席、公明党は23議席を確保した。一方、民主党は惨敗した。獲得議席は15に止まり、共産党の確保した17議席をも下回ることになった。

この都議会選挙の意味について三つのことを指摘したい。

まず、この結果は安倍内閣を多くの都民が支持する一方で、昨年の総選挙以来の民主党への否定的評価が続いているということを示している。特に安倍内閣の経済政策=「アベノミクス」が内閣に対する支持に繋がっている。過去、民主党は野党時代に、最初は構造改革を掲げ、次に格差是正をうったえ、自民党に対抗した。だが現在、民主党は「アベノミクス」に対抗する有効な政策を提示できていない。このため、政策決定過程の混迷、外交の混乱、党内抗争など民主党政権時代に作られたマイナスのイメージに引きずられたままなのである。

次に、多くの選挙区で非自民票が民主党、維新の会、みんなの党に分散したことが自民党にとって有利に働いたことは間違いない。分散の及ぼしたものはこれに止まらない。維新の会やみんなの党が候補者を擁立した選挙区では民主党の候補者の得票が抑えられ、この結果、共産党が漁父の利を得る形で当選者数を増やすことになった。

最後に、来月予定される参議院選挙にとって持つ意味について簡単に触れたい。現在、関心を集めているのは参議院選挙後に、与党自民・公明両党が過半数議席を確保し、「ねじれ」国会を解消できるかということである。自民・公明両党の非改選議席はそれぞれ49と9である。参議院の過半数議席は122である。計算すると「ねじれ」解消のために必要な議席数は64となる。

小泉旋風の吹き荒れた2001年参院選を上回る勢い?

都議会選挙と国政選挙が同じ年に近い時期に行われる場合、都議会選挙は国政選挙の前哨戦となる。ここで参考となるのが2001年である。この年は、6月に都議会選挙が行われ、7月に参議院選挙が行われた。2001年4月には小泉純一郎首相が「聖域なき構造改革」を掲げて登場、小泉内閣は高い支持率を誇った。

2001年の参議院選挙は1990年代以降これまで自民党が最も多くの議席を確保した選挙である。この時の獲得議席数は64であった。それではその前哨戦となった6月の都議会選挙で自民党はいくつの議席を確保したのか。

53議席である。今回の59議席はこれを上回る。

単純に考えれば、都議会選挙の結果は、来月の参議院選挙で自民党の獲得議席が64をも上回る可能性のあることを示している。確かに、2001年に比べ、野党はさらに分裂している。公明党が獲得する議席を考えれば、自民・公明両党は「ねじれ」解消に大きく近づいたと言えよう。

一方民主党をはじめとする野党が態勢を立て直すためには一部の選挙区で候補者の擁立を撤回するなど大胆に選挙協力のあり方を見直す他はない。

政策研究大学院大学教授

日本政治の研究、教育をしています。関心は首相の指導力、参議院の役割、一票の格差問題など。【略歴】東京大学法学部卒。スタンフォード大学政治学部博士課程修了(Ph.D.)。大蔵省、政策研究大学院大学助教授、准教授を経て現職。【著作】『コロナ危機の政治:安倍政権vs.知事』(中公新書 2020年)、『参議院とは何か』(中央公論新社 2010年)、『首相支配』(中公新書 2006年)、『戦前日本における民主化の挫折』(木鐸社 2002年)など。

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