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ビッグデータによる予測でも自民300議席

竹中治堅政策研究大学院大学教授

ビッグデータによる議席数予測

Yahoo!Japanが12月5日、14日に行われる総選挙の各党の獲得議席をビッグデータを活用して予測し、公表した([hoo.co.jp/info/bigdata/election/2014/02/ ビッグデータが導き出した第47回衆院選の議席数予測])。低めの予測でも自民党と公明党の予想獲得議席は合わせて、348という衝撃的な数字となっている。野党の推定獲得議席は117である。

すでに新聞各紙が12月4日に選挙情勢を報じており、与党が有利な状況を伝えている。Yahoo!Japanは新聞各紙とは異なる方法で予想獲得議席をはじき出しているものの、与党有利という予測は新聞各紙と同じものである。

4日付『読売新聞』『朝日新聞』『毎日新聞』『産経新聞』は自民党が300議席を超えることが予想されると報じる一方、『日本経済新聞』は自民党は300議席を「うかがう勢い」と伝えている。

この中で『毎日新聞』は、具体的な議席数まで踏み込んで報じている。例えば、自民党は320議席(+14−15の幅)、公明党は33議席(+2−3の幅)、民主党は64議席(+14−11の幅)と予測する。同紙によれば与党議席は369から335の範囲となる。総議席数は475であり、無所属も含め野党議席は140から106の範囲となる。

一連の数字は、各党、特に野党に驚きをもって受け止められていると一部では報じられている(『朝日新聞』2014年12月5日)。

自公合わせて358?

Yahoo!Japanは、二つの数字を出している。投票率60%前後で自民党は311議席、公明党は47議席、民主党は61 議席を獲得すると予想する。与党議席は358、野党議席は117となる。投票率が50%台前半の場合には自民党は300議席、公明党は48議席、民主党は69議席を獲得するとはじき出す。この場合、与党議席は348、野党議席は127 となる。

現在、再議決に必要な議席数は317で、いずれの予測のもとでも与党の議席はこの数字を大幅に上回っている。

新聞各社とYahoo!Japanの予測方法には大きな違いがある。新聞各社は電話世論調査や独自取材に基づいて情勢を分析している。例えば、上記の『毎日新聞』の数字は共同通信社の実施した電話世論調査に基づいている。共同通信社は約12万1700人もの有権者に対して電話で世論調査を実施している。

これに対し、Yahoo!Japanはビッグデータ=検索のデータを活用して数字を算出している。具体的には、特定の政党への得票を推測させる言葉への検索量と選挙公示前と公示後の検索量の変化の度合いを考慮するモデルによって政党数を予測している。

昨年の参議院議員選挙の際にYahoo!Japanは同様の手法によりに数回にわたり、選挙結果を予測した。公示日での予測は自民党67議席、公明党11議席、民主党19議席、野党全体で43議席であった。実際の獲得議席は自民党65、公明党11 、民主党17、無所属を含め野党全体では45 であった。Yahoo!Japanの予測の精度はかなり高かったのである。

今後、情勢が変わる可能性のあることは言うまでもない。ただ、Yahoo!Japanによる予測の意義は新聞各社とは異なる手法によっても、やはり選挙戦の序盤において与党が優位な情勢にあるということが示されていることである。

公明党と共産党の予想議席

ただ、注目されるのは公明党の予想議席数が40台、共産党の予想議席数が20台となっていることである。これは新聞報道と異なる点となっている。共産党は投票率60%前後で25議席、投票率50%台前半で23議席を獲得すると予測されている。『毎日新聞』によれば、共産党の獲得議席は14(+5−2の幅)と予想されている。

公明党について考えてみる。現在の選挙制度で公明党が獲得した最大議席は2003年11月総選挙の34議席であり、10以上大きな数字が予測されている。共産党の場合、定数が480議席になってから最大の議席を獲得したのは2000年総選挙で、この時の数は20であった。2003年総選挙以降の獲得議席は10議席以下であり、倍以上の数が予想されている。

公明党と共産党の実際の獲得議席はビッグデータによる予測の精度を占う一つの重要な材料となるだろう。世論調査に頼らない検索データに基づく予測の精度が今回の衆議院議員総選挙においても高いものなのか注目を続けたい。

政策研究大学院大学教授

日本政治の研究、教育をしています。関心は首相の指導力、参議院の役割、一票の格差問題など。【略歴】東京大学法学部卒。スタンフォード大学政治学部博士課程修了(Ph.D.)。大蔵省、政策研究大学院大学助教授、准教授を経て現職。【著作】『コロナ危機の政治:安倍政権vs.知事』(中公新書 2020年)、『参議院とは何か』(中央公論新社 2010年)、『首相支配』(中公新書 2006年)、『戦前日本における民主化の挫折』(木鐸社 2002年)など。

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