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圧巻! 名古屋のヒメボタル360度パノラマ

関口威人ジャーナリスト
動物写真家、小原玲さんが撮影した名古屋・相生山のヒメボタルの光

名古屋市在住の動物写真家、小原玲さんが、同市天白区の相生山(あいおいやま)緑地で撮影したヒメボタルの光を、360度のパノラマ画像として公開しています。ご本人の了承を得て紹介させていただきます。

以下のURLから画像にアクセスして、パソコンならマウスを上下左右に動かしてぐるっとご覧ください。

360パノラマで撮った相生山道路建設予定地のホタル

筆者のiPad miniだと指先のスワイプで動かせて、また違ったバーチャル体験になります。基本は静止画のはずですが、光跡がキラキラとまたたいて本当に生きているように見えます。すごい!

公開されているヒメボタルのパノラマ画像の一部
公開されているヒメボタルのパノラマ画像の一部

小原さんはオーロラ写真家の田中雅美さんとともに撮影技法を考え、自動撮影用雲台を独自に開発するなど1年がかりで準備。今年の見ごろの時期を待ち、6月2日深夜1時にホタルの撮影を開始、日の出前の4時に背景を露光、帰宅して朝の7時までかかってパノラマを作成したそうです。

「準備から、撮影も仕上げも半端ない苦労をして撮っています。どんな場所だったか次世代に伝え残したいという想いで頑張りました」とブログに記しています。

道路建設で揺れる「ヒメボタルの里」

ここは、幅10m以上の2車線道路が建設されようとしている現場です。

名古屋市東部の住宅開発にともない、1957(昭和32)年に都市計画決定された「弥富相生山線」という市道。93年に国の認可が下り、2004年に着工されました。しかし、長さ約900メートルの8割ほどが完成していた09年、初当選した河村たかし市長が「道路の意義の見直しが必要」として工事を中断させました。

道路建設が中断した2009年当時のヒメボタル(小原玲さん撮影)
道路建設が中断した2009年当時のヒメボタル(小原玲さん撮影)

市は専門家を交えた委員会を開いてヒメボタルなどへの環境影響をあらためて検証してきましたが、結論は出ませんでした。地元には「ヒメボタルの里として環境を保全するべき」という意見と「渋滞解消や緊急時のため早期開通が必要」という意見と賛否両論があります。河村市長はこの秋までに何らか形で住民意向調査をして判断するとしていますが、いったん分断された地域にはかなりのしこりが残っており、すんなり決着するかどうかは分かりません。

私は1週間ほど前に今年のホタルを見に行きました。小原さんの写真ほど多くの光の乱舞を見ることはできませんでしたが、陸生のヒメボタルの光の明滅は本当に独特で印象的です。一緒に行った小学生の息子たちも「こんなに近くで見えるんだ」と興奮していました。

ホタルなど発光生物を研究する名古屋大学大学院生命農学研究科の大場裕一助教は「パノラマ画像を見ると、ホタルが広い範囲にまんべんなく、一定の高さで飛んでいることが分かります。しかも意外に低いところを飛んでいるのが一般の人にもよく分かるでしょう。ホタルの飛ぶ高さは種による違いはもちろん、気温や明るさなどさまざまな要因が関係します。こうした要因や種の性質を考える上で、貴重な資料になるでしょう」と解説してくれました。

皆さんにはどう見えますか?

ジャーナリスト

1973年横浜市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学)修了。中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で社会問題をはじめ環境や防災、科学技術などの諸問題を追い掛ける。2022年まで環境専門紙の編集長を10年間務めた。現在は一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」代表理事、サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」編集委員、NPO法人「震災リゲイン」理事など。

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