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サルでもかかる花粉症の話

田中淳夫森林ジャーナリスト
スギ花粉に苦しむのは人だけではない……。

2月も半ば。この季節になるとニュースに登場するのが、花粉症。

天気予報には「今日はスギ花粉が多く飛散します」などと予報まで出る。

私は、花粉症ではない。だから花粉症の苦しみはわからない。キッパリ 

おかげで毎日、スギもたくさん生えている森の中を散歩できるのだ。

花粉症に関する情報は巷にあふれている。花粉症の苦しみを訴える怒りの言葉。どんな食品が緩和するのか。新しい薬に防護法、治療法。スギ花粉のない北海道や沖縄に滞在しよう、なんてツアーまで組まれている。だから今更私が記すことはない。

そこで今回は、花粉症で苦しんでいる人にはまったく役に立たない情報を。

それは動物の花粉症の話。

花粉症とは人間だけのものと思われていたが、実は動物も花粉症になることが確認されている。とくに注目されたのは、ニホンザルだ。さらにイヌやネコだって花粉症になるのだ。

最初に発見されたのは、1986年の広島県の宮島である。日本モンキーセンター宮島研究所(現在は廃止、サルも移送された)で花粉症の飼育員が、同じように鼻水を垂らして涙目になっているサルを発見したのだ。

そこで研究が始まって、実際にサルの血液からスギ花粉の抗体が見つかり、花粉症の罹患認定がされたわけである。その後、淡路島などのニホンザルも花粉症の個体がいることがわかって確実になった。

さらにその後、イヌやネコでも花粉症になることが確認された。症状はサル以上にわかりにくいが、基本的な症状は、人間と一緒で鼻水やくしゃみ、目のかゆみなど。ひどくなると四肢の先端や下腹部、目の周り、耳などの皮膚にも炎症が起きるらしい。 

サルにイヌ、ネコにとどまらず、おそらくほかの哺乳類にも花粉症はあるのだろう。

イヌやネコは、人やサルのようにかゆいところも自分でかきにくいだけに、辛いだろう……それがどれほど辛いか、花粉症でない私にはわからない(~_~;)。

花粉症はアレルギー症状であり、免疫反応である。本来は寄生虫からの感染防御の役割を持つ血液内のIgE抗体が、どうしたことかスギ花粉に反応して悪さをすると言われている。だから寄生虫が体内にいる人は花粉症にならないという説もある。抗体が寄生虫に対応するのに忙しくて、花粉に反応するヒマがないのかもしれない。(サルやイヌ、ネコなどが飼育されたり餌付けされると、寄生虫罹患率が下がることと関係はあるのか?)

ともあれ花粉症になる遺伝子を持つ人は、日本人の場合は約4割とされるが、国民病と言われる所以だ。

ま、私は花粉症ではないので、非国民かもなあ(⌒ー⌒)。……あれ? もしや寄生虫がいるのだろうか。。。

日本は戦後、大量にスギを植えたからスギ花粉の飛散量も増した。それが花粉症患者が増える理由の一つだろう。

ただ、近年はスギに加えてヒノキ花粉症も増えているし、さらにクリやコナラ、そしてシラカバの花粉にも反応する人が増えているし、さらにブタクサやヨモギ、ススキなど草の花粉も原因植物だと指摘されている。

スギやヒノキなど植林木に批判が集まりがちだが、こうなると山野の植物の多くが対象だし、季節も春先に限らず年中だ。

大変だなあ。人間だけでなく、サルやイヌやネコも。

ま、私は花粉症でないから、わからないんだよなあ……(^^;)\(-_-メ;)。

(今回は、読者の多くを敵に回したかも……。)

森林ジャーナリスト

日本唯一にして日本一の森林ジャーナリスト。自然の象徴の「森林」から人間社会を眺めたら新たな視点を得られるのではないか、という思いで活動中。森林、林業、そして山村をメインフィールドにしつつ、農業・水産業など一次産業、自然科学(主に生物系)研究の現場を扱う。自然と人間の交わるところに真の社会が見えてくる。著書に『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)『絶望の林業』『虚構の森』(新泉社)『獣害列島』(イースト新書)など。Yahoo!ブックストアに『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』。最新刊は明治の社会を揺り動かした林業界の巨人土倉庄三郎を描いた『山林王』(新泉社)。

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