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情熱が全てを凌駕する――デビュー10年、今もファンを増やし続けるUVERworldの熱く強い言葉

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
UVERworld・TAKUYA∞(12/21横浜アリーナ)

テレビを主戦場としないため、”お茶の間的”ではないが、東西両ドームを制し、ファンを増やし続けているUVERworld

TAKUYA∞(Vo)
TAKUYA∞(Vo)
克哉(G)
克哉(G)
信人(B)
信人(B)

例えば何か”生き甲斐”を見つけることができている人は、やっぱり幸せだと思うし、それが生きる糧となりエネルギーとなって、花が水によって潤い、生きていけるように、その人の生活に彩りを与えてくれ、心を豊かにしてくれる。アーティストが奏でる音楽、発する言葉にそれを求めている人も多い。そのアーティストの存在自体が生き甲斐という人もいる。エンターテインメントの力、音楽の力の大きさを日々感じながら仕事をしているが、それは彼らに出会ったことが大きかったのかもしれない。彼らの音楽と言葉にどれだけ多くの人が勇気をもらい、背中を押され、また慰められ、パワーを注入してもらっているのだろうか。かく言う筆者もそのうちの一人である。

真太郎(Dr)
真太郎(Dr)
彰(G)
彰(G)
誠果(Sax、Mani)
誠果(Sax、Mani)

今年デビュー10周年を迎えたUVERworldという全員が滋賀県出身の6人組バンドがいる。メンバーはTAKUYA∞(Vo)、克哉(G)、信人(B)、彰(G)、真太郎(Dr)、誠果(Sax,Mani)。2005年7月にメジャーデビュー。現在までにシングル28作、オリジナルアルバム8作、ベスト盤1作をリリースしている。アグレッシブな独特のサウンド、印象的なメロディ、ボーカル・TAKUYA∞の紡ぐ歌詞が、彼らの生き様、人間力が、若者にしっかりと届いていて、10代、20代の若い世代から圧倒的な支持を集めているアーティストだ。活動の場をテレビに求めていないため、彼らのことを知らない人は当たり前だけど全く知らない。でも彼らの音楽と言葉に救われた、彼らが生き甲斐と、ブログやTwitterなどのSNSでメッセージしている人が本当に多い。彼らはこれまで、ライヴでしっかりとバンドの哲学を伝えるというポリシーを持ち、活動を続けてきたため、テレビの音楽番組に出演することもほとんどない。だから決して“お茶の間的”ではない。でも2011年に東京ドーム、2014年に京セラドーム大阪の東西両ドームを満杯にし、先日は国立代々木競技場第一体育館での4daysライヴ(10周年記念ライヴ2days、女性限定ライヴ2days)も成功させるなど、まさに上昇一途、ライヴの動員を伸ばし続けているバンドだ。ライヴが彼らの真骨頂でもある。仕事柄様々なアーティストのライヴを観る機会に恵まれているが、彼らのライヴの音響、照明の演出、映像の素晴らしさは国内屈指だ。とにかく演奏が上手い。その音が素晴らしい音響でお客さんに真っ直ぐ届く。そして日常を忘れさせてくれる幻想的な照明の中で、どこまでもリアルなTAKUYA∞の言葉と襲い掛かってくるような重い音が胸に響く。

TAKUYA∞の強烈なメッセージに心を動かされ、涙するファン

音楽と誠実に向き合ってここまでやってきた。だから、ライヴの時にTAKUYA∞が放つメッセージがまったくぶれていない。常に一貫してポジティブなメッセージを1人ひとりに向け送っている。「お前たち最高にかっこいいよ。大好きなものにまっすぐぶつかってキラキラしてる。今日燃やした情熱を、明日からほかの何かにぶつけてくれ。今日は楽しかったで終わってたら、音楽の意味なんてねーんだ。俺たちなら何だってできるだろ」と。そして、学校の先生や親、友達でも言ってくれないような、熱くも優しい言葉を投げかけてくれる。「みんなが本気でぶつかって来るのを見て、俺たちも本気になれる。いろいろ考えるより誰かの本気の瞬間を見る方が考えがまとまることだってあると思う。俺たちはいつでも本気でこのステージに立っているから、またいつでも来てくれよな」と。その歌で伝えたいことをはっきりと言葉に表し、そして歌い始める。特別なことではないかもしれないけど、これもTAKUYA∞の優しさだ。女性ファンも、圧倒的に増えた男性ファンも、みんな涙を流し、その言葉に聴き入っている。 

先日、40代女性のUVERworldファンと話をする機会があった。その人は娘さんの影響で彼らにハマッたと言っていたが、「UVERの音楽を聴いて、TAKUYA∞のメッセージを聞いて、もっと自分を出していいんだと思った」と、人生経験豊富な40代でも、彼らの歌を聴いてハッとしたという。世代に関係なく、みんな“生きた言葉”を待っているんだということ。UVERの音楽の懐の深さと、“情熱”を感じさせてくれるところが人を引き付けるのだということを再確認した。

「闇の中 何も見えないからこそ そこには希望も潜むと信じてる 真夜中 一番深い闇は 明け方の前にやって来る そうだろ?」(23ワード)「意味があるのか無いのか 結果が出るか出ないか もっかいやっても無駄か 全部やって確かめりゃいいだろう」(「PRAYING RUN」)

苦労を経験しているからこそのリアルなメッセージは、世代関係なく支持される

DVD『THE SONG』('13.4.17)
DVD『THE SONG』('13.4.17)

彼らは、歌はもちろん、彼らの姿を追いかけたドキュメント映画『UVERworld DOCUMENTARY THE SONG』(2012年8月公開)を通して、夢を追いかけている人達や、追いかけるのをあきらめてしまった人達、まだ追いかけるものが見つからない人達全員に向け「何も遅いことはない、一度きりの人生、何をすべきかをじっくりと考え、前に進んでほしい」と勇気付けてくれる。TAKUYA∞が25歳の時UVERworldはメジャーデビュー。バンドのデビューとしては決して早くはない。遅咲きといってもいいかもしれない。彼は20歳でUVERworldを結成。デビュー後、一瞬ではあるがバンドの活動が休止した時期もあった。

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先日25日に行われた今年で8年目になる恒例のクリスマス武道館ライヴでも、彼は自身のこれまでのことを「20歳まで貧乏をなめまわして。でも人生がずいぶん変わった。想像していた以上の15年後だ。生まれの貧しさや10代、20代の悲しさっていうのは、あなたの人生を決めたりはしない。20代中盤から始まった俺らの人生は、まだまだ止まらない!」と改めて振り返り、それを強烈なメッセージにしてファンに投げかけていた。そしてそのメッセージを、信頼関係が生み出す“絆”によって結ばれた、メンバーが弾き出す音に乗せ歌い、伝えてくるのだから、心に届かないわけがない。

「誰が僕のこの未来に 絶望していたとしても 自分自身が終わってないかどうかだろう 在るべき形へ」(「在るべき形」)「高く飛びたいのなら 一度低くしゃがめよ 助走をつけて飛ぶなら 後ろへ下がっても良いだろ」(「ENOUGH-1」)「いつだって世界の中心は今立つその場所 その世界の広さを決めるのはお前自身 道に迷えば始まる冒険 行こう 起きても覚めぬ夢の中へ」(「IMPACT」)

男性ファン急増中。男性限定ライヴ、女性限定ライヴもアリーナクラスの会場が満員に

TAKUYA∞はよくステージでファンに向かって「俺はUVERworldが大好きだ。お前らも好きでしょ?でもお前らに負ける気がしないね。俺が一番UVERworldが好きだ!そしてUVERworldを愛してくれてるみんな、スタッフ、お前らの事が大好きでしかたないんだよ!」と、仲間を大切にすることが一番大切な事なんだということを、なんのてらいもなく愛情を込め、ハッキリと想いを伝える。心からの叫びだ。

「仲間を信用出来ない 仲間を大切に出来ない そこには死んでく以上の孤独があるらしい」(23ワード)

彼らの強さは世代を超えて愛されていることと、男性に圧倒的に支持されていること。女性ファンはもちろんのこと、男性ファンが急増していて、2011年に地元・滋賀のライヴハウスから始まった男性限定ライヴ「男祭り」の動員は250人だった。2012年にZepp Nambaで行った時はチケットはソールドアウトにならなかった。しかしその後日本武道館、横浜アリーナ、神戸ワールド記念ホールとどんどん規模が大きくなり、チケットはどの会場もソールドアウト。今のUVERorldの“強さ”を物語っている。「男祭り」ではその場にいる全員が肩を組み、涙を流しながら、ファンに愛されている特別な曲「MONDO PIECE」を大合唱するという感動的な光景が繰り広げられ、これにはメンバーも感動していた。

「本当は10年先 20年だって一緒にいたい そう願ってるんだよ 全部壊れたって 一緒にいるなら作り直せる きっと何度でも」(「MONDO PIECE」)

12/21横浜アリーナ
12/21横浜アリーナ

12月21日(月)、TAKUYA∞の誕生日のその日に横浜アリーナで“生誕祭”が開催された。

彼らはメンバーの誕生日には必ずライヴを行い、その日のセットリストは主役が決めることになっている。TAKUYA∞の誕生日を祝福しようと約1万3千人のファンが集まり、「世間からしたら何でもない日。こんなド平日に沢山の仲間に集まってもらって、普通のライヴをやるわけねえだろ!」と煽り、現在、過去曲を多めにやるというコンセプトのライヴツアーをまわっているが、この日はTAKUYA∞がセットリストを新旧のお気に入りの曲で固め、ファンは狂喜乱舞、異常な盛り上がりをみせた。アコースティックスタイルでB’zや松浦亜弥他のカバー曲を披露したり、途中のハプニングも、機転を利かして逆にファンを感動させるエンディングにしたり、やりたいことを楽しみながらとことんやりぬいた、そんなライヴだった。

12/25日本武道館
12/25日本武道館

その4日後、12月25日(金)には恒例のクリスマスライヴ『Premium Live on X'mas 2015』を日本武道館で行った。このライヴは現在敢行中の『“15&10”Anniversary Tour』の関東最終公演で、約1万3千人の超満員のファンで開演前から終演まで、ものすごい熱気だった。360°お客さんの囲まれているステージで、インディーズ時代の作品から最新曲まで、UVERworldの10年間のヒストリーを楽しみながらも、現在進行形のストーリーをしっかりと紡いでいた。そしてドラマは本編終了後も続いた。スクリーンに、突然TAKUYA∞のブログに寄せられた、一人のファンからのメッセージが映し出された。去年不幸に見舞われたそのファンは、去年のこのクリスマスライヴでTAKUYA∞のメッセージ、UVERworldの歌に救われたという旨の、胸を打つ言葉が綴られていた。そしてそんな彼女のリクエストに応えるという形で、普段はやらないアンコールを“セルフアンコール”として行い、歌を届けた。多くのファンが涙を流しながらその歌を聴き、改めてUVERworldのファンへの熱い、強い想いを全員で共有した。メンバーにとっても、またその場にいた全員、メッセージを寄せたファンにとっても最高のクリスマスプレゼントになったのではないだろうか。

どこにぶつけていいかわからない怒りをエネルギーに、創作活動をしてきたが、キャリアを重ねてきた今、もっと大きな愛を、よりリアルな言葉で伝えていく

TAKUYA∞は、夢に前向きであれ、仲間を大切にしろと本気の言葉を投げかけるが、時には社会や体制に対しても本気でシニカルな言葉を投げかけ、問題提起する。「この国は清潔で 腐った賞味期限に敏感 そのくせ腐った政治に やけに鈍感だ」(ENOUGH-1)「もう どいつもこいつもみんな 口から出まかせ 上滑りで 都合の悪い事は言ったことさえ忘れて」(「誰が言った」)と、苛立ちや怒りをエネルギーに変え、“立ち向かって”行くことが多かった。でもこれからは怒りを湛えた歌を唄っていくのはやめようと思う、というメッセージも今年は聞かせてくれた。キャリアを重ね、信頼できる仲間の愛に包まれ、大きな視野での愛をメッセージする作品が増えてきている。そうなると、これまで歌ってきた純粋なラブソングの輪郭が、よりハッキリしてきて、その深度に感動が増幅してくる。「僕らは美しい物ばかり探すくせに 隣に居てくれる人の美しさに気付けない 世間にとっての僕や どの時代の総理にも代わりは居る でも それぞれの大切な人に 代わりは居ない」(0 choir)「今ある物全て 失ってしまって 訪れる最大の不幸は 昔は君が隣に居たという 人生を生きて行くこと」(「a Lovely Tone」)。ただひたすら愛することを誓う男の姿がそこにはある。

思想家の中村天風は、“絶対に消極的な言葉は使わないこと。否定的な言葉は口から出さないこと。悲観的な言葉なんか、断然もう自分の言葉の中にはないんだと考えるぐらいな厳格さを、持っていなければだめなんですよ”という言葉を残している。まさにTAKUYA∞が紡ぐ言葉がそうであり、UVERworldが奏でる音楽がその言葉を、聴き手の心のど真ん中に真っ直ぐに届けてくれる。誰かの言葉ではないが、“いい言葉は、いい人生を作る。いい言葉は一度の人生を勇気付けてくれる”のだ。

12月31日、2015年の締めくくりの日もUVERworldは、福岡でツアーファイナルを行い、本気の姿をファンに曝け出している。TAKUYA∞は図らずも「0 choir」の中で「毎年やり切り 年末は幸せで泣くって決めたし 年とっても 愛だの夢だの言えそうな仲間も出来たし」と歌っている。ステージからファンに最後のメッセージを送った後、TAKUYA∞はUVERworldのメンバーや仲間たちと共に、本気の涙、幸せの涙を流すのだ。

「伝えたいメッセージがあって、メッセージを乗せた音楽に勝るものはない。大事なのは、伝えたいって想いなんだよ。それが出来る場所があって、受け止めてくれる人がいて、本当に幸せです」(TAKUYA∞)――UVERwolrdのライヴをまだ観た事がないという人は、一度でいいから経験した方がいい。

※「0 choir」の「0」の正しい表記は0に/です。

UVERworldオフィシャルHP

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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