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【インタビュー】ガールズバンドシーンを牽引するSCANDALが、結成から10年でたどり着いた場所

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
今年結成10周年を迎えるSCANDAL
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結成から10年、ガールズバンドシーンを盛り上げ、牽引し続けてきた

人気アニメ『けいおん!』ブームの影響で、中高生のバンド人口が増え、中でもガールズバンドが急激に増えた。さらに2010年からスタートした、“ガールズバンドの甲子園”と言われている『SCANDALコピーバンド・ヴォーカリストコンテスト』(~2015年)も、ガールズバンドシーンの盛り上げに一役買っているのは確かだ。2015年の同コンテストには国内外から637組のエントリーが集まった。SCANDALの影響で楽器を持つ女子が増えたのだ。そのSCANDALも今年結成10周年を迎える。シーンを牽引してきた4人とその音楽は常に変化を続け、ファンを増やし続けてきた。ワールドツアー、アリーナーツアー、そしてドキュメント映画と、ファンに刺激を与え続け、自らも体感し続けてきたSCANDALの最新(7th)アルバム『YELLOW』(3月2日発売)には、自然体の4人の想い、シアワセな空気が充満していて、真っすぐなロックが真っすぐこちらに向かってくる。そんな、充実の時を迎えている4人にインタビュー。アルバム制作秘話、それぞれの曲に込めた想いをタップリ聞かせてもらい、ハッピー感あふれる時間になった。

「”YELLOW”は幸せを表す色。元気で明るくポジティブなアルバム」(RINA)

――初のドキュメンタリー映画『Documentary film「HELLOW WORLD」』を観たファンから反応で、印象的だったものを教えて下さい。

RINA テーマソングになっている「ちいさなほのお」についての感想を、ファンの方からたくさんいただきました。私達4人のことを、包み隠さず全部を観てもらえたので、最後に流れた「ちいさなほのお」に対して特別なものを抱いてくれたようでした。嬉しかったです。

――その「ちいさなほのお」も収録されているニューアルバム『YELLOW』ですが、どの曲にもアルバムタイトルを示す言葉がなくて、なぜ『YELLOW』なのかが全然わかりませんでした。ワールドツアーを経験して、あえて日本人を表すシニカルな言葉として『YELLOW』という言葉を使ったのかとか……色々想像しました。

HARUNA 『YELLOW』という言葉自体には特別な意味はないんです。今回のアルバムには明るくてハッピーで、ファンキーな曲がたくさん入っているので、そのサウンド感を表す言葉として直感で“YELLOW”って、全員一致でこれにしました。

――シアワセな感じの音色を表す言葉としての“YELLOW”。

RINA 今回、アルバムについて取材をしていただいている中で、あるインタビュアーさんに言っていただいた言葉で、あ、そうだなと思ったのが「黄色いものに不幸感を表すものはない」ということでした。世界共通で、元気で明るくてポジティブなイメージがある色だし、日本のガールズバンドが日本から発信するアルバムとしても良いなって。

――確かに黄色って悪いイメージはないですよね。子供が太陽の絵を書くときも大体黄色だったり、いいオーラが出ている感じがします。そんなアルバムですが、コンセプトになるキーワードはあったんですか?

RINA 今回は“幸福感”のあるものを作ろうと、制作の最初の段階でみんなで話し合いました。そこを目指して曲を作っていって、歌詞もハッピーエンドのラブソングがあったり、バースデーソングがあったり、誰もが必ず主役になる日が来る、ということを感じさせる曲が集まりました。

「肩に力が入ったまま突っ走ってきた。今は心に少し余裕ができた」(HARUNA)

――それは今のみなさんの心の状態、ワールドツアーを終え、ドキュメンタリー映画も経験し、アリーナツアーも成功させ、シアワセ感の中でのフラットな状態ということですか?

HARUNA(Vo,G)
HARUNA(Vo,G)

TOMOMI ちょっとした余裕というのはあったかもしれないですね。自分でそういうものを見つけられるようになったというか、そういう時期ですね。

――余裕のある時期というのは以前にもあったんですか?それとも初めてそういう感覚を感じているのでしょうか?

HARUNA ちょっと前までは、肩に力が入ったまま突っ走っていた状態でした。でもワールドツアーを完走できたというのが大きくて、そこから開放的になれたというのもありますし、TOMOMIも言いましたが、心にちょっと余裕ができたというのはあります。

――そんないい状態の中で作った作品だから、逆に奇をてらってないというか、ストレートなロックを聴かせてくれて、それこそ包み隠さず“今”の4人が発しているものを、聴いている人に真っすぐ届けている感じがしました。

RINA まさに! “王道”という感じが、去年からのテーマになりつつあって、デビュー当時はマイナー調なロックをたくさんやっていましたが、それもわかりやすい私たちの“王道”ではあるのですが、マインドの部分での“王道”というか、そういうところはブレずに真っすぐ形にできているアルバムだと思います。

「シンプルなのが今の自分達には合っている。心地イイという事に気付いた」(TOMOMI)

――ただの“シンプル”なロックという感じではなく、色々やってきてたどりついた“シンプル”、そんな感じと匂いがします。

TOMOMI シンプルというのが今の自分達に似合っているというか、心地いいということに気付いたんです。今まではアリーナツアーというとスペシャルな感じにしなくちゃいけないと思って、派手な演出とか衣装で臨んでいましたが、今回はライヴハウスでもできるようなセットリストにしたり、ステージセットも衣装もシンプルなものにしたり、そういうスタイルにしたからか、ライヴもリラックスしてできました。このアルバムもそういう感じで作っていきました。

「その時の”衝動”をすぐに形にしたい」(MAMI)

――アルバムとしてはもう7枚目ですが。

MAMI(G,Vo)
MAMI(G,Vo)

RINA そうなんです。一年に一枚は出しています。

――なんてレコード会社想いのガールズバンド!シングルも22枚もリリースしていて。

MAMI (笑)そうなんです。頑張ってます(笑)。去年は少ない方でしたが、それまでは年にシングル4枚、アルバム1枚というペースは守っていましたね(笑)。

――正直きつくないですか?(笑)

HARUNA そのぺースがもう自分達のベースになっているというか、ずっとそのペースでやってきたのであまりきついとは思わないんですが、でもさすがに今回4人だけでアルバムを作ってみて、一年で10数曲入りのアルバムを作るのは大変だなって感じました(笑)。

MAMI 個人的にはその時の気分のものは、その時に出さないと気が済まないんです。アルバムを作る時に、過去に作って寝かしておいた曲をみんなで聴いて、私が作ったものを「これ形にしたほうがいいよ」って言ってくれるんですけど、私的には絶対嫌なんですよ(笑)。今回の『YELLOW』もそうですけど、その時の“衝動”を大事にしたいんです(笑)。

――『YELLOW』も“今の衝動”が新鮮パッケージされている。

MAMI 「ちいさなほのお」だけが一昨年完成した曲なんです。この曲は元々リリースの予定もなく、もちろんドキュメント映画用に作ったものでもなく、この曲が思い浮かんでとにかくその時に作ってしまいたかったんです。鮮度をパッケージしたかったんです。それで、何に使われるかわからないけど、キープしておこうと思った例外的な曲です。「Happy Bitrday」も一昨年の冬に作った曲ですが、前回のツアーのアンコールでは演奏しています。なので前作(『HELLOW WORLD』)後に出来上がった曲ばかりです。

――オープニングナンバー「Room No.7」はインスト曲です。意外でした。

MAMI アルバムを作っている時、プロローグ的な曲が欲しいねってみんなで話して、歌がフルコーラス入ってなくてもいいし、もっとラフな感じでいいんじゃないかというイメージは、ザックリありました。その後、アルバムの曲がだんだん完成してきて、並べて聴いた時に、このアルバムのツアーはライヴハウスでやりたいという希望があったので、それも見越して、ガッツリとしたバンドサウンドがあってもいいかなと思いました。それで「Room NO.7」のデモを作って、イメージをみんなに伝えて、構成やサウンド感はみんなでスタジオに入ってジャムりながら作りました。その時のスタジオの空気感も大切にしたくて、RINAのカウントで始まって、HARUNAの叫びで終わるという、その場のリアルな感じを入れたかったんです。

「トルコの空気に触れ、現地のミュージシャンの言葉に触発され生まれた「ヘブンな気分」」(RINA)

――ではアルバムの中で、みなさんの特に思い入れのある曲を教えて下さい。どの曲も、だとは思いますが……まずRINAさんからいきましょうか。

RINA(Dr,Vo)
RINA(Dr,Vo)

RINA 私は「ヘブンな気分」です。去年リリースしたシングルが、ポップロックのものが多くて、意図的にそういうものを作ったのですが、その反動というかグランジをやりたい!と思って。

――アルバムの中では他の曲と比べて、ちょっと温度感が違っていますよね。

RINA そうなんです。アルバムの中では一番湿度が高い楽曲だと思います。それと「ヘブン」という言葉を使いたくて。ワールドツアーの後、トルコで開催された音楽祭に出場させていただいて、その時にあのアジアとヨーロッパの文化がミックスされた、ひとつの国なのにどこか“違和感”がある独特の空気を感じました。それと現地のミュージシャンに言われた「自分の国や好きなものをベーシックにおいて、古いものを大切にしながら音楽を作っていかないと、新しいものは生まれない」という言葉が凄く胸に響いて、そんな海外で感じた刺激を形にした最新の曲です。そういう言葉に触れなければ、外国の空気を感じていなければ作れなかったと思います。思い切り歪ませて、聴いた瞬間にカッコイイと思える曲を作りたかったんです。

――ギターがとにかく絡みついてくる感じがすごく良かったです

RINA 私はドラマーなんですが「ラット」(=エフェクター)の音が凄く好きで、何年か前に買って、ずっと家に置いてあったのですがこの楽曲ができた時にHARUNAのギターで使いたいなと思って、使ってもらいました。

HARUNA 初「ラット」でした(笑)。私も歪んだ音が好きなので「ヘブンな気分」に合う音を作ることができました。

「「Love Me Do」はSCANDALに新しい風が吹いた一曲」(HARUNA)

――HARUNAさんいきましょうか

HARUNA 私は「Love Me Do」がお気に入りの一曲です。この曲がMAMIから送られてきた時に「80年代のアメリカンポップスだ」と思って、今だったらダンスグループがこういう曲をやりそうですが、それを現代のガールズバンドがやったら面白い曲になるんじゃないかなと思いました。この曲でグミのCM(ブルボン「フェットチーネグミ」)でも使ってもらいました。MUSIC VIDEOも作ったのですが、SCANDALに新しい風が吹いた一曲だと思います。

――「Here we go」というコーラスが効いてますよね。

MAMI これはボーカル、コーラス、声をすごく大事にしたくて、HARUNAにファルセットに挑戦してもらいました。このアルバム通してHARUNAには色々チャンレジしてもらったのですが、今までファルセットでガッツリ歌う曲がなかったので、今回やってみようと。最近HARUNAの歌う姿を見ていて、歌うことが本当に楽しそうなので、今のHARUNAなら歌えると思いました。

――80年代の質のいいポップスという感じです。

HARUNA そうですね、力の抜け具合がいいですよね。今の自分達にもピッタリだと思います。

「この先もずっと歌える曲だと思ったので、あえてシンプルに「LOVE」」(TOMOMI)

――TOMOMIさんはやはり詞・曲を手がけられた「LOVE」でしょうか?

TOMOMI(B,Vo)
TOMOMI(B,Vo)

TOMOMI そうですね(笑)。ラブソングはこれまでもたくさん書いてきましたが、意外とビターな感じのものが多く、円満なラブソングがなかったので、今回はそういう曲にチャレンジしてみようと。

――なぜ今「LOVE」という、シンプルかつド真ん中の言葉を使うのでしょうか?

TOMOMI 「LOVE」ってものすごく広い意味を持つ言葉なので、タイトルに使うのには勇気が必要でしたが、この先もずっと歌っていけるような曲に仕上がったので、大きな意味を持つ言葉を使ってもいいかなと思いました。20代の等身大の、ニュートラルなラブソングをレゲエっぽいアレンジでやってみたくて、シライシ紗トリさんにアレンジをお願いしました。ロックバンドがレゲエをやるなら、というテーマでシライシさんと作業して、結果的にロックステディなレゲエになりました。

「カラッとしたサウンドが多い中での”SCANDALの王道”の音が「SUKI-SUKI」」(MAMI)

――MAMIさんいってみましょか。

MAMI 私は「SUKI-SUKI」です。去年の夏ぐらいにワンコーラスだけ出来上がっていた曲で、アルバム作りをしている時にみんなが「そういえばあの曲あったよね」って言って、引っ張り出してきたものの、最初はやっぱりやりたくなくて(笑)。でもみんながすごくいいよって言ってくれて、元々は夏に冬の事を書いた曲なので、今回、まだ寒い時期に出すことができて良かったです(笑)。このアルバム自体がカラっとしたサウンドの曲が多い中で、この曲は、“SCANDALの王道”の音があるとすれば、これだなと思っていて。個人的に冬が凄く好きで、冬だって開放的な季節じゃんって思っているタイプなので、ちぢこまりがちな冬だけど、澄んだ空気が心をきれいにしてくれる季節でもあるし。季節がぐるっと一周して、地球全体がリセットされる季節だと思っていて、そういう時にもやもやしたものとかも全部吐き出して、クリアになって、また新たな気持ちで次の季節に向かえたらいいなと思い、そんな気持ちを曲にしてみました。

「「いのち」をテーマにした「ちいさなほのお」。ミュージシャンだからそういうことを曲にしなければいけないと思った」(RINA)

――やっぱりせっかく作った曲達なので、もう一曲ずつ思い入れが強い曲をあげてもらいましょうか。RINAさん。

RINA では「ちいさなほのお」を。2014年6月に書いた曲で、まさか自分達のドキュメンタリー映画の主題歌になるなんて思ってもなく、「いのち」というテーマを軸に歌詞を書いているので、あらゆる人と、もののテーマソングになると思っていて。この曲を書きたいと思ったきっかけは、バンドを始めてから、生きているのものもいつかは死んでまうということを意識し始めるようになり……。当たり前だけど生きている間のことだけしか曲にできなくて、生きている間だけしかSCANDALでいられないという、終わりということを、初めてポジティブに意識した時期でした。生きているという輝いている時間があるのに、ニュースを見ていたら自分で命を絶ってしまう人とか、ふがいない事件が毎日起こっていて、なんでだろうってずっと思っていました。それぞれに夢とか希望とかあったはずなのに、やっぱり生きることをあきらめてしまうと何もできないし、夢はあきらめても、生きることは一度もあきらめて欲しくないという気持ちがその時はもの凄く強くて、ミュージシャンなんだからそういうことを曲にしなければ、と思いました。終わりというものをネガティブに捉えるのではなく、じゃあそれまでどう生きるんだということを考えて欲しいです。この曲がそのきっかけになってくれたら嬉しいです。

――タイトルをひらがなにしたところがいいですよね。ろうそくみたいに、小さいけどしっかりと燃えていて、でも優しい温かさを感じさせてくれて。

RINA そうですね。優しい曲なので、柔らかさがある表記にしました。

「ワールドツアーからの軽やかなムードが表現できた「Stamp!」がなかったら、全然違うアルバムになった」(HARUNA)

――HARUNAさん、もう一曲お願いします。

HARUNA シングル曲ですけど「Stamp!」です。この曲を作ることができたからこのアルバムができたと思っていて、去年ワールドツアーをやっている時から自分達の中で軽やかなモードは始まっていて、その空気感を表現できた曲なので、この曲がなかったら全然違うアルバムになっていたと思える、軸になった一曲です。

――アレンジを手がけた玉井健二さんとはどういう話をしながら作ったんですか?

MAMI スクラッチが要所要所に入っていて、全部同じ素材のものを貼り付けているのですが、最初はそれが個人的にはすごく疑問だったです。そうしたら玉井さんが「生のスクラッチじゃないから同じでいい。4人で表現している中のひとつの素材だから」と教えてくれて、なるほど~と思って、そういう技術やアイディアは自分達の中にはなかったので、斬新でした。

――自分達の事はなかなか客観的に見ることができないから、信頼できる第三者の存在は大切だし、その意見やアイディアは大切にしたいですよね。

MAMI 自分達が演奏しているところとか、曲作りの部分って第三者の目線では見ることができないと思うので、また別の場所から見てくれる人がいるというのは、すごく大きな影響があると思いました。

「車と友達があれば生きていけるかも、と思って(笑)書いた「Sunday Drive」」(TOMOMI)

――TOMOMIさん、もう1曲挙げて下さい。

『YELLOW』通常盤
『YELLOW』通常盤

TOMOMI「Sunday Drive」です。私が詞を書いて、モータウンっぽいビートものを作りたいねって前から言っていたので、曲はスタジオでみんなで作りました。一昨年、車の免許を取って、それぐらいの時期にイメージしていた曲です。免許を取ったあと、友達とこういう車でこういうところを走りたいなっていう未来日記的な感覚で書いていきました。今でも地元(兵庫)の友達とよく会っていて、色々な話をして、そういう時に「車と友達があれば生きて行けるかも」と思って(笑)、車と共に生きる人の日曜日のシーンを描きたかったんです。

「「今夜はピザパーティー」は、スカパンクっぽいものをやりたくて、曲をみんなに送ったらTOMOMIがピザの歌にしてくれた(笑)」(MAMI)

――MAMIさん、お願いします。

MAMI「今夜はピザパーティー」です。スカパンクっぽい曲をやりたくて、デモを作って夜中にメンバーに送ったら、次の日の朝にTOMOMIがピザの歌にして返してくれたんです(笑)。

TOMOMI 朝起きたら「トマトソースたっぷり乗せたPizza!!」って聞こえたんですよ(笑)。曲も歌詞もワンコーラスしかなかったのですが、RINAが「これは早く作った方がいい」と言ってくれて。

MAMI 詞を完成させるにあたってTOMOMIは自分でピザをデリバリーして…(笑)

TOMOMI リアルを追求しました(笑)。レコーディングの当日もみんなでピザを食べながら作業しました。パーティーの曲なので、ドンキホーテで音が出るパーティーグッズを買ってきて、その音も入っています。そういう細かいところも楽しんで欲しいです(笑)。

改めて自分達を認めることができ、自信につながった「Sisters」

――そして「Sisters」というシングルヒットを、このキャリアのこのタイミングで出せたことが、バンドとしてすごく大きいと思います。

HARUNA 自信にはつながりました。

MAMI 私たちは大阪のダンス&ボーカルスクールで知り合って、ゴスペルとかも勉強していましたので、自分達のルーツや基礎となっているものを表現できた1曲でもあり、改めて自分達を認めることができました。今だったらこういう曲ができるという判断ができた曲でもありました。

ワールドツアーで受けた刺激が、今年は自然体で、やりたいことをやる年にしたいと思わせてくれた

――ラストは「Your song」の英語バージョンで〆ています。

RINA 私達の音楽は、海外のリスナーの方も多いので、単純に英語で人気曲を歌うというのは自分達の中では自然な流れでした。海外でのライヴが増えてからは、国内、国外というボーダーラインが自分達にはないということに気づいて、海外用のセットリストを考えて持っていっていた時期もありましたが、最近は日本でやっていることを輸出しようという感覚でやっています。だからこのタイミングでこのアルバムに『Your song-English ver.- 』を入れようということになりました。

――今年も、早くもアルバムをリリースし、もうすぐツアーも始まり、8月には10周年記念ライヴも控え、テンコ盛りの一年になりそうですが、年頭に4人で2016年はこうしたいねという話はしたんですか?

MAMI 自然体ということもそうですが、やりたいことやろう!という感じです。海外で色々な刺激を受けた影響で、自分達の中でも気持ちが二転三転していますが、いいスパイスをもらえたからこそ、日本でできることをストレートに表現できたらいいなと思っています。

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結成10年、デビュー8年。活動を続ける、それも第一線で活躍し続けることは決して簡単ではない。彼女達と同期のアーティストが一体何組消えていったか。続けるだけでも大変なのに、成長を続けていかなければいけないのはどんな商売でも同じだが、人を感動させ続けなければいけない“表現者”という商売は、特にシビアな目で見られる。だからCDの売上げは常に前作超えが求められ、ライヴの動員も増やし続けなければ、結局自分達が次によりいいものを作るための原資が入ってこないということに繋がる。ボーカルHARUNAが「肩に力が入ったまま突っ走っていた状態」だったと言うように、4人は懸命にガムシャラに突っ走ってきた。見えないゴールをモチベーションにして、とにかく色々な事にチャレンジしてきた。そして今“ぬけた”。また次のステージに上がったということ。だからこそシンプル、自然体というモードを感じることができ、それを手にすることができたのだ。色々あったからこそのシンプル。シンプルな色だけど、実は目には見えないグラデーションが広がっているような、そんなシンプルさ。そこから発せられる、自由度の高い、肩の力が抜けたロックが詰まった『YELLOW』には、SCNDALというバンドのこれまでの10年と共に、これからの10年を大いに予感、そして期待させてくれるエネルギーが満ち溢れている。

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<Profile>

2006年大阪・京橋で結成。2008年シングル「DOLL」でデビュー。2012年3月には日本武道館公演を異例の速さで達成し、2013年3月には夢であった大阪城ホール公演を5分で即完させる。2014年6月にはプリンセスプリンセス以来、23年ぶり2組目となる横浜アリーナ2DAYS公演を成功させる。2015年SCANDAL史上最大世界9か国41公演の初の単独ワールドツアーを大盛況に収め、12月からは4万人動員の初の東名阪アリーナツアーを開催。ニューアルバム『YELLOW』を引っ提げての全国&アジアライブハウスツアー『SCANDAL TOUR 2016「YELLOW」』が4月13日宮城からスタート。アジア公演はシンガポール、香港、台湾、タイで行うことが発表された。さらに結成10周年を迎える今年8月21日には、地元・大阪で野外コンサート『SCANDAL 10th ANNIVERSARY FESTIVAL『2006-2016』』の開催も決定している。

SCANDALオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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