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”メディアアーティスト”のスターを創る サカナクションを擁するプロダクションが見据える先にあるもの

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
『VRDG+H』のロゴ

それは必然的な流れだった――サカナクションを始め、独創性が高く、海外でも活躍する先鋭的なアーティストを多く抱えるHIP LAND MUSICが、クリエイターをプロデュースする新しい部門・INT(イント)を設立し、注目を集めている。BUMP OF CHICKENやサカナクション、KANA-BOONのプロデューサーで、同社常務取締役でもある野村達矢氏が、そのプロジェクトの仕掛人だ。野村氏はこれまで数多くのアーティストを育ててきたが、中でもサカナクションのライヴには最先端のテクノロジーを駆使した、“誰もやっていないこと”を提示し続け、その先鋭的なライヴでファンを熱狂させてきた。INTの立ち上げは、これからの音楽ビジネスを見据えた動きであり、クリエイター=”メディアアーティスト”のスターを育てるという意味合いもあり、ひいては新しいエンタテインメントの創造にもつながる、意味ある行動であるとともに、必然性も感じる。そんなプロジェクトを発足させた経緯や狙い、見据えるその先にあるものなどを野村氏と、野村氏と共にINTを引っ張っていく棟廣敏男氏に話を聞いた。

ライヴシーンで求められる新しい視覚表現――HIP LAND MUSICが次世代の”メディアアーティスト”のスターを創るべく、クリエイティヴ部門・『INT』を設立し

――HIP LAND MUSICさんがクリエイティヴ部門・INTを設立して、クリエイターのマネジメントをやろうと思った、そもそものきっかけから教えてください。

Kezzardrix
Kezzardrix

野村 ひとつは音楽ビジネスのシフトです。音楽ビジネスの元が、複製ビジネスから興行ビジネスにシフトし始めているという状況の中で、コンサートを観た時にデジタルの要素は、今まではPA、照明、楽器だったのが、ここ数年で映像という要素が入ってきました。それは技術の進化によるもの、プログラムの進化によるもので、そういうところを含めると、プログラミングをする単純な映像作家ではなくて、新しいクリエイターのカテゴリーとして、プログラミングをしてインタラクティブな映像を操る“メディアアーティスト”と呼ばれる人達が登場してきました。そういう人達の技術とクリエイティヴを、我々のコンサートビジネスに活かせるようになっていくといいなと思ったのが、きっかけでした。我々の会社にLITEというインストバンドがいるのですが、LITEのMUSIC VIDEOを手がけてくれたKezzardrixが作るビジュアルアートがバンドとの親和性も高く、すごくいいなと思ったので、育成していきたいという気持ちもあり、会社のセクションにして、こういうものを積極的に取り入れていって、野望のひとつとしてコンサートビジネスの活性化、新しい見せ方ということにチャレンジしていきましょうと。もうひとつは、音楽がアウトバウンドしていくときの武器になるからです。日本の音楽は言葉の問題があって、日本語で歌っていると日本国内でしか通用しなくて、世界に打って出るにはやはり壁があって、でも視覚的要素であれば、言葉の壁もあまり関係なく、そういう部分でメディアアーティストのような人達が海外にアウトバウンドしやすいというところと、その両面でやれることをテーマにしていきたいなと。「インタラクティブ」で、「インターナショナル」という二つのキーワードが出てきましたが、そういうところも踏まえ「INT」というセクション名にしました。「インタラクティブ」がプログラムアート、「インターナショナル」というのが海外に行ってアウトバウンドしていく、その二つをテーマにしたセクションです。メディアアーティストというのは、一匹狼みたいな人が多く、組織化されていなくて、仕事の仕方もまだ大雑把でシステマティックになっていません。やっと「ライゾマティクス」や「チームラボ」のような会社が登場してきて、マーケットとして成長してきましたが、まだまだ開拓できる余地があると思い、それをHIP LAND MUSICのテリトリーの中の、音楽からの発信というところでできたら面白いと思いました。

「サカナクション他所属アーティストのステージ演出で、最新のテクノロジーと融合させた表現を創り続けてきた、我々だからこその第一歩」

――HIP LAND MUSIC さんでいうと、サカナクションが先鋭的というか、時代を先取りした映像と音楽のマッチングをずっとやっていらっしゃいます。

サカナクション
サカナクション

野村 そうなんです。サカナクションのようなアーティストがいるという部分では、やはりそのステージ演出の中で、一番新しいテクノロジーと融合させながらやってきたというイメージが我々にはあると思いますので、そう意味ではこういうプロジェクトをスタートさせる意味合いや、必然性が出てくると思っています。

――サカナクションのプロデューサーである野村さん自身が、特に映像に興味があったのですか。

野村 そうですね、“新しいもの”が好きなんです。人がやったことをマネするよりも、新しい道を作って、人にマネされる方になりたいといつも思っています。だからサカナクションの場合も、誰もやっていないことを探しながらやってきて、サラウンドでコンサートをやったり、新しい照明の機材を導入していったり…。デビュー当時からレーザーを自前で持ち歩いていたのは、サカナクションくらいです。新しいテクノロジーや機材に関しては敏感で、すぐに取り入れるスタンスを取ってきました。

――確かに常に最先端の技術や演出にこだわっているイメージって、そういうことを始める時にすごくプラスになりますよね。

野村 そうです。継続してそういうことをやっていくと、必然性が見えてくるので、HIP LANDがこういうことをスタートさせても、やっぱりな、と納得していただける感じにはなっていると思います。 

――棟廣さんは「digmeout」(大阪・FM802のアート系クリエイター発掘プロジェクト)のディレクターをやられていたんですよね。

棟廣 そうです。大阪でHIP LANDグループのキッスコーポレーションに所属しながら「digmeout」のディレクターをやっていました。その関係で、アート系のクリエイターとのコネクションがあり、彼らのエージェント業務を手伝ったり、展示のディレクションもやり、ライヴでの生の演出というよりは、ギャラリーでの展示だったので、お客さんの反応がダイレクトに返ってくる演出というのはHIP LAND MUSICに移ってから目の当たりにして、興味は持っていました。

「クリエイターの仕事をきちんと理解し、マネジメントしてくれる人が少なかった。これからはそこを担う」

――音楽をどうしていくか、というところがやはり根本にあると。

野村 そうです。ベーシックな部分に音楽があって、そこからスタートするもののひとつの表現方法として、クリエイターたちが関わってくる。そこで我々のアーティストもメリットを得ることができ、それはクリエイターも同じで、そういうWIN-WINの形が理想的です。

――そういうクリエイターの人たちに、きちんしたマネジメントに所属していない人が多いというのが意外でした。

棟廣 そういう組織が少なかったのではないでしょうか。見た目はインパクトがあって、かっこいい、楽しそうな仕事というイメージがありますが、実際裏側がどういう仕組で、どう動かされているかという、テクニカルの部分の知識が必要になってきます。彼らにまず相談されるのが、例えば予算20万円で、締め切り10日間でこういうのを作ってと、そうやって簡単にできる仕事と思われていて、実際彼らはかなりの時間を要していて、それなりに予算を取れる案件のはずなのに、アウトプットだけ見られて判断されるのが困るということです。今まで彼らの周りで、ちゃんと理解してくれる人が意外に少なかったのだと思います。

――逆にいうと、HIP LAND MSUICさんの目のつけどころが良かったんですね。

野村 我々もそういうクリエイター達と深く関わりたいと思っていたのは事実ですし、深く関わらざるをえないというと変な言い方になりますが、もっともっと関わっていかなくてはいけない時代になってきているのは確かです。

「テクノロジーが進化し、ハード面のスペックが上がっても、それをどうクリエイティヴしていくかが大事」

――例えばサカナクションのライヴを一回観てしまうと、次はもっと新しいものを、凄いものを、もっと、もっととお客さんの要求のレベルも高くなっていきますよね。

野村 だからライヴエンタテインメントの質は上がっていくし、当然テクノロジーも進化していくので、観せられるもののレベルは常に上がっていくというのが現状じゃないでしょうか。ただテクノロジーが進化しても、いくらスペックが上がってハード面でここまで出来るようになって、こんなことが出来ますよといっても、何を表現するかというのが大事で、そこには単純にオペレーションをするだけではなく、やはりそれをどうクリエイティヴしていくかが大事です。そういうクリエイターのスターを作っていくのが我々の仕事です。我々は音楽の分野ではスターを作ってきました。次はクリエイターのスターを作りたいですし、音楽以外の領域にもどんどん入っていきたいと思っています。

――外から見ても必然性があるし、全く違和感がないというか、多分遅かれ早かれ足を踏み込んでいた分野だという気がします。

棟廣 所属しているクリエイター達と話しをしていても、HIP LAND=サカナクションというイメージがあるので、わかりやすかったみたいですし、なんでHIP LAND MUSICがクリエイター?という反応は意外となかったです。

――初歩的な質問で申し訳ありませんが、こういうクリエイターの方たちというのは、自分達の作品をどういう方法で世の中に伝えていくのですか?

棟廣 だいたいクラブ寄りのVJ(Video Jocky)としての映像表現が多かったですね。プログラマーと話をした時に、そういう映像作品はアートピースとして成立するかどうかという問題があって、彼らが表現する場所に関しては非常に苦労してるというのが正直なところです。よくあるのは、大学の卒業制作で映像作品を作ってそれが話題になったり、そういう意味ではお金を出してディールするような作品は、よほどの大御所にならない限り、ほとんどないと思います。それと広告関係なんですが、それもプロデューサーがいてディレクターがいて、それからプログラマーと、名前が出てこないんです。彼らの名前が出てくることは、ごくごく限られた人以外はほぼないです。

――才能がある人でも、なかなか食べていけない現状があるんですね。

棟廣 仕事としては広告案件が多いです。いわゆる街中のインタラクティブ系は、こういうクリエイター達が実装させていたりとか、アプリを作っていたり、WEBサイトの特殊効果の3D、CGのプログラミングをやったりしていますが、でも名前が出るのはプロデューサーや制作会社だけということが多いです。

「これまで脇役のような存在だったクリエイターを主役にし、スターを育てていきたい。「VRDG+H」のようなイベントで、まずは名前を覚えてもらいたい」

――優秀なクリエイターの方たちもジレンマがあったというか、自分の価値を評価してくれる場も、マネジメントがないというジレンマがあったということですね。

野村 だから僕らが、これまでは脇役のような存在だった彼らを主役にする場面も作っていくし、「VRDG+H」のような新しいイベントをやることで、当然名前がヘッドラインとしてクレジットされるわけです。彼らを目当てにお客さんが集まってくるような状況を作ることによって、もっともっと仕事の幅も広がっていくと思います。新人アーティストをデビューさせる時に、まずライヴハウスからやるという感覚に近いかもしれません。「VRDG+H」のようなイベントを作って、しっかりプロモーションをやり、観てもらってこの映像プログラムの凄さを体感してもらい、そして彼らの名前をインプットしてもらう。

――INTのクリエイターが、様々なアーティストのライヴ映像を手がけると。

野村 どんどんやって欲しいです。今映像クリエイターの世界では、Perfumeなどを手がけている真鍋大度(ライゾマティクス)さんというスターがいますが、彼のような人がもっともっと増えるといいなと思います。彼を目指している若いメディアアーティストは増えてきているし、次の世代につながる人たち、真鍋大度さんに次ぐスターを作りたいと思っています。

――「VRDG+H」は1回目、2回目ともチケットの売行きも好調だったようですが、プロモーションはどういう風にしたんですか。

棟廣 基本的にはいわゆる音楽のライヴと同じで、WEB媒体で取り上げてもらったり、フライヤーを作って配りました。

野村 水面下でVJイベントは色々やっていまして、そういうところである程度集客できるクリエイター達が出演していました。多少実績がある中で、それを2段階くらい上に上げた感じです。

棟廣 そうですね。一緒にやっているのが「BRDG」という、新しいオーディオビジュアルの表現を開拓する電子音楽のイベントを手がけている、実質一人のオーガナイザーがいて、彼が六本木の「スーパーデラックス」などで定期的なイベントやっていました。横浜に「DMM VR THEATER」完成したと聞いて、二人で下見に行った時に、やれるかも、という話になり、アンダーグラウンドでやってきた人達を、どうフックアップして形づけるかという時に、多分彼らだけではできないことをHIP LANDと組むことによって、一つ上にステップアップさせことができるれば、と思っていました。

「『DMM VR THEATER』を使って今までにないエンタテイメントを創っていきたい」

――次の『VRDG+H #3』の開催は決まっているんですか?

棟廣 次は8/11(木曜・祝日)に決まりました。

――ライヴとはまた違う、音楽とビジュアル、両方がメインになるようなイベントにさらに進化していっています。

野村 横浜の「DMM VR THEATER」って、日本にひとつしかないし、スペックが高すぎて使い切れていないというのが現状です。あれを本当に使い切れる作品となると、結構な手間と予算もかかるはずで、それをもうちょっと違うアプローチで使えないかというのが、「VRDG+H」だったりもします。VJイベントなんですが、生なんです。生とプログラムの融合、1回限りの偶然性があって、プログラムイベントみたいに、スタートボタンを押したら勝手に映像が流れて、映画を再生するみたいに前と同じものが観られるというわけではないんです。音楽のライヴのように、生の要素があって、毎回毎回違う要素が介在していて、それが新しい「DMM VR THEATER」の使い方です。今までは普通のシアターのような使い方しかできていなかったのが、我々はライヴハウスのような使い方をしています。新しい使い方を提案していて、そこには生じゃないと体感できないものがたくさんあって、そこに来なければ観ることができないという状況を作っています。なおかつ通常のVJイベントではありえないような表現、擬似3D映像に遭遇して、音もサラウンドなので、今まで感じたことがない体験を感じることができるイベントになっています。それがだんだんその斬新さが口コミで広がっていています。

その場でしか体験しえない視覚体験とその衝撃に、初めて観たユーザーは「ヤバい!」

――こういう劇場ができて、そこで野村さんのチームが新しいイベントをやり始めて、やっぱり時代が動いてる感じ、新しいエンタテイメントが生まれていっている感じがしますね。

野村 僕はたまたまサカナクションのライヴに新しいテクノロジーを導入したいと思っていたので、このシアターのオープン前に下見に行きました。その時に面白い場所だなと思って。でも完成してからは、シアター自体がそのポテンシャルの高さを持て余していたんです。今ってブラウザや、テレビの画面など映像を見るツールが溢れていて、その中で“絶対に観に行かないといけない価値”をどうやって作るかというと、ブラウザやテレビ画面では再生できない方法しかないと思うんです。それがあるからこそ、そこに観に行く価値があるわけで。彼らは確かに映像プログラムを作るのですが、ブラウザやテレビ画面では収まらない表現をすることによってお客さんを集める。そういう意味では「DMM VR THEATER」という場所がものすごく好都合だったし、サラウンドの環境があって、映像が3Dの環境はここしかないんです。そこで自分たちの作品を再生できて、アウトプットできるチャンスをもらえるというのは、彼らにとってもすごくやりがいがあることだし、チャレンジしがいがあることです。

棟廣 イベントが終わった直後のお客さんのSNSの感想が“ヤバい”、“ヤベー”ばっかりで(笑)。要はああいうエンタテイメントを観たことなかったので、すぐには言葉で表現出来ない“ヤバい”“ヤベー”だったんです。それがタイムラインに並んだ時、成功したかもしれないと実感できました。

――確かに体験したことないから、その良さを言葉で表現できないですし、お客さんは例えようがないショックを受けたということですよね。

棟廣 そうですね。初めてのものって、割とみなさん批評したがるじゃないですか。でもそういうことを超えたんだなと思いました。

――まさにぐうの音も出ないという感じだったんでしょうね。

棟廣 ヨシ!と思いました。

――チケット代を3、800円にした理由を教えて下さい。

棟廣 1回目が3、500円でした。それは通常のライヴイベントの価格を参考にしつつ、この「VRDG+H」というイベントの客層が、大学生を中心に20代も多く、4、000円の壁ってあると思っていました。今は正直赤字です(笑)。でも先行投資だと思っています。

――逆にこんなすごいものを、この価格で観る事ができると感じている人が増えてきたら、値上げしづらくなりませんか?

野村 逆にこの良さが分かってもらえたら、どんどんVRシアターのバリューが上がってくると思うし、本当に今はここが“唯一”の場所なので、価値が上がっていくことは確かだと思います。地方にも観たい人がたくさんいるわけですから。

すでに国内外で大きな評価を得ている「INT」所属の”メディアアーティスト”

――INTという新しいプロジェクトを始める時のクリエイターのラインナップは、どう決められたんですか。

長尾洋
長尾洋

野村 最初にも言いましたがこのプロフェクトには「インタラクティブ」「インターナショナル」という2つのキーワードがあります。まず長尾洋はドイツ、メキシコ、アメリカと3つの国で活躍する、ベルリンを拠点にしているポップ・コラージュ・アーティストです。作品自体は海外のギャラリーでも展示されています。コマーシャルワークをもっと日本でもやっていきたいという本人の希望があり、その部分をうちでマネージメントをやってみようというところで所属してもらいました。2015年にJRAの中京競馬場の年間ポスターのメインビジュアルを担当しました。もう彼はすでにインターナショナルというキーワードを体現してるというアーティストですね。

近藤亜樹
近藤亜樹

棟廣 それと、三宿(東京都・世田谷区)にあるシュウゴアーツというギャラリーがあって、そこに近藤亜樹という現代美術家がいます。海外でも評価が高く、彼女も我々の仲間入りをしました。彼女もきっかけはサカナクションでした。「NF」というサカナクションのクラブイベントの時に、山口一郎がDJで、彼女がライヴペイントをやりました。作品のディール以外の部分でも動きを活発化させたいという本人の希望もあり、その部分のマネジメントをやりましょうということで一緒に動き始めました。

――近藤さんのライヴペイント、観ていると不思議とドキドキしますよね。感情が“ほとばしる”のが伝わってきます。

棟廣 ライヴペイント自体は珍しくはないのですが、ただ、書くということと、演奏するというのは時間軸が違っていて、難しいのは途中で何を書くのかが見えてしまうと、そこで終わってしまうんです。ネタバレしてしまうと、お客さんはそこで冷めてしまうと思いますが、それをどう表現するかを彼女は考えていて。それをパッケージにできれば、色々な人とコラボでき、色々な場所でできると思っています。大きいキャンバスを必要としなくて、それもまた「VRDG+H」とは違う新しいイベントを作ることができるのではないかと思っています。

――またデジタルとは全く温度感で、面白いです。

Motoi Shimizu
Motoi Shimizu

棟廣 そうですね。お客さんの反応も良く、終演後も声をかけられていました。何が出て来るか、ワクワク感がありますよね。もう一人、Motoi Shimizuは、照明やレーザーの制御プログラミングが得意で、小規模なライヴハウスだと派手な照明演出ができなかったりするのですが、そういう時にレーザーとかLEDバーを入れて、音に合わせて照明が動くという、小規模な会場でもできることを一緒に考えながらやっています。先日、レッドブルスタジオ東京で、弊社所属のavengers in sci-fiとのイベントをやったのですが、その時はLEDを駆使した照明の演出を見せてくれました。

野村 切り口として、照明のプランナー、オペレーターというよりは、プログラムで照明を制御するというスタイルです。

――先ほど「「VRDG+H」」のお客さんは大学生が多いとおっしゃっていましたが、インタラクティブな映像シーンに興味を持って、クリエイターやプログラマーを目指す若い人は増えてるんですか?

「DMM VR THEATER」の客席
「DMM VR THEATER」の客席

棟廣 興味を持ってる人はすごく増えています。やっぱりそういうものを目にする機会が以前より増えているし、ニュースでも取り上げらることも増え、新しいフェーズに時代は突入しているなということは、この分野に全然興味がない人でも、肌感で感じている部分はあると思います。それとやはり真鍋大度さんという存在が大きいですね。

野村 ひとつわかりやすい例だと思います。PerfumeのライヴやMUSIC VIDEOを観て、あの演出をやっている人みたいなことをやりたいというのは、ものすごく出てきてると思う。だから「VRDG+H」に来ているお客さんも、新しいエンタテインメントを楽しみたいという人半分、興味を持って勉強しに来る人半分という感じがします。そういう人は、イベントの最中も、後ろのオペレーションルームのほうをチラチラ見ているんですよね。合間には機材をチェックしに来る人がいっぱいいますし。

――そういうクリエイターにもしっかりマネジメントがあって、イベントが増えたり露出する機会が増えたりすると、この世界を目指す人達の底上げに繋がってきますよね。

野村 どう考えてもこの分野は、これからどんどん広がっていきます。そういう人たちが増えていってその受け皿にもなっていきたいし、「VRDG+H」のイベントを観て刺激になって、のちにプログラマーになったきっかけが「VRDG+H」でした、という人がどんどん出てきて欲しいし、きっかけになりたいですね。

――意義というか、意味でいうと、すごく大きな動きですよね。

野村 そうだと思います。明らかに表現の手段が変わってきている、進化してきているので、進化に合わせたアーティストが僕らの近くにいて欲しいですし、HIP LAND MUSICという土壌の中でこういうセクションを作って、そういう人達が集まれる場所を提供していきたいです。ビジネスとして成立するのはこれからなので、どんどん広がっていって欲しいですし、B to B、企業に対してもアプローチしていけると、より仕事の幅も広がっていくのではないかと思っています。

棟廣 4月からこのセクションは動いているのですが、ライヴの映像演出をやりたいのですが、相談に乗って欲しいという問合せは実際に来ています。当然現段階で所属しているクリエイターの中で、フィットする人がいないのであれば、別のクリエイターも含めて、INTとしてプロデュースするスタイルはやっていきたいです。

『VRDG+H#3』Info.

HIP LAND MUSIC HP

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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