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結成10周年記念ライヴ   SCANDALの一番長く熱い一日は、新たな終わりなき旅の始まり

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
8月21日大阪・泉大津フェニックスで結成10周年記念ライヴを行ったSCANDAL
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8月21日、大阪・泉大津の臨海部の広大な埋め立て地、フェニックスは空は高いが雲が低く、アメリカ映画に出て来る、果てしなく続く荒野の風景に似ていた。その広大な敷地の一部にある多目的広場に組まれた巨大なステージを前に、全国から集まった1万2千人が、4人の登場を今や遅しと待っていた。ライヴのスタートを待っている時間も、友人とフードエリアでフェス飯を食べながら、オープンニングナンバーの予想をしたり、グッズを買ったり、それもライヴの楽しみのひとつかもしれないが、この日の泉大津地方の気温は35~37℃、太陽が容赦なく照り付ける。夏の終りの最後のあがきのような暑さが、これから登場する4人の初めての野外でのワンマンライヴを、まるで祝福しているかのようだ……と思ったりもしてみたが、ただただ暑い…。

2006年8月21日SCANDAL結成。結成の地であり、約束の地でもある大阪で10周年記念ライヴ

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海からの潮風が、少しだけ涼しさを運んできてくれるようなった午後4時半、SCANDALの4人がステージに登場。この日は10年前、同じダンス&ボーカルスクールの大阪校に所属していたTOMOMI(B/Vo)とRINA(Dr/Vo)、名古屋校に所属していたHARUNA(Vo/G)とMAMI(G/Vo)、この女子中高生4人が初めて顔を合わせた“結成記念日”ということで行われたのが、『SCANDAL 10th ANNIVERSARY FESTIVAL「2006―2016」』だ。また、RINAの誕生日でもあり、W記念日が初の野外でのワンマンライヴということで、ファンも本人達もはやる気持ちを抑え切れないかのように、大きな拍手と歓声が沸き起こり、アッパーチューン「LOVE SURVIVE」でスタート。早くもクライマックスを迎えたような盛り上がりだった。

“最強セットリストを持ってきました!”(HARUNA)と言うように、ファンに特に人気の、そして本人達の想い入れも強い曲を集め、10年分の想いを込めたセットリストを用意してくれた。その証拠に曲のイントロが聴こえてくるたびに、ファンは大喜びで、感性やどよめきが沸き起こっていた。

高い演奏力、幅広い音楽性、キャッチーなメロディ、メンバーのキャラクターetcに日本だけではなく世界が注目

今年、SCANDALのライヴは1月13日『SCANDAL ARENA TOUR 2015-2016 「PERFECT WORLD」』日本武道館公演と、5月11日『SCANDAL TOUR 2016「YELLOW」』ZeppTokyo公演の2本観た。当然違うコンセプトのライヴだったが、とにかく揺るがない演奏力の高さがあるので、どんな場所、どんなコンセプトのライヴでも安定感がある。常にイイ音を響かせてくれ、その世界に引き込まれる。彼女達が海外で評価されているのは、ガールバンドというスタイルだけが注目されているのではなく、そこに演奏力の高さがあるからで、その実力には海外のファンも一目置いている。今回のライヴでもその演奏力を武器に、初の野外ライヴとは思えない完成度の高さだった。

新旧の曲を一曲一曲丁寧に演奏し、歌っていく。アッパーなビートが炸裂する激しいナンバーから、切ない歌詞を噛みしめながら歌う曲、ファンの高揚感を煽るパーティチューン、エレクトリックとアコースティックが融合したポップなサウンド、その幅広い音楽性を改めて見せてくれた。共通しているのはポップなメロディ。どこか情緒を感じさせてくれるメロディと重厚なサウンドは、聴く者を選ばないポップさがあると思う。だからこの日も幅広いファン層、特に10代とおぼしき女性ファンの多さが目についた。海外からのファンもいた。3月に発売したアルバム『YELLOW』は、アルバムランキング初登場2位と自己最高位を更新するなど、ここにきて新規ファンの獲得に成功し、ライヴ動員も増えていて、その勢いをこの日は見せつけてくれた。

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HARUNAが「インディーズの頃ストリートライヴをやっていたときのことを考えると、この光景が夢みたいで、でも夢じゃなくて現実で。本当にこんな素晴らしい景色を作ってくれたみんな、今日このステージにかかわってくださったスタッフすべての人々に感謝します。ありがとうございます」と感慨深げに語っていたが、4人は結成してすぐに大阪のストリートライヴのメッカ・大阪城公園(城天ストリート)でライヴを行い、最初の頃はお客さんもまばらだったようだが、ライヴハウスでも腕を磨き、そのパフォーマンスは徐々に評判になっていった。今や大阪城ホールも満杯にする人気だが、デビュー当時と同じストリートの延長ともいうべき野外ステージ、この泉大津フェニックスに集まった1万2千人のファンの笑顔は、4人には一生忘れる事ができない光景になったに違いない。

「1番嬉しいのは、この4人で10周年を迎えられたこと。この4人だったらどこへだって行ける」(HARUNA)

さらにHARUNAが「今改めて10年前を振り返って色々考えてみると、あっという間だったな、早かったなって感じます。1年1年、8月21日が過ぎる度に、また4人で1年やって来られたな、次の1年はどんな年にしようかな、どんなことをやろうかなって毎年わくわくしてました。それは10周年を迎える今も、同じ気持ちです。」と結成記念日を改めて振り返り、そして、「なんだかんだ、1番嬉しいのは、この4人で10周年を迎えられたことかな。自分で言うのもなんか恥ずかしいんだけど、この4人で続けてこられたことって奇跡に近いなと思うし。でも、この4人だったらどこへだって行ける気がします。これからも、『また明日ね』って言い合いながら、できるだけ長く自分たちを信じて歩き続けていきたいなと思います」と、SCANDALの10年間と今後への想いを語った。

このメッセージを聞いて、この日のライヴの、熱を帯びた演奏と歌の中にも感じた優しさ、温かさの正体がわかった。もちろんファンへの感謝の気持ち込めて一曲一曲丁寧に演奏していた。でもその前に、4人が一音一音愛おしむように音を出し、歌い、まるで4人の絆を改めて確かめ合っているような気がした。そしてその絆をさらに強いものにしていく時間だったのだと思う。4人の絆、そしてファンとの絆を確かめ合い、また次へ向かうための通過点が、結成の地であり約束の地・大阪でのこの時間だったのだ。

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さらに、来年ファン投票によるベストアルバムのリリースを発表し、それを引っ提げての47都道府県ツアーを行うことを合わせて発表した。まさにファンとの絆を強固にするための旅だ。その前に、9月10日からは『SCANDAL TOUR 2016 “YELLOW” IN EUROPE』で、オランダ、ドイツ、ポーランド、オーストリア、イタリア、スペイン、フランス、イギリスを回る濃密な2週間の旅に出る。前回のワールドツアーの経験をエネルギーにし、一段とパワーアップした4人の演奏で、ヨーロッパの人々を熱狂の渦に巻き込む。

SCANDALのこれまでとこれからを、メンバー、ファン全員と確かめ合った『SCANDAL 10th ANNIVERSARY FESTIVAL「2006―2016」』は、その“壮行会”でもあった。SCANDALの一番長く熱い一日は、これからの10年、20年を見据えた、終わりなき旅の始まりだった。

<SCANDAL 10th ANNIVERSARY FESTIVAL 『2006−2016』 SET LIST>

M1  LOVE SURVIVE

M2  BEAUTeen!!

M3  Happy Birthday

M4  プレイボーイ

M5  太陽スキャンダラス

M6  夜明けの流星群

M7  恋模様

M8  打ち上げ花火

M9  DOLL

M10 少女S

M11 瞬間センチメンタル

M12 スイッチ

M13 会いたい

M14 さよならMy Friend

M15 Sisters

M16 LOVE ME DO

M17 Stamp!

M18 テイクミーアウト

M19 声

M20 会わないつもりの、元気でね

M21 EVERYBODY SAY YEAH!

M22 Your song

M23 Image

《ENCORE》

EN1  Rock'n Roll

EN2  8月

EN3  SCANDAL BABY

EN4 SCANDAL IN THE HOUSE

左からTOMOMI、HARUNA、MAMI、RINA
左からTOMOMI、HARUNA、MAMI、RINA

<Profile>

2006年大阪・京橋で結成。2008年シングル「DOLL」でデビュー。2012年3月には日本武道館公演を異例の速さで達成し、2013年3月には夢であった大阪城ホール公演を5分で即完させる。2014年6月にはプリンセスプリンセス以来、23年ぶり2組目となる横浜アリーナ2DAYS公演を成功させる。2015年SCANDAL史上最大世界9か国41公演の初の単独ワールドツアーを大盛況に収め、12月からは4万人動員の初の東名阪アリーナツアーを開催。ニューアルバム『YELLOW』を引っ提げての全国&アジアライブハウスツアー『SCANDAL TOUR 2016「YELLOW」』を敢行。7月27日は10周年記念ライヴに向け作られた23rd Single「テイクミーアウト」をリリースした。

SCANDALオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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