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【気になる新人】Lenny code fiction 意志の強い音と美しい佇まいは、次世代の主役候補

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
メジャーデビューを果たしたLenny code fictionのVo・片桐航

音も容姿も”佇まい”が美しい。胸に突き刺さる言葉とメロディを手に、メジャーシーンへ

バンドにとって“佇まい”は凄く大切な要素だ。ステージに立っている姿、演奏している姿、アーティスト写真しかり、そのシルエットに想像を掻き立てられるものだ。“佇まい”がすごくにバンド然としているというか、抜群に美しい新人バンドがデビューした―― Lenny code fiction(レニー)。早くからその才能を認められていたバンドだが、メンバーチェンジや改名などがあり、まさに満を持してのデビューだ。意志の強さを感じる音と胸に突き刺さる言葉を手に、シーンを席巻すべく8月31日に世に放たれた。大きな野望を描く4人にインタビューした。

――先日渋谷eggmanで、新体制になって初めてライヴを観ましたが、何よりその“佇まい”のカッコよさに目を奪われました。

渋谷eggman(8月3日)
渋谷eggman(8月3日)

片桐 航(以下:航) ありがとうございます。僕らもバンドにはそれが一番大事だと思っています。

――メンバーは昔からの知り合いなんですか?

航 そうです。ドラムのKANDAIはこのバンドの前身・CROMARTY時代からよく対バンしていたバンドのメンバーでした。

kazu それでドラムが抜けた時に、サポートに入ってもらって、そのままメンバーになってもらいました。ソラはCROMARTY時代からよくライヴを観にきてくれていて。

ソラ 僕も別のバンドに所属していましたが、このバンドのオーディションを受けて入りました。

「歌と共に、メンバー全員が目立つバンドを目指している」(航)

――メンバーが抜けたりと、大変だったと思いますが、2人の新しいメンバーが入り全員のの演奏力が高く、結果的に音も太くなって、重厚さとポップさとがうまく同居しているバンドだと思うのですが、その音の源になっている、それぞれが影響を受けたアーティストを教えていただけますか?

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ソラ さっき佇まいのことをおっしゃっていただきましたが、やっぱり見た目も大事な要素というところがすごくあって、ギタリストとして目立ちたいと常々思っていて、そういう意味ではMIYAVIさんはギタリストとしてすごく“立っている”ので、パフォーマンスは影響を受けました。

航 僕はラルク アン シエルです。佇まいはラルクに影響されていて、音楽的な部分はミッシェル・ガン・エレファントにも影響を受けていまして、ロック系もガレージ系も大好きな少年でした。ラルクのカッコ良さとミッシェルの凛とした感じを併せ持つことができたら、それがLenny code fictionかなと思っています。

kazu ベーシストで一番最初はレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーに影響され、最近は、ストレイテナーやNothing's Carved In Stoneで活躍している日向秀和さんに憧れています。歌うベースラインをつける時はラルク アン シエルのtetsuyaさんのベースを参考にしています。

KANDAI 音楽的に影響を受けたのはスピッツさんです。元々歌重視のバンドが好きで、自分が所属していたバンドもそうでした。歌に寄り添いつつドラムが引っ張っていく感じが好きなんです。ドラム的にはONE OK ROCKのTomoyaさんに影響を受けています。それとLINDBERGのcherry(小柳昌法)さんです。今の自分はその二人のスタイルをミックスしたようなドラムスタイルだと思っています。

――今、歌に寄り添うドラムという話が出ましたが、でもレニーは歌を強調しつつもそれぞれの楽器がすごく目立っています。

航 それが僕がイメージしていたバンド像なので、歌は一番にこなければいけないですけど、全員が目立つ部分は作りたいと思いました。全員で共存している感じ。

「「Key~」はデビューにあたっての覚悟を書いた詞。それがアニメの主人公の感情と一致した」(航)

――音楽ってあのギターのフレーズがいいとか、あのドラムの音がカッコイイとか、そういうところで印象に残ることもよくありますよね。今回のデビューシングル『Key-bring it on, my Destiny-』が出来上がった経緯を教えて下さい。

航 前からあった曲で、その中でも“この曲はイケるんじゃないかリスト”みたいなお気に入りのリストがあって(笑)、それの上位にずっと入っていた曲です。それで今回のアニメ『D.Gray-man HALLOW』のオープニング曲に挑戦してみないかというお話をいただき、満を持して登場させました。

――メッセージ的にはアニメの世界観に合っていますよね。

航 合わせたという感じではなく、自分でデビューにあたっての覚悟を詞に書いた時に、自ずとアニメの主人公の感情と一致した部分が多かったです。

――曲とアニメが出会った先に、同じようなメッセージが流れていたという感じですか?

航 その通りです。

――メンバーの皆さんはデビュー曲がこれになると決まった時はどう思いました?

kazu 最初のデモの段階では、大まかなドラムとバッキングのギターと、メロディを鼻歌で歌っているだけだったのですが、そんなシンプルな状態でも、この曲は伸びるんじゃないかという感覚がありました。自分達のデビューシングルとして力強い一曲になったと思います。

「「Key~」には自分達の強み、いい部分を全部詰め込んだ」(航)

――デビューシングルって、それがバンドの印象になる事も多く、強く残るものだと思いますが、この曲は音はラウドだけどメロディはキャッチーで耳にスッと入ってきて、言葉が突き刺さるという、今のレニーのカラーが100%出ている曲ですよね。

航 ずっとお気に入りだったので、僕らの強み、いい部分を全部詰め込みたいと思いました。

KANDAI 僕は割と完成系に近い状態のものを聴かせてもらって、自分が好きなドラムパターンがハマりそうだし、良さが引き立ちそうで、メロディもキャッチーで歌詞も(片桐)航らしく攻めている感じが出ていて、一番演りたい曲でした。

――「Key~」のドラムはものすごく手数が多くて、ダイナミックですよね。

KANDAI サウンドプロデューサーのakkinさんのアレンジなんですが、いつもakkinさんには「普通のドラマーはたくさんいる、でもKANDAIにはスーパードラマー、ドラムヒーローになってもらわないと困る」と言われています(笑)。だからレニーの曲に関しては普通のドラマーには絶対できないフレーズを1個入れると言われました。その部分ではいつも苦戦しますが、そこを乗り越えると突然できるようになって、一見ただ速いだけに聴こえるかもしれませんが、意外と手足のコンビネーションがすごく求められたり、普通ではできないフレーズを織り込みつつ、曲に落とし込んでいくことを考えて作っています。

――コピーできるものならやってみろいう感じですね(笑)。ソラさんは?

ソラ まだスケッチ状態だった歌詞がすごく良くて、これはタイアップが決まったからといって変わって欲しくないなと思っていました。その世界観がアニメと偶然一致していて、細かいニュアンスは若干変わった部分もありますが、根本は変わっていなくて、最初に感じた力強さがそのまま出ていると思います。

――なんというか“いい匂い”がする曲ですよね。

航 (笑)音はラウド系でガッツリしていますが、繊細さというか綺麗さは削りたくなかったので、でも逆にスッキリしてまとまって、突き刺さるような音になったと思います。

「対照的なカラーの3曲を収録して、それぞれの歌詞の世界観、色々な面を持つ僕達の音楽を一枚で伝えたかった」(航)

――やっぱり肝は片桐さんのボーカルですよね。どこか儚げな感じもあるし、音がギュインギュイン鳴っていても、航さんが歌うと切なさが入ってきて、レニーの4人の音、世界観になります。カップリングの「世界について」「Showtime!!!!」も全然カラーが違う音楽性で、色々な面を持っているバンドなんだという事が一枚でわかりますね。

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航 何色かカラーがあるというか、色々なパターンの曲があるのですが、その対照的な3曲を入れようということになって。「Key~」でこういうバンドなんだって感じてもらいつつ、他の曲で全然違う面を見せたいと思いました。歌詞の世界観もきちんと知って欲しいと思い、この3曲にしました。

――「世界について」はギターがガンガン鳴って、リードしています。

ソラ この曲は全員でイメージで共有した瞬間に、ギターの重心を上に持って行こうと思いました。隙間は全部ギターで埋めてやるぞという勢いで、デモをもらった瞬間に各所各所にフレーズを詰め込んで、足し算は全部自分でやったので、後は話し合いで引き算の作業でした。

航 この曲はデモの段階と完成形がほとんど変わっていなくて、そのデモも3時間位で歌詞も含めて全部作り上げました。いつもデモの段階ではタイトルは適当に付け、後で直しますが、この曲は奇跡的にデモの時のままのタイトルです。

――滋賀から世界の事を考えていた。

航 そうです(笑)。滋賀の田舎道で空を見上げながらポジティブになっていました。

――他の曲と違って英詞が一切入っていないですね。

航 普段自分が一人で考えている事をできるだけ言葉にしたくて。

ソラ 聴いた時にいい意味で歌詞っぽくなくて、メッセージだなと思いました。

航 2~3時間で書いたので、もしかしたら素直すぎるのかもしれないですね。

――いつも曲ができた時は、アレンジもほぼ頭の中では出来上がっている感じですか?

航 そうですね。大体風景とか画を思い浮かべてから曲を作るので、最初に思い浮かべたものから最終的にブレていないことが多くて、それを鮮明にしていく作業という気持ちでやっています。

――今、曲のストックは断片的なものも含めると何曲位あるんですか?

航 220~230曲はあると思います。頑張りました(笑)。映画がすごく好きで、一日一本観ると決めて、観るだけだじゃなく、観終わった後1曲書くという事を1か月間続けたりしました。

kazu 1MOVIE、1MUSIC計画(笑)。自分を縛って、追い込んで。

片桐 そうMM計画です。後半はもう映画観たくないって思いました(笑)。

ソラ でもその時書いた曲が全部いいんですよね。

航 やっぱり映像が浮かびやすいというのがあるので。

――アーティストは生産力が大事になってきますよね。今は航さんが曲を書いていますが、ゆくゆくはメンバーのみなさんも曲を書いていきたいと思っていますか?

kazu 今、書き始めている感じです。やっぱり一人だけの負担になってくると、このままだとスケジュールが過密になってくると、人間なので書けなくなってしまう事もあると思いますので、そうなると困るし、なのでメンバーも書き始めようという話にはなっています。

――冷静です。でもこういうきちんと全体を観ることができる人が、バンドには絶対必要だと思います。

kazu マジメを凝縮したような男です(笑)。

――3曲目の「Showtime!!!!」の話を聞いてもいいですか?この曲も他の2曲とは全然違う味わいで。

「Key-bring it on, my Destiny-」(8月31日発売)
「Key-bring it on, my Destiny-」(8月31日発売)

航 カップリング曲を決める、選曲会の前日に完成した曲なんです。何も考えず、好きなようにやってみようと、少年時代に戻ったような感じで、ギターを持って思うままに歌ってみました。デモを作ったら、いいのができたなと思ったので、その選曲会に持って行って、ドラフト1位で自信満々で出したら、メンバー、スタッフ全員からNGが出て(笑)。でも頭の中で曲の構想は出来上がっていて、絶対にいい曲になると思ったので、アレンジをやり直して3日後に全員に聴かせたら、これで行こう!となった曲です。勢いがあってライヴで盛り上がる曲を、楽しみながら好きなように作ったわがままな曲です(笑)。

ソラ デモの段階で完成系が見えなかったんです。それこそ映画に感化されて出来上がった曲なので、ただの趣味爆発の曲という感じでした(笑)。それで反対したんですけど、アレンジを変えてきた時に完成形が見えてきて、これは行ける!と思いました。

kazu なぜそっちを先に持ってこないんだという(笑)

「楽器を始める前から”目標は日本武道館、東京ドームでライヴをやる事”と言っていた。とにかく大きくなりたい、大きいところでライヴをやりたい。その目標は全員一致している」(航)

――やっぱりライヴを想像して曲を作ることが多いんですか?

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航 この曲はそうですけど、曲によってですね。でも僕らも楽しい瞬間、悲しい瞬間のイメージをたくさん持っているので、楽しい瞬間に聴いて欲しい曲は、自分達がライヴで楽しくなっている瞬間をイメージして作ったりもします。8月3日の渋谷eggmanでのライヴでこの曲を初めて演奏しましたが、お客さんは意外とすぐに受け入れてくれたと思いました。間違っていなかったという感触はありました。

ソラ 渋谷eggmanの次のライヴでは、この曲をやる予定がなかったのですが、速攻でセットリストに組み込みました。

――ライヴハウスで鍛えられたバンドだと思いますが、やっぱり大きいところでやりたいという野望は全員持っていますか?

航 楽器を触る前から、曲作りをする前から思っていたのですが、中学生の時の卒業文集に「夢は東京ドームでやること」って書きました(笑)。高校1年生の夢みたいな、プロフィールを書くときも一人だけ日本武道館、東京ドームでライヴしますとか書いて、進学校だったので、こいつ大丈夫か?って思われていました(笑)。

――全員メジャーというフィールドにこだわったんですか?というのも今って、自分達の音楽を自分達のスタンスで、自分達のペースで、好きなようにやりたいのでメジャーとかインディーズにはこだわりません、という若い人も多いので。

航 メジャー以外全く興味がなかったです(笑)

kazu 元々憧れていたものが、派手な演出のライヴをやっているアーティストだったので。

ソラ 個人的にはメジャーデビューしたいというのは、最近まで思ったことがなくて、でもそうじゃなくて、僕たちが見たい世界に行くためには、メジャーを通らなければ行けないんだという事を、一昨日気がつきました(笑)。

――メジャーになって、大きいところでライヴがやりたいと。

航 それしかないです。

――サウンドプロデューサーはONE OK ROCK等を手がけるakkinさんですが、どんな話をしながら作品を作り上げていったんですか?

航 ハイブリッドというキーワードが飛び交っていました。

ソラ ビンテージサウンドとは全く逆の、モダンでしっかりした感じのものをやっていこうと。

kazu たぶん僕らが思っていることは、モダンということなんですけど、レコーディングの時に飛び交っていた言葉がハイブリッドでした(笑)。

航 今回の3曲はモダンというテーマで作って、でもこれから先出していく曲はビンテージ感があったり、曲によって色々キーワードが出てきたので、それに対しての意見を僕らがakkinさんにバーっと言って、ひとつにまとめてくれるという感じです。

ソラ やりたい事を叶えてくれる、ドラえもん的な存在です(笑)。

「最近あまりない”王道”感があるサウンド、佇まい、ライヴでのスタイリッシュさが融合すれば、どのバンドにも負けない強みになる」(航)

――4人が弾き出す音は、男子が好きな音だと思います。

航 そうですね、ドラムがガッツリしていて、ギター、ベースの音も大きいバンドの音って、昔の自分を思い出してもまずカッコイイ!と思ってもらえると思います。「Key~」のMUSIC VIDEOを公開してからも、叩いてみた、弾いてみた動画が上がっていたりしますが、ドラムが断トツで多くて、でも叩けていない人が多いですけど(笑)

kazu 叩いてて楽しいんじゃないですかね。ゆくゆくは男性ファンが多いバンドにならないといけないとは思います。

航 たぶんボーカル、ギターは女子担当で(笑)、ドラムとベースは男子担当で、上手と下手で別れるんじゃないですかね(笑)

――色々なバンドが多い中、そこを勝ち抜いていくために自分達が持っている強さを、改めて自分達の口からファンに伝えて下さい。

航 曲に関しては最近あまりみない“王道”感があると思っています。ガッツリした言葉とメロディと構成とサウンド、そういうバンドは他にもいるかもしれませんが、その中で最初に言っていただいた“佇まい”やスタイリッシュさが融合すれば、どのバンドにも負けない強みになると思っています

左からkazu(B)、KANDAI(Dr)、片桐航(Vo&G)、ソラ(B)
左からkazu(B)、KANDAI(Dr)、片桐航(Vo&G)、ソラ(B)

<Profile>

レニーコードフィクション。平均年齢22歳、片桐航(Vo&G)を中心に滋賀で結成。2012年前身バンド「CROMARTY」で10代フェス『閃光ライオット2012』決勝大会に進出。2014年秋、Lenny code fictinへ改名。2016年、ソラ(G)、KANDAI(Dr)が加入。サウンドプロデューサーにONE OK ROCKなどを手がけるakkin氏を迎え、デビュー曲「Key-bring it on, my Destiny-」が、人気アニメ『D Gray-man HALLOW-』(テレビ東京系)のオープニングテーマに抜擢される。2016年8月31日、キューンミュージックよりメジャーデビュー。

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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