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【インタビュー】デビュー8年、”オレ様男子”を演じ、若い女性を熱狂させる男装ユニット・風男塾の現在

田中久勝音楽&エンタメアナリスト

ドSセリフが次々と繰り出されるライヴは、10~20代の若い女性ファンを中心に男性も虜に

10月16日、新宿のライヴハウス「ReNY」に集まったのは8割以上が若い女性、残りが男性で、合わせて600人のファンが、黄色い声援をステージに向かって送っていた。ステージ上には、覚えやすいメロディの曲を歌い、切れのあるダンスを披露し、熱い視線と共に「もう君のことは離さない」「他の事は考えんな。俺だけを求めてみろ。」など、“オレ様男子”を演じ、女性ファンが“言ってほしい”言葉を客席に投げかける6人組の姿が。

それが男装ユニット・風男塾(ふだんじゅく)だ。風男塾は2008年にお笑い芸人・はなわプロデュースでデビューして8年。様々な変化と進化を続けながら、現在までにシングル17作品、アルバム5作品をリリースし、ライヴの動員も増やし続けている。現メンバーは(アーティスト写真左から)青明寺 浦正(せいみょうじ うらまさ)、仮屋世 来音(かりやせ らいと)、愛刃 健水(あいば けんすい)、瀬斗 光黄(せと こうき)、赤園 虎次郎(あかぞの こじろう)、藤守 怜生(ふじもり れお)の6人。中心メンバーの瀬斗と、新メンバーの藤守に、改めて風男塾が目指すところ、最新シングルについて話を聞いた。

左:藤守怜生、右:瀬斗光黄
左:藤守怜生、右:瀬斗光黄

「男性に言われてみたい、でも実際に言われると恥ずかしい……そんな女性の夢や願望を叶えてあげられるのが風男塾」(瀬斗)

――風男塾は、デビュー以来「人を元気にする」というコンセプトで“唯一無二の男装ユニット”として活動していますが、アイドルとしては異色の存在ですよね。

瀬斗 アイドルでいたいです(笑)。アイドルがたくさん出演するイベントにも出させていただいていますが、かわいい女のコのアイドルを観に来ている男性が多くて、俺たちがそこに出ていくとやっぱり異色なんだなということは感じます。でも初めて観て好きになってくれる人もいて、それが嬉しいです。

――今8割位が女性ファンだと思いますが、もちろん男性ファンも多くて、彼らは風男塾の事をどういう存在として見ているのですか?

瀬斗 メンバーは女性タレントしても活動しているので、それを観て好きなってくれて、風男塾のライヴに行ってみると曲が良くてハマったという声をよく聞きます。ライヴがとにかく楽しいと、何回も足を運んでくれる方が多いです。

――女性ファンから見ると、少女マンガやアニメの主人公が飛び出してきたような、2.5次元の世界にいる人達という感じなんでしょうか。

左:愛刃健水、右:瀬斗光黄
左:愛刃健水、右:瀬斗光黄

瀬斗 自分たちも少女マンガが大好きなので、風男塾としてやっていけているのだと思います。ファンが言って欲しいと思っている事を言ってあげる事ができたり、それこそ壁ドンは去年何百回やらせてもらったかわかりません(笑)。顎クイとか。

――憧れの人とか彼氏とかに言って欲しい、やって欲しい事を実現しているという事ですよね。

藤守 マンガのセリフを、現実の男性が言ってもたぶんダメなんですよ。

瀬斗 壁ドンも実際はやられたくないけど、願望や夢としてあるという感じだと思います。本当はやって欲しいんだけど、でも実際にやられちゃうと恥ずかしいというか。でも風男塾がやると、それは遊びということで楽しめるし、それがエンタテイメントだと思います。

――夢見ていることだけど、できないし、どこで誰にやってもらうわけでもなく、でもそこに現れたのが風男塾という感じですね。

瀬斗 そうですね、だから2.5次元みたいと言われるのだと思います。自分もそう思います。実際の男性に「お前の事だけ見てるよ」って言われたら「えっ何言ってるの?本当に思ってるの!?」って思うと思います…。

藤守 俺もそうです。男性がそう思ってくれていたとしても、恥ずかしいから嫌、言って欲しくないです(笑)。

瀬斗 でもアニメのキャラクターのセリフを聞いたり、マンガで読んだりしたときにときめく感じを、風男塾は叶えてあげられる存在なのだと思います。

ファンの“妄想”を叶えてあげるのが彼らのライヴだ。独特のコールが飛び交う中、6人が決め台詞を客席の一人に向かって、そのファンの目を見ながら言うと、言われた本人はもちろん、全員が心を打ち抜かれ、黄色い声援と、色とりどりの紙テープがステージに投げこまれる。6人のイケメン達は魔法をかけて、ファンは魔法をかけてもらいに来ているのだ。

「”男装”という文化がメディアでも取り上げられるようになり、認知と理解が進み活動がやりやすくなった」(瀬斗)

――藤守さんは加入してまだ数か月ですが、ダンスや歌を覚えるのが大変だと思いますが、ファンとのやりとりはもう慣れましたか?

左:仮屋世来音、右:赤園虎次郎
左:仮屋世来音、右:赤園虎次郎

藤守 風男塾に入って初めて経験することが多いのですが、でもやっぱり自分の中には色々な自分が存在していて、ライヴに来てくださるファンの数だけ自分がいると思っていて、なのであまり考えすぎず、ファンの方とは素で触れ合っています。

――先輩たちは優しいですか?

藤守 こんなにいい人達が集まっているグループいないと思うくらい、居心地がいいです。

瀬斗 みんなマイペースで、女子特有のネチネチ感とかが本当になくて、お互い干渉し合わないというか。

――2008年に結成して、歴史、伝統も積みあげてきていると思いますが、これからどんなユニットにしていきたいですか?

瀬斗 新しいものを作りたいです。ここ数年で男装という文化がメディアでも取り上げられるようになって、認知と理解が進んできたと思うので、そういう意味では以前よりも活動しやすくなったと感じていて、風男塾というジャンルを確立して、新しい事をどんどんやっていきたいです。 

風男塾のライヴは聴かせるところは聴かせ、ダンスで見せるところは見せ、そしてトークや寸劇で笑わせ、観るだけで元気になるエンタテインメントだ。特に楽曲のクオリティの高さが風男塾の売りのひとつで、「歌詞がグッとくる」という声が多い。最新曲の『NOIR~ノワール~』(8月31日発売)は、数々のアニメソングやゲーム音楽を手がける、人気音楽クリエイター集団「Elements Garden」がプロデュースしたことで注目を集めている。これまでの作品とは違い、ダークな雰囲気を醸し出すドラマティックで、ファンタジーな世界観が印象的な楽曲だ。

「Elements Garden」プロデュースの最新曲「NOIR~ノワール~」は、風男塾の新たな扉を開ける大切な1曲

「風男塾に加入して最初のシングルで、セリフ部分を一番多く担当させてもらい、アピールができたと思う」(藤守)

――最新曲「NOIR~ノワール~」を最初に聴いた時はどう感じました?

「NOIR~ノワール~」(8月31日発売)
「NOIR~ノワール~」(8月31日発売)

瀬斗 楽曲プロデュースが「Elements Garden」さんで、俺はアニメ、アニソンが大好きだったので「あのエレガさんがやってくれるんだ!」とすごく嬉しくて、曲を聴いたら一瞬でアニメのオープニングが自分の頭の中で作り上げられる感覚でした。アニソンファンの方にも聴いて欲しいですし、風男塾ファンの方にもドキドキしてもらえると思いますし、また新たな扉を開ける曲をいただけたと思いました。生で聴いていただくと、すごく迫力がある曲ですので、是非ライヴを観て欲しいです。

藤守 初めて聴いた時は、難しい曲だなと思いました(笑)。最初と最後が儚げで、盛り上がる部分とすごくメリハリがあるので、自分の中で白と黒を元に勝手に物語を作って、難しい曲に歩み寄っていきました(笑)。

瀬斗 セリフが多い曲なのですが、実はセリフオーディションがあって(笑)。結果的にセリフが一番多いのは怜生君でした。

藤守 風男塾に加入して初めてのシングルだったので、セリフが多くてアピールでき、嬉しかったです。

瀬斗 ファンの人は俺様系の言葉が好きな方が多いので、どSなセリフ攻めです。

――Elements Gardenさんからはどんなアドバイスがありましたか?

瀬斗 一人ひとりのセリフのところで「もう少し病んでる感じ」とか「優しい王子ではなく闇がある王子になって」と言われ、今までは元気を与える曲が多かったので、そこが予想外でした。ダークな感じで、今までにはない新しい世界観を作って下さいました。

――今絶賛ツアー中ですが、毎年ツアーを行ってきて、自分の中で変わってきた事、風男塾として変化したことはありますか?

瀬斗 できる事が広がってきたと思います。最初の頃は「これやって」と言われたら「わかりました!」という感じでその通りにやっていましたが、今は自分達で「こういう演出にしたいです」「こういうセットリストでやりたいです」という意見を、自信を持って言えるようになりました。今回のツアーも、ほぼメンバープロデュースという感じです。自分達でよりカッコよくしようという気持ちが強くなりました。

――藤守さんは初めての全国ツアーですが、いかがですか?

左:藤守怜生、右:青明寺浦正
左:藤守怜生、右:青明寺浦正

藤守 4月に加入して、5月に4大都市ツアーに参加して、全国ツアーは初めてです。全部初めて体験する事ばかりですので、これから自分がどう変わっていくのか楽しみです。

瀬斗 「最近すごくパフォーマンス力が上がりましたね」と皆さんから言っていただけるので、やっていることが間違いじゃないなんだと思えて嬉しいです。

「日本武道館や1万人規模の会場でライヴをやりたい。海外でも活動したい」(瀬斗)

――これから風男塾が目指すべき場所を教えて下さい。

瀬斗 今、全国ツアー中で、先日、そのファイナルを来年1月14日に中野サンプラザで行う事を発表しましたが、まだ日本武道館や横浜アリーナなど1万人を動員できるステージには立てていません。1万人のファンの前でパフォーマンスをやる事を、メンバー全員いつも想像しながら日々の活動を行っています。そのためには風男塾の知名度をアップさせなければいけません。俺たちの素の部分も含めて全部知って欲しくて、YouTubeでチャンネルもやっています。この8年間、本当にたくさんの方に応援してもらっていますので、そういう方に早く恩返しをしたいです。

――海外のファンも多いですね。

瀬斗 Facebookでいいね!を押してくれる海外の方が増えています。5年前に台湾、香港のイベントに出させていただいたのですが、現地の方が今でも応援してくださっていて、インドネシアのファンの方も多いので、現地でライヴをやりたいです。海外にはアニメ好きな人が多いですし、コスプレも人気なので、そういう人達が真似したくなるようなスタイルで、海外で活動するのが目標です。

コスプレはアニメと並んで海外でも大人気のジャパンカルチャーのひとつだ。ガールスバンドも珍しいが、女性が男装したイケメンユニットというのは日本はもちろん、世界的にも珍しい存在だ。そんな彼女たちに海外ファンから大きな注目が集まってきている。更なる高みを目指す風男塾は、現在メンバーを公募してグループ内で化学反応を起こさせ、さらにその進化を加速させようとしている。そしてアリーナクラスの会場と、海外でのパフォーマンスを目標に、決して止まることなく全国でライヴを行っている。若い女性が求める「オレ様男子」を演じる男装ユニット・風男塾のこれからがますます楽しみだ。

風男塾オフィシャルサイト

風男塾YuTube公式チャンネル

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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