Yahoo!ニュース

「その時一番困っている人を助ける」チャリティーコンサートを毎年開催 平原綾香、人を想い、歌う

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
1月19日東京国際フォーラム ホールC

<平原綾香 Jupiter基金>チャリティーコンサートで、クリス・ハートと共演

1月19日、東京国際フォーラムホールCの客席からは、ステージに向かって「ブラボー!!」の掛け声が飛び交っていた。

1曲1曲全身全霊で歌い、その圧倒的な表現力で歌を伝えようとするその姿勢に、聴き手は感動し「ブラボー!!」と絶賛する。その歌い手は平原綾香。低音の重みのある迫力ある声から、豊かで瑞々しい中音部、そして伸びのある高音部と、声の幅の広さで、歌をより感動的に伝える事ができるシンガー・ソングライターだ。

この日行われたのは『第3回 平原綾香 Jupiter 基金 My Best Friends Concert ~顔晴れ(がんばれ)こどもたち~』で、2015年に世界中の子供達を救済するために自身が設立した<平原綾香 Jupiter基金>のチャリティーコンサートだ。スペシャルゲストにクリス・ハートを迎え、二人の極上の歌に客席は酔っていた。

画像

このチャリティーコンサートはこれまでに2回開催され、この基金の大きな特長である、その時最も困っている人を助けたいという思いから、毎年支援先を決めている。コンサート収入より経費を除いた金額とグッズの制作費を除いた全額と、会場で募った募金を第1回目(2015年12月)はNPO法人「ACCL(アジアチャイルドケアリーグ)」を通じ、小児がんで苦しむ子供とその親に寄付し、2回目(2016年12月)は「クラリーノランドセル基金」と協力し、アフガニスタンの子供達を無料診断している「アフガン医療連合」へ医療品支援として寄付している。

今回の寄付先は“東日本大震災被災児の自立支援”“復興のリーダーづくり”を目的に発足した「Support Our Kids」(サポート・アワー・キッズ)。ひとりでも多くの子供達に、海外経験を通して自立のきっかけをつかんでもらいたいと、これまでに342人(2017年1月現在)が海外へ渡っている。平原は「たくさんのお客様に来ていただき、たくさんの子供が笑顔になっています」と感謝した。

平原は2003年、イギリスの作曲家・ホルストの組曲「惑星」の第4曲「木星」を原曲にした「Jupiter」でデビュー。いきなりミリオンヒットを記録。翌年発生した中越地震では、被災者の応援歌として「Jupiter」がラジオで繰り返しオンエアされ、その歌詞が人々を励ました。平原はこの時の事を公式サイトで「2003年にデビューしたばかりの私は、歌うことしか出来ないもどかしさを抱えていました。音楽で何ができるのだろう、私は何のために歌うかを自分に問いかける日々の中で、歌うことへの意味を教えてくれたのは、私の歌を聴いてくださった傷ついた方々でした」と語っている。この時の想いが<平原綾香 Jupiter基金>設立の強い思いにつながっている。ちなみに、毎年行われる新潟県の長岡花火大会では、今も「Jupiter」をBGMにした復興祈願花火が、人々の祈りとともに打ち上げられている。

そして2011年に東日本大震災を経験し、平原の、傷ついた人を歌う事で救い、手を差し伸べたいという想いをさらに強くして、デビュー13年目を機に、「“顔晴る(がんばる)”力を届けていきたい」と、音楽を通じて社会貢献、様々な支援するためにこの基金を設立した。決して一過性のものではなく、毎年1回を目標にコンサートを開催し、継続的にコンサートの収益から制作費を除いた全額を支援金として寄付している。

鳴りやまないスタンディングオベーション

画像

この日のコンサートはドラム、ベース、ピアノ、そして平原の父で日本を代表するサックス奏者の一人、平原まことのサックスという構成で、シンプルながらも豊潤で奥行きのある演奏で、平原の歌に寄り添い、客席に真っすぐ届けていた。平原とクリスのデュエットもあり、またクリスが中島みゆきの「糸」をカバー、平原が中島から提供してもらった「アリア-Air-」を披露するなど、中島みゆきナンバーを競演した。アンコールの最後に「Jupiter」を披露。その圧巻の歌にスタンディングオベーションがしばらく鳴りやまなかった。

「もっと<平原綾香 Jupiter基金>が独り歩きしていって欲しい」(平原)

彼女の声と歌によって、コンサート会場にいた人は癒され、勇気づけられた。そしてこの瞬間は、コンサート会場には来ることができなかった、多くの傷ついた人達の事も癒し、勇気づけるという事につながっている。その事を、鳴りやまない拍手を浴びる彼女の姿を見ながら、そして「これからもっと<平原綾香 Jupiter 基金>が独り歩きしていってもらいたい。毎回、寄付先を決めていないので困っている場所があったら、駆け付けていくという「Jupiter」歌詞の通り、しっかり誠意を込めて、心に寄り添いながら活動していきたい」という、彼女の言葉をかみしめながら、強く感じた。

<平原綾香 Jupiter基金>HP

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

田中久勝の最近の記事