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【インタビュー】ビートたけし ネットマガジンを始めて、改めてネットに対して感じた事、思う事とは?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
70を超えてもなおバカをやる理由?「バカ」という病気なんだよ。死ななきゃ治んない

ビートたけしが編集長を務めるネットマガジン「お笑いKGB」は、毒舌、下ネタ、マニアックなネタ が飛び交う、ビートたけしが今最も情熱を注いでいる"たけしらしい場所"として、話題を集めている。その「お笑いKGB」が創刊から一年が経ち、コンテンツはさらに過激に、面白さを増し、充実してきた。そんなサイトの現状とこれからの方向性を、ビートたけし編集長にインタビュー。「お笑いKGB」という舞台を通し感じる事、今の息苦しい世の中への苦言、最近の話題への痛烈なメッセージ、ネットというものへの考え方など、その答えはどんどんヒートアップ。でもそれはお笑いへの限りない愛情でもあり、死ぬまでお笑いをやり続けるという、天才“お笑いバカ”から、全ての人への過激で温かなメッセージでもある。

「お笑いがわかっていないバカが多すぎる。世の中真面目すぎる」

――ネットマガジン「お笑いKGB」がスタートして1年が過ぎましたが、編集長として総括していただけますでしょうか?

「お笑いKGB」トップページ
「お笑いKGB」トップページ

たけし 会員が少しずつしか増えてないからなあ。ちょっと少ないな。もうちょっと爆発的に増えなきゃダメだって。やっぱり、お笑いがわかってないバカが多すぎる。世の中、真面目すぎる。だって、俺の本(「テレビじゃ言えない」(小学館新書))で「ネットのバカ」って、「バカじゃねーか、アイツら」って書いたら、文句言われたっていうからよ。バカはいつも文句言うんだよって。「どうだっていいや」ってやつがもうちょっと増えて、オリンピックなんてどうだっていいし、東京都なんかどうだっていいし、日本なんかどうだっていいっていうヤツが増えればだな、世の中の空気がそうなれば、国会議員も考え直すんだよ。「これじゃあ日本は終わってしまう」って。それが真面目ぶってだな、国のことを考えるとか言ってるんだよ。少子化対策なんて言ってるけど、少子化なんてな、子供ができたら金かかってしょうがねぇなんて思うから作んないだけで、ヤリまくりゃいいんだよ。昔だって貧乏人の子だくさんなんていっぱいいたんだよ。それでも、その時だって飢え死にしたって聞いたことないんだから。戦争中なんか、何だって食べて生き延びたんだから、いいんだよ。かっこつけんじゃねぇっていうんだよ。マヌケなことをマヌケだって考えなくったっていいんだよ。やってることが人から見たらバカげてたって、それが平気でいられなきゃいけないんだよ。

月額540円で見放題の「お笑いKGB」は、様々なコラムで構成されている。たけしとの関わりが深い人がたけしの人となりを語る『私とたけし』、北野たけし監督作品に出演経験のある俳優やスタッフが、当時のエピソードを語る『北野映画かく語りき』、『たけしの人生相談』、たけしが地元・足立区を語る『ビートたけしの足立区マップ』、様々な漫画家の手による漫画『中年マンデイ』、カツラ情報が飛び交う『お笑いKGB在家信者カツラ目撃情報』、投稿された川柳をたけしが採点する『たけし川柳』など、伝説のラジオ番組「ビートたけしのオールナイトニッポン」を彷彿させるような、毒っ気たっぷりのコンテンツが揃っている。その会員は『在家信者』と呼ばれ、たけしはとても大切にしている。BBQ大会を開催したり、昨年11月にはライヴも行い(世田谷区民会館)、最近はなかなか観る事が出来ないたけしの生トークに、客席は爆笑に次ぐ爆笑だった。このネットマガジンのためのBBQ大会、トークライヴだが、当初ネットに対して辛辣な発言を続けていたたけしの目を、ネットに向けさせたのはこの副編集長のアル北郷だ。とはいえ本人はまだまだネットの世界、ネット民に対して一家言あるようだ。

「ネットをそのまま信用する、本質を読み取る力がなくなっているやつが多くて困る」

――以前はネットに対して否定的な意見をお持ちでしたが、「お笑いKGB」を始める前と始めてからとでは、ネットという“場所”への印象は変わりましたか?

たけし 相変わらずネットで、なんか真面目に答弁してるバカ。ああいうバカはさ、こっちは自分をさらけ出して、改めてくだらないことやってるんだから、あっちが化学肥料だとしたら、こっちは有機農業だと思ってくれれば。こっちは“ウ○コの臭い”をちゃんとさせてんだから。我々はもう有機農業だから。

――ネットという場所も、扱う人間によって変わるということですね。

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たけし そう。ネットだけで完結してる。昔は新聞。新聞に書いてあったら、みんな真面目に信じたでしょ? ラジオ、テレビ、今、ネットだよ。みんな、それが全部「書いてあった、書いてあった」って頭から信用してんだよな。「だって、テレビで言ってたもん」とか「新聞に書いてあったもん」とか。あれが全部正しいと思ってたヤツが、今はネットにいってるんだよ。で、ネット自体を全然不思議と思えないんだよ。それに対する反面教師が「お笑いKGB」。KGBはまるっきり嘘じゃないから。嘘っぽいんだけど、その中にいかに真実が多いかってこと。ネットをそのまま信用するバカがいるけど、ネットの中を読み取る力がなくなっちゃってるから困るんだよな。

――「お笑いKGB」もたけしさんの“やりたかったこと”のひとつだと思いますが、次はこういう面白いことをやりたい、という野望はありますか? ネットでもテレビでもラジオでも雑誌でも、メディアは問いません。

たけし やっぱりね、テレビや何かで放送禁止というのがよくわからない。それを取っ払った番組をやりたい。だけどそれを取っ払ってヒンシュクを買うようなことじゃなくて、笑っちゃえるの。笑っちゃえるんだから許してもらえるような放送禁止。ただ「チ○ポ」とかだったらわかんないけど、「ナントカのチ○ポ」だったら笑うみたいなね。「ウ○コ」っつったって、それは前後の文によっては放送禁止になる。でも、その言葉だけを捉えた放送禁止ってのはおかしい。とにかく、遊びじゃないんだ!

「70を超えてもバカをやる理由?「バカ」という病気なんだよ。死ななきゃ治んない」

昨年11月に行われた「お笑いKGB LIVE」でも、たけしはまるで中学生、高校生が、部室で大笑いしながら話しているような下ネタを炸裂させ、客席は大喜びだった。70歳をすぎてもまるで中学生がバカをやるような無邪気さと、こだわり、両方を感じた。そのバカをやり続ける原動力な何だろうか?

――「お笑いKGBライブ」などの生舞台にも出演し、70歳を超えてもなお“ビートたけし流バカ”をやり続ける、その原動力はどこから来るものなのでしょうか?

たけし 天然のバカなんだよ。病気なんだよ。「バカ」という病気なんだよ。不治の病なんだよ。死ななきゃ治んない。

その「バカ」をやりたい放題できる、たけしにとっての理想郷が、今は「お笑いKGB」なのかもしれない。

「ビートたけし責任編集 お笑いKGB」

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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