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銀座の街を愛する人々が「ヘイトスピーチ」講座開催へ―敷居下げ、共に学ぶところから

田中宝紀NPO法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部責任者
自分の街でヘイトスピーチが行われていたら、どう感じるでしょうか?(写真:アフロ)

「ヘイトスピーチ」という言葉を知っていますか?

2013年の流行語大賞トップテンにもランクインしたこの言葉。聞いたことがあるでしょうか?「ヘイト」というのは、もともとは「憎しみ」という意味で、ヘイトスピーチはおおむね「特定の人種、民族、宗教など、少数の人たちに対して、暴力や差別をあおったり、おとしめたりするような、侮蔑的(ぶべつてき)な表現のこと」と定義されています。

ここ数年で、東京や大阪などを中心に、韓国・朝鮮や中国にルーツを持つ人々を対象としたヘイト・デモ活動が活発になったり、インターネット上でも、こうした人々などに対するヘイトスピーチが広がっていることが問題となっています。こうしたデモ活動の様子は動画サイトなどで見ることもでき、差別的な言葉を人々が叫ぶ様子などが映し出されています。

「ヘイト」に対抗する「カウンター」行動

こうしたヘイトスピーチやデモに対する抗議行動も活発化し、「カウンター・アクション(行動)」と呼ばれ、ヘイト・デモが予定されている同じ日に同じ場所で横断幕やプラカードを掲げたり、ヘイト・デモを行う人々に対して差別的言動を止めるよう呼びかけたりなどのアクションを起こしています。

ヘイト・スピーチやそれに対するカウンター行動は、直接デモを見たことがない方であっても、SNSやニュースなどで目にする機会が増えており、気になっている、という方もおられるのではないでしょうか。

敷居下げ、共に学ぶところから

一方で、ヘイトスピーチは許すことができないけれど、カウンター行動に自ら携わることはなかなかできない、という方や、ヘイトスピーチについてまだよく知らないので何ともできないと感じる方も少なくないかもしれません。

そういう方にお勧めしたい、新しい切り口での取り組みが少しずつ始まっています。

今週、2月19日(日)に東京の銀座で行われる反ヘイトスピーチ基礎講座もそのうちの一つで、ヘイトスピーチとは何なのか、なぜ放置しておいてはいけないのか、について初歩から学ぶことのできる機会となっています。

大好きな街、銀座でヘイトがあることを、許せなかった

講座を企画したのは、「銀座 No! Hate 小店」というグループ。主催者の方が以前、東京の銀座の街で行われるヘイト・デモを目の当たりにし、幼い頃からご本人にとってなじみのあった銀座の街に、ヘイトがあることを許すことができないと感じた、素直な気持ちを原動力として、2016年の春に始まった活動です。

すでに第1回目の講座を2016年6月に実施しており、「(ヘイトは嫌だけど)カウンターもちょっと・・・」と考えている、”銀座という街が好きな人々”が、落ち着いて学ぶことのできる機会として好評を得ました。

「食べる」をテーマに、多様性と共生について考える

第2回目の講座では、「食べる」をテーマに、フードジャーナリストである平松洋子氏と、法政大学教授で小説家の中沢けい氏を招いて、「食べよう!笑おう!手をつなごう!胃袋から考える、多様性と共生と」と題した講座や、大東文化大学の渡辺雅之准教授によるヘイトスピーチに関する基礎講座が行われます。

第2回「誰の笑顔も奪わないために 反ヘイトスピーチ基礎講座@銀座」は2017年2月19日(日)の午後2時~。場所は銀座教文館9階のウエイライトホールにて。詳細は「銀座 No! Hate小店 フェイスブックページ」を確認してください。

いま、時代が急激に変化していく中で、私たち1人1人が、日本の国内外で起きている人種差別やヘイトスピーチの現状を学び、考えていく必要性が高まっています。正しくないと感じることには、沈黙ではなく、No!の意志を示すことも未来をつくる大切な一歩、となるはずです。

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部責任者

1979年東京都生まれ。16才で単身フィリピンのハイスクールに留学。 フィリピンの子ども支援NGOを経て、2010年より現職。「多様性が豊かさとなる未来」を目指して、海外にルーツを持つ子どもたちの専門的日本語教育を支援する『YSCグローバル・スクール』を運営する他、日本語を母語としない若者の自立就労支援に取り組む。 日本語や文化の壁、いじめ、貧困など海外ルーツの子どもや若者が直面する課題を社会化するために、積極的な情報発信を行っている。2021年:文科省中教審初等中等分科会臨時委員/外国人学校の保健衛生環境に係る有識者会議委員。

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