健康食品(ヘルシーフード)っていったい何?米で相次ぐ表示規制の見直し

ジャンクフードやファストフード大国のアメリカが、近年急速に健康志向にシフトしはじめ、政府が規制の見直しに追われています。

まず、今月大きな話題になったのは、健康食品(ヘルシーフード)の定義です。

現行規制では、「ヘルシー」と表記するためには、脂肪、飽和脂肪、塩分、コレステロール、有益な栄養分(ビタミンCやカルシウムなど)の5つの要素の含有量規制に従わなければなりません。この規定に基づき、米食品医薬品局(FDA)は昨年、ブランドロゴに「ヘルシー」と記載している栄養補助スナックメーカーのカインド社に対して、同社製品の一部に脂肪分が基準値を超えているものがあるとして警告書を送付しました。

これに対して同社は、そもそも規制が古いことが問題だとし、FDAに見直しを求める請願書を送付。同社の主張によると、現行の規制では、低・無脂肪で糖分の高い菓子類が「ヘルシー」で、アーモンドやアボカドやサーモンは「ヘルシー」ではないことになるとのこと。警告を受けたスナックはアーモンドを使っているために脂肪分が高いのであり、アーモンドなどの不飽和脂肪の高い食品は栄養効果が高い。現行規制は、低脂肪が最もヘルシーと考えられていた時代の産物であり現状を反映していない、としています。

アーモンドやアボカドも食べ過ぎればヘルシーではないのでしょうが、一般的にアメリカではナッツ類や野菜・果物、魚介類は健康的と考えられているため、メディアがこの一件を取り上げ、多くの市民が同社の意見に賛同しました。これを受け、FDAは今月、同社製品の「ヘルシー」表記を認め、定義の見直す予定であることを発表しています。

「ナチュラル」表記で訴訟乱立

さらに、「天然成分(ナチュラル)」表記に関しても問題が起こっています。

「ナチュラル」な食品には健康そうなイメージがありますが、現状では明確な定義や規制がありません。そのため、「ナチュラル」と表記された加工食品に遺伝子組み換え原料や合成成分が入っていたとして、食品メーカーに対する集団訴訟が近年相次いでいます。

企業側が勝訴・敗訴したケースどちらもありますが、裁判官がFDAに判断を要請することも多く、市民団体からの定義の設定や文言の使用停止を求める要請も増えたため、当局は今年に入り、定義制定の賛否や規制内容に関するパブリックコメントを実施しています。

FDAは、非公式な見解として、「ナチュラル」と表記される食品は「その食品に通常含まれない人工・合成成分(天然・人工由来の着色料含む)が含有・添加されていない食品」としていますが、農薬使用などの作物栽培方法や、熱処理・攪拌・紫外線照射などの食品製造上の手法に関しては明記せず、「ナチュラル」表記が栄養や健康上の便益を表すとは考えていないとしています。しかし、この指針に法的拘束力はないため訴訟が後を絶たず、「ナチュラル」表記を避ける食品企業が徐々に増えてきています。

20年ぶりに改正された食品表示

こうした食品表記に関する市民の関心の高さを反映すべく、FDAは先日、20余年ぶりに加工食品の栄養成分表示規制を改正しました。主な改正点は、一食分相当の量が見直されたこと、カロリー表記が他の項目の3倍ほど大きく太字になったこと、砂糖添加量が別途表記されたことです。

一食分相当量というのは、通常一回に食べる量のことで、食品ごとに量が規定され容器に表記されています。たとえば、アメリカでは小売店で販売されるアイスクリームのサイズは1パイント(約500ml)のカップが標準ですが、一食分の量がこれまでの半分から3分の2に改正されました。つまり、20年前より食べる量が増えたということであり、一度に300ml以上のアイスクリームを食べること自体が問題ですが、それが現実なのですし、正確な情報を表記することに意義があるのですから仕方ありません。

カロリー表記が大きくなったことに関しては、概ね肯定的に捉えられているようですが、あくまでカロリーはひとつの目安に過ぎませんし、必ずしも低カロリーの食品が健康的というわけではありませんから、この項目だけを特別大きく表示することに懸念の声も上がっています。菓子メーカーは、カロリーを少なく見せるため、小さな容器包装に切り替えて対処しているようです。

砂糖添加量については、果物や野菜に含まれている糖分と分けて表記することが改正の目的ですが、砂糖業界は科学的には同じ成分なのに不公平だと抗議しています。飲料メーカーの多くは、既に合成甘味料に切り替えることで対応していますが、炭酸飲料などの糖分使用量は依然多いため、今後の消費者の反応に戦々恐々としているようです。

当局はこの改正により今後20年で200~300億ドル分の健康効果があると予測していますが、大手レストランチェーン店に対してメニューのカロリー表示が義務付けられているニューヨーク市では、規制後それほど効果はなかったという研究結果も出ており(著書)、それほどの効果があるかは疑問です。少なくとも、栄養表示を購入判断に利用している消費者にとっては良い情報開示になるでしょうし、企業が利益追求のために健康ではないと分かっている食品を販売したり、消費者を誤誘導しないよう抑制する効果も期待できるでしょう。

いずれにしても、健康は各人の生活スタイルや食生活によりますから、健康を維持したければ、バランスの良い適切な量の食事を心がけるしかないのでしょう。