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なぜこの時期に清原和博は逮捕されたか

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(201)

如月某日

甘利スキャンダルを巡り先月のブログで、「選挙を前にした通常国会で、政権運営が難しいと思われた時、権力は誰もが考えない策を弄した例がある事を忘れないで欲しい」と書いた。

その時に示したのは2004年通常国会での「年金未納」スキャンダルである。メディアと民主党はこれに飛びついたが、閣僚の「年金未納」を激しく追及した菅直人民主党代表は逆に自身の「年金未納」を暴露されて代表辞任に追い込まれ、騒ぎの裏で国民に負担を強いる年金法改正案が成立した。夏の参議院選挙で政府与党にマイナス影響を与えるはずの年金法改正はマイナスにならなくなった。

年金情報を知り得るのは霞ヶ関である。野党幹部にも「未納」がある事実をあらかじめ知った上で、閣僚の「年金未納」をメディアに書かせ、野党が飛びつくのを狙っていたとフーテンは考える。国会を通過させる事が難しく選挙にも悪影響を与える年金法改正は「年金未納」の目くらましによって国民の関心事でなくなった。

今回の甘利スキャンダルを国民の関心から遠ざけるために採られたのは元プロ野球選手清原和博容疑者の逮捕劇である。清原選手は一昨年の3月に週刊文春によって薬物疑惑が報じられたが、警察はその前から内偵を始めていた筈である。2年以上内偵を続けていた元プロ野球界のヒーローを甘利大臣辞任表明の4日後に逮捕したのは最強の目くらましと考えられたからではないか。

フーテンがそう考えるのは、2009年の衆議院選挙の直前に起きた押尾学事件を思い出すからだ。これは六本木ヒルズのマンションで合成麻薬MDMAを服用したホステスが死亡した事件だが、一緒にいた俳優の押尾学が麻薬取締法と保護責任者遺棄致死罪で逮捕された。ところがこの事件で死亡したホステスには複数の暴力団員や森元総理の息子との近しい関係があった。そして実はその息子が現場にいたとの噂も流れた。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:3月31日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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