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オバマ広島訪問の隠された狙いは安倍総理の調教にある

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(225)

皐月某日

オバマ大統領の歴史的な広島訪問から一夜が明けて、新聞各紙はこのニュースを一面に写真入りで報じたが、そこに使われた写真は二種類あった。読売、毎日、日経、東京の各紙は演説するオバマ大統領の姿を、朝日と産経は被爆者を優しく抱きかかえる大統領の写真を掲載した。

テレビ中継を見ていて、涙を流す被爆者が大統領の胸に顔をうずめ大統領が肩に手をまわす光景が放送されたとき、フーテンはそれがオバマ広島訪問の象徴として世界に発信されるだろうと思った。

一見「和解」の光景に見える。しかしそれは世界で唯一被爆を経験した国が世界で唯一原爆を投下した国に抱きかかえられる光景として映る。まさに戦後の日米関係を象徴するかのようだ。その写真をフーテンはあまり見たくなかった。新聞の一面が全紙そうならなくてよかったと思う。

そう思うのはフーテンが米国外交のダブルスタンダードを散々見せつけられてきたからである。フーテンはオバマの広島訪問の歴史的意義を高く評価するが、しかしオバマの主張する核廃絶を全面的に支持している訳ではない。

オバマの言う「核なき世界」はテロリストや新興国に核を入手させないようにするのが第一の目的で、あくまでも米国を含む核保有国の優位を保ちながら、段階的に核を減らしていこうとする。そのため核の数は減らすが核兵器の精度を向上させる核兵器近代化計画に力を入れ、オバマは30年間で110兆円の予算を投ずることを決めている。

その一方で核兵器の全廃を求める核兵器禁止条約が100を超える国々から国連に提出されても、米国を含む核保有国はすべてそれに反対する。そして唯一の被爆国である日本も中国と北朝鮮の核の脅威を理由に核兵器禁止条約に賛成しない。

しかし中国、インド、パキスタン、北朝鮮というアジアの核保有国はいずれも核兵器禁止条約に賛成しているのである。唯一の被爆国である日本が賛成できないところに、フーテンは原爆を投下した国の胸に抱かれて涙を流す国の姿を見る。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:3月31日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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