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武装集団の縄張りで丸腰の民間人が商売をやるような共同経済協力

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(268)

極月某日

15日に日本を訪れたロシアのプーチン大統領は、その前日に雑誌「フォーブス」の「世界で最も影響力のある人物」に去年と連続で1位に選ばれ、37位の安倍総理を見下すように3時間遅れで到着し、それが当たり前であるかのように日ロ首脳会談に応じた。

NHKによると、ロシアの国営放送は腕時計を見ながらまんじりともせず到着を待つ安倍総理の姿をニュースにしていたというから、そこにロシア側の考える日ロ首脳会談の構図が表れている。

ロシアは日本側の求めに応じて平和条約交渉を行うが、求めているのは日本だから、ロシアの国益を最優先にして取れるものは取りまくり、領土問題では1ミリたりとも譲らないという姿勢である。

そしてこの日、「世界で最も影響力のある人物」の3位に選ばれたドイツのメルケル首相が主導するEUは、ブリュッセルで開いた首脳会議で、ウクライナ紛争を巡ってロシアに課した経済制裁を来年の7月まで延長することに合意した。

アメリカのトランプ次期大統領が国務長官にプーチン大統領と親交のあるエクソンモービル会長のティラーソン氏を起用すると発表し、アメリカが制裁解除に踏み切る可能性を見せているのに対し、EUの姿勢は揺るがないことを示して見せたのである。

またこの日、アメリカではホワイトハウスの高官が、大統領選挙の前に民主党のコンピューターがロシア政府からサイバー攻撃を受けた問題で、プーチン大統領が関与していたことを明らかにした。さらにヨーロッパでも選挙に影響を及ぼすためロシア政府はサイバー攻撃を行っていると指摘した。

15日は日本のメディアがプーチン大統領の訪日を朝から晩まで大々的に報道していたが、プーチン大統領はこの日世界中でニュースの主役を演じていたわけである。だがプーチン大統領に好意的な報道が山のようにあふれていた日本と異なり、欧米ではいわば悪役として報道されていたのである。

この日本と欧米の報道の落差にフーテンは「目先の利益に目を奪われて世界の流れを見誤った」戦前の日本外交と共通するものを感ずる。北方領土と経済協力だけに目を奪われ、世界の政治力学を見誤っていはしないかという懸念である。

プーチン大統領が「世界で最も影響力のある人物」1位に選ばれた理由を雑誌「フォーブス」は「自国の影響力を地球上のほぼ全域に行使して」「母国からシリア、米大統領選挙まで自分の望むものを手に入れ続けている」ことだとしている。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:3月31日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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