安倍総理の年頭会見は様々な解散・総選挙の形を考えさせた
フーテン老人世直し録(273)
睦月某日
仕事始めの4日、安倍総理は伊勢神宮参拝後の年頭会見で、衆議院の解散・総選挙を「全く念頭にない」と言いながら、過去の酉年には歴史の節目となる解散・総選挙が行われたことを強調した。
解散・総選挙を問う記者からの質問に安倍総理は「今質問されて初めて解散の言葉が脳裏に浮かんだ」と、頭にないことをわざとらしく装いながら、一方で酉年については「12年前には劇的な郵政解散があった」、「さらにその12年前には自民党が戦後初めて野党になり55年体制が崩壊した選挙があった」、「そして佐藤総理が沖縄返還を合意して解散・総選挙に打って出た昭和44年も酉年だった」と酉年と選挙とを結び付けた。
安倍総理の発言についてフーテンはこれまで、地に足のつかない歯の浮くような大衆迎合の表現が多いのに辟易し、過去に取材した田中角栄、中曽根康弘、金丸信氏らのように言葉の裏に隠された意味を読み解く必要を感じないできたが、戦後7回ある酉年の話をするのに、解散・総選挙の年だけを引き出したことに興味を覚えた。
日本が戦争に敗れた1945年は酉年である。日本は連合国軍の占領下におかれ手取り足取りされながら戦後を歩むことになる。次の酉年は1957年である。日本は占領期を脱して独立を果たし、朝鮮戦争を機に経済成長の足掛かりをつかみ、自民党と社会党による二大政党制が始まり、「もはや戦後ではない」と言われるようになった。そしてその直後の酉年に安倍総理の祖父である岸信介氏が総理に就任した。
しかし安倍総理は岸内閣誕生の1957年とアメリカにレーガン大統領が誕生した1981年の酉年は除き、1969年、1993年、2005年の酉年だけを取り上げた。それらはいずれも安倍総理が言うように「劇的な解散・総選挙」の年なのである。
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