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Vリーグ決勝の楽しみ方 「ブレイク」に注目

田中夕子スポーツライター、フリーライター

Vプレミアリーグ女子の決勝戦が、13日に東京体育館で開催される。

11月から5カ月に及ぶ長いリーグ戦と、上位4チームによるセミファイナルを勝ち抜き、決勝進出を果たしたのは久光製薬スプリングスと、東レアローズ。

レギュラーラウンドの4戦、加えてセミファイナル、さらに言えば昨年末の天皇杯皇后杯全日本選手権決勝、昨秋の国体と、今シーズンの勝者の対戦はすべて久光製薬が勝者となってきた。

7戦7勝と、7戦7敗。

久光製薬の中田久美監督は、セミファイナルの3戦を終え、「岡山、NEC、東レの中からファイナルの相手を選べるとしたら、東レがいい」と話した。

勝ちっぱなしの久光か、負けっぱなしの東レか。これまでの対戦成績がファイナルでは吉と出るか、凶と出るか。

昨年のリーグ決勝と同じカードとはいえ、両チーム共に新たな戦力も台頭し、昨季とは様相が大きく異なる。何が、勝利を分けるポイントになるか。実に楽しみな対戦となりそうだ。

せっかくの決勝戦。戦力分析も興味深いポイントではあるだろうが、一番大事な試合だからこそ、「なぜこのチームが勝ったか」を探れば、より深く、バレーボールという競技を楽しむことができるのではないか。

サイドアウト制ではなく、ラリーポイント制のバレーボールでは、いかに「ブレイク」するかが勝利のカギを握る。

相手のサーブを受けてからの攻撃ではなく、自チームのサーブから相手の攻撃を防ぎ、得点するポイント。それをブレイクと呼ぶのだが、ブレイク率を高めるための手段は幾つもある。

たとえば、一番早い方法はサーブで相手を崩すこと。レシーブを乱し、相手の攻撃ポイントを限定させることによって、ブロック、レシーブが効果を発する。ブレイクチャンスを広げるために、ただ思い切りサーブを打つのではなく、いつ、誰がどこに打つか。データや相性に基づき、綿密な作戦のもと、1本のサーブが放たれ、そこからゲームは展開していく。

ワールドカップや世界選手権、全日本の国際大会がゴールデンタイムに放映されるたび、普段はバレーを見る機会の少ない人たちから、ジャンプフローターサーブ時の失点について、聞かれることがよくある。

「どうして、あんな緩いサーブに崩れるの?」

確かに。テレビの画面を見ていれば、バックアタックさながらのジャンプサーブに崩されるのは納得できても、緩やかな軌道(に見える)ジャンプフローターサーブで崩れるのは、なぜ? と思うのが普通なのかもしれない。ボールヒットの瞬間に手を引く、押すなど微妙な変化を加えることによって、回転をかけたり、かけなかったりすることで、手元で落ちる、伸びるなど、レシーバーからすれば「取りにくい」サーブとなる。

レシーバーも2人で対応するケースと、3人で対応するケースがあり、そのレシーブを受ける選手が前衛か、後衛か。その時のローテーションは? セッターが前衛なのか、後衛なのか。リベロとの配分はどのぐらいで、カバーの範囲はいかほどか。

細かく見て行けば、サーブの良し悪しだけでなく、その1点につながる要素が他にも見えてくる。

単純に「サーブで崩す」「サーブレシーブが崩れる」とはひとくくりにできない理由や戦略がいくつもあり、その差が勝敗を分ける大きなカギになる。

13日は女子決勝、そして翌日の14日はパナソニックと堺の男子決勝戦。なぜ崩れたか、崩せたか。幾つもの「なぜ」に注目し、それぞれの目線で、勝敗を分けたポイントを探す。打った、拾った、決まった、だけではないバレーボールの魅力がきっと幾つも見えてくるはずだ。

スポーツライター、フリーライター

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に「高校バレーは頭脳が9割」(日本文化出版)。共著に「海と、がれきと、ボールと、絆」(講談社)、「青春サプリ」(ポプラ社)。「SAORI」(日本文化出版)、「夢を泳ぐ」(徳間書店)、「絆があれば何度でもやり直せる」(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した「当たり前の積み重ねが本物になる」(カンゼン)などで構成を担当。

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