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iWatchに期待することは?

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
MartinHajek.comでのiWatch 3Dモデル。
MartinHajek.comでのiWatch 3Dモデル。

iPhone/iPadの競争が激しくなればなるほど、「同じ土俵で勝負しない」ことが大切で、これはシリコンバレーのやり方そのものだと思っています。

Appleはハードウェア企業だ、という方向付けをハッキリさせて2013年を終えようとしているように見えます。

もちろんOS XやiOS 7、iTunes Store/App Store/iBookstoreなど、ソフトウエアやデジタルコンテンツの配信環境で革新的な製品を披露してきました。

ただこれらは、iPhone、iPad、Macに魅力を持たせて買ってもらい、満足して使ってもらい、次もAppleを選んでもらおうという戦略のための「引き立て役」のように見えます。

つまりAppleが再び高収益体制を作るには、我々の生活の中での再発明や再定義を伴う新しい製品カテゴリをリリースする事が全てでしょう。

その中で目されているのが2012年末の段階ではテレビか?と言われていましたが、いまはもう腕時計型デバイスの話で持ちきり状態で、テレビより先に時計が出るとまで言われるようになりました。この市場は、SamsungがGALAXY Gearで、またSonyはSmart Watchでそれぞれ場を温めている真っ最中。

やや後出し気味に、既存の問題点を指摘して、それに変わる「革新的な製品」として披露するプレゼンまで目に浮かびます。

■ デジデジしすぎない?

iWatchについては先週Apple Insiderに「1.7インチと1.3インチモデルで登場する」というニュースが流れました。また、英国Mac User向けに制作したMartin Hajek氏の「iWatchの3Dモデル」も非常に美しい出来です。iWatchもiPhone 5sと5cのように、2種類のモデルが3Dで作られていました。革のベルト、アナログ時計の意匠、あるいはSwatchのお株を奪いそうなデザインも見られます。

曲面ディスプレイを活用してブレスレット型でディスプレイを腕に巻き付けるようなイメージも制作されてきましたが、ここに来てグッと「より時計らしい」デザインのモデルが作られたことに注目しています。そこには、「既存の時計を置き換えようとしているのではないか」という予測が現れているからです。

Google Glassは自分も米国で着用しましたが、明らかに生活の中での行動が変化するデバイスであると感じました。視線の送り方、情報への触れ方なども変わるでしょう。自分のメガネに話しかける、という、おそらく初期は非常に奇妙と取られる行動も行わなければなりません。

果たして、そこまでの飛躍をAppleが望んでいるか。

まあ、Siriで電話と会話するハメになりますが、まあ電話に話しかけるのは日常だったりするので…。それはさておき、よりしなやかで日常の行動にフィットするウェアラブルデバイスを考えると、メガネより時計で、しかもそのデザインは時計として違和感がないものになるのではないか、というアイディアです。

■ iWatchに期待することは?

テクノロジー面はおそらく、本体そのものがiOSで動いている、あるいはiOSで動くデバイスと連携し、Bluetoothでコミュニケーションを取る、といった話になるのではないでしょうか。BluetoothについてはAppleが非常に力を入れている領域でもあり、Bluetoothを用いたiOS 7のiBeaconの機能は、室内の位置情報ソリューションとして期待されています。

Bluetoothにより踏み込んで、電話と時計、パソコンと時計を連携させるという、デジタル機器と我々人間との間に入る「中間デバイス」のような役回りを果たしてくれるのではないか、という期待もあります。

例えばiPhoneとMacではアプリやサービスによっては既に通知機能が同期されつつありますが、時計で見たら他のデバイスの通知は消えるという仕様も良さそうです。ただ、通知をメモする機能は必要そうですが。あるいは最新のMac向けOS X Maverickでは、メッセージの着信通知にそのまま返信ができます。そうした簡単な操作を時計で済ませる、という方法も良さそうです。

また、人と人の中間デバイスになったらどうか?というアイディアもあります。ちょうどiOSにはAirDropと呼ばれる、BluetoothとWi-Fiで写真などの情報をやりとりするインスタントな近接通信が採用されました。時計を付けている人同士での新しいコミュニケーションを作り出すアプリも考える事ができるでしょう。

まだどうなるかわからないAppleのウェアラブルデバイス。皆さんだったら、どんな機能を期待しますか?

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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