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Google Glassは歩きスマホよりも電柱にぶつかり、犬のしっぽを踏みそうになる

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
Google Glassから見える視界。ハンズフリーになるが…。

経験談。

カリフォルニア州バークレー市、今週は気温が26〜27度まで上がる夏日。湿度が低いのでじめじめはしないのですが、何しろ気温が高いのと、強い日差しが何とも言えません。が、夜は10度くらいまで気温が下がるので、Uniqloのぺらぺらのダウンをカバンに入れるととても便利です。

さて、歩きスマホ。日本では既に定着したキーワードになっていて、街中での危険行為として認識されるようになりました。特に人通りの多いエリアや信号のない交差点など、本当に気をつけましょう。雨の日は片手に傘、片手にスマホ、という状態で、かつスマホが雨に濡れないように気遣ったりすると、かなりのマルチタスク状態ですよね。

そんな状況を改善してくれるかもしれない、今年話題のウェアラブルデバイス。写真のGoogle Glassや、腕時計型のスマートウォッチなど、いくつかのデバイスが提案されています。これらのデバイスの活用が、歩きスマホ的問題を解決してくれるのではないか、という期待を持っています。

長期的には、ウェアラブルは歩きスマホを解決する

付属のサンシェイドを装着。昼間はこうしないと、Glassの画面は非常に見にくい。
付属のサンシェイドを装着。昼間はこうしないと、Glassの画面は非常に見にくい。

長期的にはYesです。3点挙げてみましょう。

1つ目は、基本的にハンズフリーになることと、前方の視線の確保が可能になること。

スマートフォンの場合、情報の閲覧で片手、文字入力の際片手もしくは両手を使うことになり、しかも小さな画面に集中します。そのため、前方不注意になってしまっています。ハンズフリーになることで、両方の手が使える状態になり、視線も落とさなくて良くなってきます。

2つ目は、情報を確認するために視線が取られる時間が、飛躍的に短くなる点。

Google Glassもスマートウォッチも、1画面あたりの情報量は格段に減ります。Google Glassは25インチサイズで前方に投影されますが、640×360ピクセルの解像度で、カード型のUIを採用し、一目で情報がわかるようにデザインされています。スマートウォッチは時計の文字盤サイズ。

1秒見れば充分な情報量です。スマホのように目を落としっぱなし、という状況が減るのではないでしょうか。そのためのアプリ側・サービス側の情報デザインも重要になってきます。

3つ目は、音声によるコントロールの充実です。

スマートフォンの場合、画面が大きいことから、声で何か操作するよりも、タップしたり文字入力を使って操作した方が格段にスピードが速く、得られた情報も声でアナウンスしてもらうより見た方が早いです。

ところがウェアラブルデバイスにはキーボードがないものが多く、音声入力を活用して情報入力をしたり、フィードバックを得たりします。これによって、より視線や注意が取られにくくなります。

こうした理由から、ウェアラブルデバイスを装着することで、歩きスマホの問題が解決されることになるでしょう。

しかし、現実には…

理論上は「歩きスマホ問題はウェアラブルで解決!」と言いたいところだったのですが、Google Glassをかけながら生活すると、全く思い通りになりませんでした。Google Glassに、現在iPhoneで利用している全てのアプリが揃っていないという問題ももちろんありますが、それ以上に、そして予想以上に大きく立ちはだかったのが、「慣れ」の問題。個人的には、器用貧乏な方だと思っていたんですが…。

まず、ハンズフリーになる点は確かにハンズフリーになりました。しかし音声認識については、自分の英語の発音の悪さに加えて、環境音の影響を大きく受けるため、意外と上手くいかなかった、というのが感想です。

なにより、メガネに向かって話しかけること自体が、何とも恥ずかしくてタマリマセン。自由な国米国で恥ずかしいんだから、日本の都市でやると思うと…。もちろん「そんな事はガマンして使えばいい」と思われるかもしれませんが、毎度恥ずかしい思いをしながら使うものって、定着しませんよね。

そして視線が前を向いて前方不注意になりにくくなる、という点も上手くいきませんでした。

確かにGoogle Glassでは、自分の視界に情報がオーバーレイされます。スペックでは、5フィート(およそ1.5m)先に、25インチのディスプレイが置かれている感覚とのことでした。しかしこの1.5m先に注目すると、歩きスマホと同じようにその他の風景への注意がおろそかになります。

結果として、大丈夫だと思っていても、電柱にぶつかりそうになり、また足下の犬のしっぽを踏んづけそうになってしまいました。こんな状態で車の運転をしようなんて、恐ろしくて考えられません。ちなみに、歩きスマホだったら、犬のしっぽは目に入りますよね。

もちろん、こうした現実の話は、「今のところは」という但し書きを付けておくべきでしょう。そのうち慣れるはずだ、と思うからです。

新しいデバイスを使い始めるときに「慣れ」が必要という問題は、身につけるデバイスになればなるほど、重要なテーマになっていると思います。世代にもよりますが、生まれながらにしてウェアラブルデバイスが当たり前、ではない我々にとっては、安全に利用できるスキルをどう獲得するかが問題。

つまり、ウェアラブルデバイスも、ちょっとした訓練をしながら慣れていく仕掛けが入っていると良さそうだな、と思いました。

だとすれば、はじめからスマホを使っている人たちは訓練されていて、電柱にぶつからないんじゃないか、ということもあるかもしれません。あるいは、音声入力が恥ずかしくなければ、別にスマホでも良かったりするわけです。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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