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Appleの2014年第2四半期発表、好調目立つ中国・日本市場でのiPhone

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
Appleの2014年第2四半期決算が発表された。ビジネスの現状を探る。

米国時間4月23日に、Appleは2014年第2四半期の決算発表を行いました。決算発表は企業の業績を知る事はもちろん、これからどんな戦略で事業を進める見通しなのかをはかる上で重要なイベントです。

Appleの2014年第2四半期の売上高は456億4600万ドルで前年同期から5%増となり、アナリストの予測を上回ることができました。純利益も7%増の102億2300万ドル、粗利益率も39.3%と1.8%上昇しています。例年、米国のホリデーシーズンを含む第1四半期と比較して売り上げが落ち込むシーズンながら、「非常に良い3月期決算」(CEOのTim Cook氏)となりました。

カンファレンスコールについては、Appleのウェブサイトで聞くことができます

Cook氏は良い決算の結果について、「iPhoneの売り上げとサービスからの記録的な売り上げ」を指摘する通り、iPhoneの販売台数は4372万台で前年同期比17%増、売上高も14%向上しました。またMacも414万台と5%向上しています。

しかしiPadの販売は前年同期比で16%減の1635万台で、前々期に続く減少を受けています。

中国と日本でiPhoneが好調だが、iPadに陰り?

Appleの良い決算を引っ張っているのは引き続きiPhoneです。中国では最大手の通信会社China Mobileで2014年1月にiPhone販売がスタートしたことから、中国市場での売り上げは13%増となりました。

また日本市場についての指摘があり、iPhoneの売り上げは前年同期比で50%増え、55%以上のマーケットシェアを獲得し、驚くべき成長を見せていると語られました。Apple全体としての日本市場の売り上げは26%増えたとのこと。

面白い数字としては、半数が新たにiPhoneを購入したユーザーであると発表しています。この数字は、新興国市場であるブラジル、ポーランド、トルコ、インドネシアの二桁成長や、インドで2倍以上成長を見せたことの裏付けとみられます。

反して、iPadの販売台数が前年同期比で16%、売上高が13%減少していますが、今後の市場の主要な製品になるとの考えを示しています。事例として、Fortune 500の企業の98%がiPadを利用しており、ビジネス市場のタブレットの91%、教育市場の95%のシェアを確保している点を強調しました。

確かにタブレット市場は競争が激化していることは間違いなく、安価なAndroidタブレット、PCの置き換えを本格的に狙っているSurface、そしてiPadといずれの製品も検討しているのですが、ここ最近は大きく目立ったニュースもなく、市場全体が落ち着いてしまっている状態にも見えます。

iTunesの活用に大きな可能性

AppleはiPhoneやiPadの好調さを背景にして、これらのデバイスへアプリや音楽、映画などのコンテンツを送り込むiTunes Store/App Storeといったオンラインコンテンツストアが他社とは異質のものである点を指摘しています。App Storeでは700億ダウンロードを突破しており、App Storeからの収益はGoogle Playの85%多いとアピールしました。

同時に、Appleはこれらのストアで利用できるApple IDで8億人以上のクレジットカード登録を確保しており、Tim Cook氏は「新しい領域での収益化についても見据えている」とのことでした。

決済手段を巡っては、Facebookが新たなモバイル決済への参入が伝えられているほか、スマートフォンやタブレットを決済端末に変えるSquareが、GoogleやApple、PayPal、Visaとミーティングを行ったとの情報があり、今後成長が見込まれる分野の動きが活発になってきています。

Appleが持つ世界中の8億のクレジットカード情報は、こうした決済サービスを展開するにあたり、非常に有利な状況と言えます。あとはAppleが、どのようにしてApple IDを他のオンラインやリアルの店舗で利用できるようにするのかがポイントで、モバイルの場合はTouch IDなどのセキュリティ手段が、デスクトップの場合でも、モバイル機器を使った認証などをいかにスマートに組み合わせるのか、注目です。

Apple TVに関する指摘

Apple TVは累計2000万台の出荷を超えました。2月に行われた株主総会の場で、Apple TV関連の売り上げが2013年は10億ドルを超えたと発表しましたが、ここ最近、Apple TVのApple内でのプレゼンスを高めて行こうという傾向をうかがい知ることができます。

Apple TVに関しては、フルハイビジョンの映像をテレビに映すことができる第3世代の製品が発売されていますが2013年は製品の更新がありませんでした。ライバルには既存のRokuの他に、GoogleのChromecast、AmazonのFire TVなど、大手ネット企業が参入しており、また米国のケーブルテレビ企業の再編へ向けての動きもあります。

かねてから噂があったAppleのテレビに関する取り組みがどのように結実するのか、あるいは時期尚早なのか。おそらくApple自身だけでなく、パートナーとなる既存のテレビビジネスのプレイヤーとの兼ね合いが大きいように思いますが、もう少し長く注視しておきたいところです。

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ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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