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任天堂「ゲームボーイ」、スマホで復活なるか?

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員

先週、ゲームボーイの話題が一気に広がった原因は、任天堂が米国特許庁(USPTO)に、ゲームボーイのエミュレーターの特許を出したことが話題になったからでした。

そんなもの、草の根でいくらでも出回っているじゃないか、と思われるかもしれませんし、記事によると2000年から出願していたものでした。2000年はスマホもタブレットもなく、想定されるデバイスはPDAだったようです。公式になることで、任天堂がビジネスとして、マルチプラットホームに取り組むことができるようになるわけですから、全く異なる意味合いを持っていると考えられます。

ゲーム専用機と比較しても、現在みんなが持っているスマートフォンやタブレットは非常に高い性能を獲得しています。3Dなんてぐりぐり動くし。でも、ゲームボーイ画質のゲームが、手元のiPhone 6 Plusで動いても、ノスタルジー成分がなくても。多分満足しちゃうと思います。

既存タイトルを最新のゲーム機でプレーできるようにする仕組みは、すでに「バーチャルコンソール」として実現しています。これを、よりオープンにスマホやタブレットに拡げよう、という取り組みには、非常に大きな期待が持てます。

専用機とオープンのハイブリッドを目指せ

もちろん、任天堂としてAndroidベースのデバイスを出してもいいのですが、Amazon Kindle方式でiOSデバイス向けのゲームボーイアプリを出して欲しいな、と思います。あるいは、Appleは任天堂と組んで、「エミュ+コンテンツ」方式のアプリを一挙にリリースして、特別に紹介するコーナーをApp Storeに作れば、任天堂のAndroidデバイスを阻止できるかもしれません。

個人的には、米国市場での任天堂のこれまでのゲーム機の強さ、家庭への浸透度合いは依然として強く、日本ほどではありませんがまだ50%をキープしています。加えて、子どももある程度安心して楽しめるタイトルが揃っているところを見ると、Appleとの親和性も高いんじゃないか、という直感を持っていました。

小声ですが、Wii Uをやめて、次世代のApple TVとiPhone・iPadで任天堂のタイトルが動くようにしちゃえばいいのに、とすら思います。もちろん、Appleからは一般の開発者以上に、がっつりと利益分配をしてもらって、です。それぐらい、任天堂のゲームタイトルの強さと親和性の高さは、評価すべきだと考えています。

それにしても、1989年からのゲームボーイの歴史を見ると、

  • 初代ゲームボーイ、ゲームボーイポケット(軽量化)
  • ゲームボーイライト(バックライト搭載)
  • ゲームボーイカラー(液晶のカラー化)
  • ゲームボーイアドバンス(2.5Dの表現力)
  • ゲームボーイアドバンスSP(折りたたみ型でリチウムイオン電池搭載)
  • ゲームボーイミクロ(小型化、下位互換をカット)

といった具合なのですが、なんだかiPodや携帯電話の進化の過程に似てますね。

言い方を変えれば、任天堂はゲーム機を通じて、現在のモバイル化の進化を先行して経験していたことになります。

既存のゲームをオープンにすることと、任天堂自身が次世代ゲーム機を作り続けることは、両立すべきだと考えます。既存タイトルで魅力を伝えつつ、驚くような、あるいは目から鱗のゲーム体験を、任天堂のゲーム機で広めていく。そんな体制にしてはどうでしょうか。

モバイルの原体験としてのゲームボーイ

今も昔もゲーム下手・ゲーム不器用な私ですが、ファミコンより早く生まれているし、スーパーマリオはリアルタイムでやっていたし、カセットをフーフーしてたし、興奮してコントローラーをグッと引っ張ってバグらせた弟を怒ってたりしてました。

そんな僕らにとって、ゲームボーイが、「モバイル」の原体験だったわけです。ゲームボーイはとにかく「自由」でした。

家のファミコンのように、テレビと電源と、アンテナケーブルの「接触」を気にする必要がない一体型です。しかも電池を使うため、テレビや電源コンセントの近くにいなければならないという場所の制限もありません。

そして、プレーするには1人1台。これもファミコンとの大きな違いでした。ゲームがよりパーソナルなものになり、集まったときは通信ケーブルで遊ぶ。1つの画面を囲んでゲームをやるのも楽しかったのですが、モバイルの自由さは全く別の良さがあったように記憶しています。

そんなモバイルの原体験たるゲームボーイが、現在花開いたモバイル文化で楽しめるとよいな、と思いますし、任天堂にも、ゲームの楽しさ、コンテンツの強さを生かした「スマホでのゲーム体験」の再提案を、期待しています。そして、これらとは完全に差別化できる、未来のゲームを生み出すことに、更なる期待を寄せたいと思います。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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