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Apple Watchは安すぎる?

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
2015年春の発売を予定しているApple Watch。量産開始も間もなく開始か

Apple Watchの製造については、部品の歩留まりなどの問題が指摘され、遅れているとの見方もあります。例えば3月発売を目指して、1月に量産開始、というスケジュールを伝える記事も出始めています。

・CNET Japan: 「Apple Watch」、2015年1月に量産開始か--部品の歩留まりが改善

先日時計好きの高校からの同期と話をしたところ、Apple Watchについて「必ずしも安いとは思わず、むしろハイエンドモデルは安すぎるかもしれない」という意見を聞くことができました。

Apple Watchは「349ドル〜」というアナウンスがされており、おそらくアルミニウムと強化ガラス、シリコンバンドという構成の軽量モデル「Sports Edition」に対してつけられる価格だと考えられます。報道では、ラグジュアリー感あふれる18金のモデルは4000ドルとも5000ドルとも言われています。

こうした価格構成、ほんのわずかな冷静さをもって受け止めれば「iPhoneのサブ的ガジェットに、iPhoneの半額以上の価格を喜んで出して良いものか」という不安感が募ります。

Appleの製品やソフトウェアに対する支出を「Apple税」と呼ぶ人もいますが、もはや消費税のような主体に対してかけられる税ではなく、Apple購買の支出を見込んだ年間予算計画を立てなければならなくなるほど大きな領域を占めるようになり、Appleはここに、時計まで追加しようとしています。

Appleは顧客の懐の管理まで考えないと収益を伸ばし続けられなくなるんじゃないか、とすら思います。

しかし同期の意見はそうではありません。生活必需品のガジェットとしてではなく、時計という装飾品や趣向品、アクセサリーとしての側面で考えて見るとどうだろう、という話です。1度は買うとしても、次があるかどうか。次がなければブランドの蓄積は難しい。そんな視点でのApple Watchへの評価でした。

つまり、4万円弱の時計をしていても、ちょっと中途半端だよね、という話。

いや、1万円以下だって日本にはいい時計はたくさんあるのですが、時計としてのブランドがないAppleが、そうした中途半端な価格をつけるんだったら、ハイエンドは5000ドルではなくもっと思い切って高くしても良いんじゃないか、という話です。

裏を返せば、高ければ高いだけ良い、お金を出せば出すだけこだわれる、というラインアップにしなければ、上手くいかないんじゃないか、という意見なのです。

Apple Watchは、Watch Editionが5000ドルであったとしても、内部のプロセッサなどを内包するS1、38mmもしくは42mmのサファイヤガラスで覆われたディスプレイという構成は変わりません。ムーブメントが自動巻になったり、職人が1台1台組み立てるわけもありません。

何かもう少し、高くなりうる要素を作らなければ。安くて壊れにくくて良いものを、という既存の電気製品とは異なる領域に、Appleが足を踏み入れようとするならば、少し異なる流儀への備えが必要なのかもしれません。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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