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8割が利用中、Apple PayはApple Watchの2つ目のキラーになる

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
手首を返すだけで決済ができるApple WatchでのApple Payが便利

Apple Watchの1つ目のキーとなる機能はアクティビティ計測機能だが、2つ目は明らかにApple Payと断言できます。少なくとも、私がApple Watchを4ヶ月弱使ってきた経験で、watch OS 2以前であれば、Apple Pay以外にはありません。

JBpressに、「Apple Payはそんなに便利なの?」という見出しがついていました。Apple Payがスタートしていない日本では、当然の反応だと思います。JBpressも含めたメディアが引用していたのは、WristlyのMediumポスト。最新の記事は、Apple WatchとApple Payに関するものでした。

調査では、米国・英国の8割のApple Watchユーザーが、Apple Payを利用しているとのこと。既に日本でSuica/PASMOを使って日常生活を送ってきた筆者にとっては、前述の記事に書かれている「魔法のようだ」という指摘には全く同意できません。だとすれば日本はかなり昔から魔法の国、ということになるわけですから。

おサイフケータイを飛び越えて「おサイフウォッチになった」というのが感慨深い

ただ、Apple Watchでの支払い体験は、日本でカード型の電子マネーを利用するよりも、iPhoneでApple Payを利用するよりも便利です。とにかくポケットから財布やiPhoneを取り出さずに手首をひねるだけで支払いができるわけで。日本では交通系ICカードが普及し、それがおサイフケータイに入りましたが、米国ではおサイフケータイを通り越して、おサイフウォッチになったんですね。

Apple Watchを利用する動機として「Apple Payが使えるから」という理由は十分に説得力を持つ快適さです。裏を返せば、Apple Payが始まっていない米国・英国以外の国では、この訴求方法が利用できないという点で、Apple Watchのアピール機会を逃している、とすら思います。Apple Payを魔法というなら、魔法が使えない洞窟をさまよっているのが日本におけるApple Watch。

ただ、米国でも、必ずしもApple Payが完璧なものではありません。Apple Payに対する不満は、自分のカードの発行銀行がApple Watchをサポートしていないこと、そして加盟店が少ないこと。いずれも同意できます。

私が米国で持っているのはコストコと提携しているアメリカンエクスプレスと、JALブランドのMastercardの2枚ですが、前者は提携カードでもApple Payをサポートしていましたが、後者は提携カードではApple Payをサポートしていません。また利用できる店舗も、身近では高級スーパーのWhole Foods MarketとドラッグストアのWalgreensの2チェーンだけです。

Apple Payの利用環境の充実は、Apple Watch普及に高い効果を持つのではないか、と思います。それだけに、watchOS 2同様、Apple Watch普及のための環境整備は、まだまだ不十分といわざるを得ません。

さて。

日本でApple Payが導入されるには、正直どこをどう攻めれば良いか悩む部分もあります。クレジットカード的な普及を狙うのか、交通系ICカード的な普及を狙うのか。使い勝手としては、後者の感覚の方が近いように感じます。

しかし、残念ながら、Apple Payが日本のSuicaなどの交通系ICカードの代替になるとは思えません。決済にかかる時間が遅すぎるからです。日本のものが速すぎるから、という言い方が世界標準的かも知れませんが、Apple Payのあのスピードでは改札で渋滞すると思います。

この際、日本のメーカーがSuica内蔵のスマートウォッチをリリースすれば良いんじゃないか、とすら思います。スマートフォン経由のワイヤレスチャージもしくはオートチャージに対応し、定期券に対応すれば、おサイフケータイ以上に快適になるのではないか、と思います。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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