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iPhone 6s・6s Plusは発売後3日間で最高記録の1300万台販売、しかし課題も多い今後

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
iPhone 6sの3D Touchは新たな操作性と引き替えに重量増となった

Appleのプレスリリースによると、iPhone 6s、iPhone 6s Plusの発売3日間の売上が1300万台に達したそうです。

例年、予約開始24時間の予約台数を発表してきましたが、2015年のiPhone発売に際して、この数字は発表されませんでした。そのため、予約数はさほど振るわなかったのではないか、との見方も拡がった一方で、多くのアナリストは販売台数は昨年を上回るとの予想をしていました。

ただ、もしも予約数が少なくて発表できなかったのであれば、疑問が残ります。今回、Apple Storeでは行列は縮小され、予約中心の販売に移行していたからです。出足が遅かった、前回と同数だったなど、さほどインパクトのない数字だったため、あえて公表しなかったのではないか、と考えられます。

画面の拡大ごとに、予約数が2倍に

iPhoneの24時間予約数、3日間販売台数、第1四半期販売台数のグラフ。
iPhoneの24時間予約数、3日間販売台数、第1四半期販売台数のグラフ。

過去の数字を振り返ると、2011年のiPhone 4sは24時間予約数100万台、週末3日間の販売台数は400万台。以降、2012年のiPhone 5発売時はそれぞれ200万台、500万台、2013年のiPhone 5s・iPhone 5cは、予約数非公表、週末3日間で900万台を販売。2014年のiPhone 6・iPhone 6 Plusは24時間予約400万台、週末3日間で1000万台の販売でした。

今回の1300万台という数字は、iPhone 5からiPhone 5sへ移行した際に匹敵する初速の伸び、ということになります。ただ、本格的な販売シーズンを含む各年の第1四半期(10月〜12月期)の販売データで、画面拡大を施したiPhone 6・iPhone 6 Plusの時ほどの伸びになるかどうか、注目です。

画面拡大ごとに販売台数を拡大させてきたiPhoneですが、さすがにこれ以上iPhoneのサイズを大きくするわけにも行きません。新しいデザインによって、新機能を搭載しながら薄型化、軽量化していく、小幅な進化を通じていかに台数を伸ばすか、という戦い方になります。

Androidからのユーザー奪取に着手する必要性

iOS 9のセットアップ画面に用意された「Androidからの移行」。
iOS 9のセットアップ画面に用意された「Androidからの移行」。

Appleはは中国での成長、インドへの進出など、新興市場での「新たな顧客」獲得に向けて、動いており、1300万台という数字は、中国での発売を合わせられたことによって生み出せたとみています。

裏を返せば、中国を除いた市場では、「前年を上回る数字」を作りにくくなっていることの表れでもあります。

先進国市場の競争も厳しくなっています。

2015年8月にConsumer Intelligence Research Partnersが発表したデータによると、Androidスマートフォンユーザーのロイヤリティが急速な向上を見せており、Androidユーザーが引き続きAndroidを使用し続けるのは82%、iPhoneの場合は78%でした。Androidのロイヤリティが、iPhoneを上回りつつあることを示すデータともいえます。

Appleは顧客満足度についてはほぼ100%であることを毎回のiPhoneイベントでも披露してきましたが、プラットホーム乗り換えとの乖離が見られているようで、レポートでも「乗り換え意向の仕組みはまだよく分からない」としています。

ただ、フィーチャーフォン、BlackBerry、Windows PhoneなどのユーザーをAndroidとiPhoneで分け合ってきた時代がそろそろ終焉を迎えつつあることも事実で、今度はGoogle、Appleがお互いのプラットホームからユーザーを奪い合う時代が訪れています。

その際、前述の「次もiPhone」という選択を拡げ、Androidユーザーを振り向かせる努力が必要になります。

Appleは、Androidアプリ「Move to iOS」をリリースし、個人データなどを一度クラウドにアップロードし、新しいiPhoneへ接続なしにクラウド経由で移行できる仕組みを整えました。また、Apple MusicをAndroid向けにリリースし、AppleブランドのAndroidへの浸食も試みようとしています。

Androidからのユーザー奪取は、先進国市場にとっても、新興国市場にとっても効果的な戦略といえます。最大のネックは、iPhoneのデバイス価格といえるでしょう。Android対策が進めば進むほど、失敗に終わったiPhone 5cのような、価格を抑えたiPhoneの必要性が増してくることになるでしょう。

価格の安いiPhoneと、iPhoneというブランドを守ること。これらをどのように両立させていくのか、その舵取りに注目しています。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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