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Googleが讃えるフレッド・コレマツ氏 - 移民として米国で戦った日本人の日

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
米国時間1月30日に掲出されたフレッド・コレマツ氏のDoodle。

Googleは、米国時間1月30日のDoodle(Google検索画面のイラスト)に、ある日本人を掲載しました。彼の名前はフレッド・コレマツ氏、日本名は是松豊三郎。私の住むカリフォルニア州バークレーの隣町、オークランドで1919年に生まれた日系2世です。

※掲載当初、「日系1世」と書きましたが「日系2世」に訂正しました。

今、このタイミングで、フレッド・コレマツ氏を掲載したことには、非常に大きな意味があります。

フレッド・コレマツ氏は、日本からカリフォルニアに移住しバラ園を営んでいた両親の三男として1919年1月30日に生まれ、第二次世界大戦へと向かいます。徴兵を志願や造船所での仕事などは、「日系人である」という理由で拒絶されてしまいました。

その後日系人の出頭と強制収容を逃れるために整形手術までしましたが見つかり、収容所に入れられてしまいます。このときに、アメリカ自由人権協会(ACLU)がコレマツ氏に接触し、日系アメリカ人抑留の合法性を問うモデルケースになったことから、人権活動家としての戦いが始まりました。

しかしこのことは、収容所に入ることを協力した他の日系人からも疎まれる存在だったと言われています。コレマツ氏の行動は、他の日系人にとって、自分たちの米国での立場を悪くする、と考えられていた、ということです。

戦時中の裁判では、日本人のスパイ活動が事実で、強制収容は必要な措置だったとの結論が出ます。コレマツ氏の名誉が回復されたのは、1983年のこと。1980年、ジミー・カーター大統領が設置し、「人種差別や戦時下のヒステリー、及び政治指導者の失敗」として日本人に補償を行った事をきっかけに、再び裁判を起こして犯罪歴の抹消となりました。

参考文献:『正義を求めて 日系アメリカ人フレッド・コレマツ氏の闘い』スティーヴン・A・チン著

今アメリカで起きていること

コレマツ氏は、日本人の抑留とこれが「間違いであった」とした米国に対して、人種や宗教、肌の色に関係なく、同じアメリカ人が(強制収容という)扱いを二度と受けないようにして欲しい、と訴えてきました。

1988年に、ビル・クリントン大統領から、大統領自由勲章を授与しています。1月30日は、カリフォルニア州におけるフレッド・コレマツ氏の日としています。その日に起きていることは、真逆の自体です。

先週、ドナルド・トランプ大統領の大統領令で、米国の国境に大きな混乱が生じているのはご存じの通りです。1月21日の週末はWomen's Marchで全米で最大規模の行進が展開されましたが、1月28日の週末は、今度は全米の国際空港でのデモが展開されました。

大統領令では、イラン、イラク、イエメン、スーダン、ソマリア、リビア、シリアといったイスラム教が主体の7カ国の国民について、ビザや永住権(グリーンカード)を保持している人であっても、米国への入国、米国行きの航空機への搭乗を90日間保留するというものです。また難民受け入れも120日停止しています。

空港でのデモはこれに反対するもので、1月28日には、サンフランシスコ国際空港に、コレマツ氏のDoodleを掲げたGoogleの共同創業者、セルゲイ・ブリン氏も参加しました。ロシアでユダヤ人として生まれたブリン氏も「自分も難民だ」と声を上げています。

実際、テクノロジー業界でこの話題に火がついたきっかけも、Googleの従業員に対する早期帰国を通知したことでした。187人の従業員が米国に入国できない可能性があったとしており、非常に敏感な反応を見せています。また、同社、そして従業員の寄付によって400万ドルを集め、前述のACLU等の人権や難民保護の団体に寄付しています。

これまで多様性を強調してきたAppleは、従業員向けのメールで、大統領令について「支持する政策ではない」、「移民なしではAppleは成り立たなかった」とのティム・クックCEOのコメントを通知しています。共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏は、シリア人の父とアメリカ人の母の間に生まれた子であることも象徴的です。

その他、テクノロジー企業からは、Twitter、Uber、Lyftなど、各企業のトップがコメントしています。またAirBnBは、空港で足止めされてしまった人々に対して「災害対策プログラム」を適用し、無償で宿泊場所を提供するとしています。

移民に対する風当たりは強い

こうした活動の拡がりから、大統領令の中で、グリーンカード保持者の入国については制限されないことになりました。しかし本質や考え方が変わったわけではありません。

また、ホワイトハウスだけが、この考えを支持しているわけでもなさそうです。

Fox Newsによると、1月5日から9日に行われた調査で、米国人の48%が、移民拒否の政策を支持しているとしています。これはトランプ大統領就任前であり、もちろん現在の大統領令が出される前のデータです。

シリコンバレーは、多様性が非常に重視されており、米国のテクノロジー企業が世界中で利用されるようになった1つの理由と言えます。日本で生まれた絵文字は、AppleやGoogleなどのスマートフォンOSを主導する企業が標準化に参画したことで、様々な肌の色を選択できるようになったり、世界中の食べ物が収録されるようになりました。

裏を返せば、多様性のメリットを、人口増以外に享受できている産業は、米国でも珍しい事例、ということかもしれません。そのことは、トランプ大統領が「米国人の雇用」を訴えていることに一致しています。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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