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Appleの新社屋「Apple Park」を4月から使用開始。ビジターセンターも。

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
Apple Parkを紹介するTim Cook(2016/03、筆者撮影)

Appleは、「Apple Campus 2」として建設中だった新社屋について「Apple Park」(アップル・パーク)と名付け、2017年4月から移転を開始することを発表しました。12000人の従業員の引越には6ヶ月以上かかるとの見通しで、建設は今夏いっぱい続くとしています。

現在のApple本社には、ロゴグッズやアパレルなどが充実していたカンパニーストアがありましたが、グローバルで共通のスタイルとなるApple直営店「Apple Infinite Loop」へとリニューアル済み。Tシャツやノートなど一部のグッズは残っています。

新しいApple Parkには、175エーカー(約71ヘクタール)の敷地は、カリフォルニア原産の樹木に植え替えられており、Apple直営店やカフェを含むビジターセンターが設置され、Appleキャンパスの訪問が今まで以上に楽しめることになるでしょう。

なお、Apple Parkをドローン撮影しているYouTubeアカウントでは、最新の建設中の社屋を見ることができます。

ジョブズの遺産

Steve Jobs Theaterの完成図(提供:Apple)
Steve Jobs Theaterの完成図(提供:Apple)

Apple Parkには小高い丘があり、1000人収容のシアターが建設されます。そのシアターには「Steve Jobs Theater」と名付けられました。このApple Parkの構想を作ったのが、共同創業者で前CEOのSteve Jobsだったことに由来します。

早ければ、次のiPhone発表会は、Steve Jobs Theaterで開催されるかもしれません。また、今年の世界開発者会議WWDC2017は、サンフランシスコから、クパティーノに近いサンノゼでの開催となりました。建設中のApple Parkを訪れる人も多いかもしれません。

Tim Cook CEOは、「(Jobsは)Apple Parkは今後何世代にも渡っていイノベーションの拠点をすることを意図していました。職場と周辺の緑地は社員にインスピレーションを湧かせ、環境に配慮してデザインされています」と、コメントを寄せている。

またSteve Jobsの妻、Laurene Powell Jobsもコメントを寄せています。

「スティーブは、カリフォルニアの陽光と広大な風景に、大いに刺激を受けていました。彼にとって、それほど大好きな環境だったのでしょう。Apple Parkは、彼の精神を神秘的なまでに体現していると思います。もし彼が生きていたら、Appleの皆さんがきっとそうするように、この輝くようなデザインのキャンパスで大活躍していたことでしょう」

建築中の新社屋(2016/03、筆者撮影)
建築中の新社屋(2016/03、筆者撮影)

Apple製品の背面には「Designed in California」の文字が記されています。シリコンバレーがある土地ということだけでなく、その自然や風景に、Jobsが価値を見出しているエピソードであり、Apple Parkにカリフォルニアの自然を再現し、また、その自然に負荷を与えないデザインを施した、そんな場所になっています。

Apple Union Squareからうかがう、新社屋

Apple Union Square。Apple Parkの建築を垣間見られる。
Apple Union Square。Apple Parkの建築を垣間見られる。

円盤状の新社屋は社員専用で、一般の人々が入ることはできません。ただ、どのようなデザインになっているのかをうかがい知ることはできます。AppleがSan Franciscoの中心部に新たにオープンさせた「Apple Union Square」は、新社屋と同じFoster + Partnersの設計で、しかも照明や床、空調システムなども新社屋と同様の、ミニチュア版Apple Campusとも言える存在です。

Apple Union Squareの内部(2016/06、筆者撮影)
Apple Union Squareの内部(2016/06、筆者撮影)

Apple Union Squareは、店舗の前後にそびえ立つ巨大なガラスの「自動ドア」が目を引きますが、様々な工夫が施されています。天井パネルそのものが照明となり、店内を少ない電力で均等に照らすことができます。床材も白く光を反射し、また巨大なガラスからは、1F、2Fに自然光をふんだんに取り込み、こちらも電力の削減に役立ちます。

空調システムも、新社屋のメカニズムが使われていました。自然換気を採用しており、新鮮な空気を1Fから取り入れ、2Fの天井へ逃がす仕組み。また床材の下には水のパイプが通っており、冷暖房を司ります。温度調節に利用するエネルギーを最小限に抑える工夫がなされています。

Apple Union Squareの屋根には50kwhのソーラーパネルが配置されていますが、Apple Parkでは17Mwhの発電量を確保し、Apple Park全体の電力をまかなうだけでなく、地域への給電も計画されているようです。

地球環境に配慮し尽くした、新しいAppleの本社。その設備は驚くべき規模であり、徹底的な再生可能エネルギーの創出と自然環境の再生にこだわり抜いた設計に注目が集まります。

しかし本当に注目したいのは、Apple Parkで、Appleの人々がどのような働き方をし、どのようなモノを作り出すか。Appleは昨今、情報発信にも力が入り始めましたが、それでも、新しいApple Parkでの働き方が大々的に発信されることはないでしょう。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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