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コミュ障だと乗りこなせない電気自動車(中編)

田代真人編集執筆者
ただいま充電中!

東京から小田原まで約80kmを走行した日産リーフ。この時点で半分近く電気を使用した感じ。前もって調べた距離では、航続距離228km(JC08モード)のリーフは余裕で、充電せずに伊豆高原まで到着できるはずだった。(前編はこちら。最終編はこちら

しかし、初めての電気自動車なので電気が減るたびにドキドキして落ち着かない。静かな室内で快適な動力性能ではあるが、それも電気あってのものだ。事前にチェックしていた小田原の充電スポットで充電して、我がリーフと私の心は平安を取り戻した。

ここから伊豆高原までは80数km。ちょうどいま走ってきた距離ではある。とはいえ、明日の帰りを考えると伊豆高原辺りで充電しておかないと安心はできないだろう。ちょっと調べて見ると、河津町にある「河津桜観光交流館」に急速充電器が設置してある。しかも無料だ。

本日の目標を、河津町で充電後、安心して宿にチャックインすることにした私は、河津町へ行くルートをGoogleで探した。素直に海岸線を行けばよいものの、混雑を避けるために、箱根ターンパイクを通って伊豆スカイラインへ行く道を選んだ。しかし、これがまたもや電欠の悪夢を呼び起こすことになる。

小田原からのターンパイクは上り道だ。山へ向かうのだから当たり前と言えば当たり前なんだが、この山道、上っていくとどんどん走行可能距離の表示が短くなっていくのだ。もはや心臓に悪いレベル。目的地までの実際の距離は100kmもないのだが、残り走行可能距離が60kmなどと平気で表示される。

いや、これはないだろう。心臓に悪いどころではない。しかも山道。こんなところで電欠は嫌だ。というか、そんな試練を受け入れるほど人間の器は大きくない。とにかく手打つのは速いに越したことはない。リーフを道路脇に寄せ、すぐさまググる。

もっとも近場では、神奈川県立恩賜箱根公園の駐車場に急速充電スタンドが設置されているらしい。箱根へ行く予定はまったくなかったのだが、背に腹は代えられない。ターンパイクを降りて芦ノ湖方面に向かった。

そして恩賜箱根公園へ到着。駐車場に設置されているという充電スタンドを探す。さっと見回しただけで発見! 幸いにも先客はいない。稼働していることを確認して、310円の駐車料金を支払い入場。管理人のオジサンに声をかけ、早速充電させてもらう。時間は30分。その間、来る予定のなかった公園の売店でお茶を飲み、芦ノ湖をバックに記念撮影。

はっきり言って、こんな行き当たりばったりの旅も久しぶりだ。しかも、自分の感性や旅の風情に従った旅ではなく、とにかく電気自動車の事情により行き先が変わっていく。だから、決して予定通りの旅などとは言えず、予定がまったく立たない旅を強いられることになる。

駐車場のリーフに少し早めに戻って、管理人のオジサンに充電スタンドの利用者は多いのか尋ねたら、平日はほとんどいないとのこと。週末に多くて1日5台程度だそうだ。しかも私たち同様、上り坂で慌てて駆け込んでくる人もいるらしい。「上り坂だと電気がどんどんなくなっていくんだってね」とオジサンが笑う。私も苦笑するしかなかった。

管理人のオジサンは親切。充電を手伝ってくれた。
管理人のオジサンは親切。充電を手伝ってくれた。

さて、無事充電が済んだのだが、そのままいくつかの峠を越える伊豆スカイラインに入ってしまうほど私は度胸が据わっていない。そそくさと海沿いの国道135号線に向かうべく進路を変え、県道20号線から熱海方面へリーフを走らせた。交通量が多い、海沿いの道ならばなにかあったときも安心だ……。

!?

つい数時間前までは渋滞を避けるために山道を選んだはずだったのに、いまはもはやその考えは捨て、なるべく人が多いところを進もうとする自分がおかしかった。

ルート変更を余儀なくされる……。
ルート変更を余儀なくされる……。

本来は、これを後編として終わる予定が、もう少し長くなりそうなので、これを中編として、後日、後編を書くことにしよう。いや、電気自動車の長旅は、もうなんと言っていいやら……後編へ続く。

編集執筆者

1963年福岡県出身。86年九州大学工学部卒業後、朝日新聞社入社。その後、学習研究社にてファッション女性誌編集者、ダイヤモンド社にてWebマスター、雑誌編集長、書籍編集などを経て、2007年メディア・ナレッジ設立。代表に就任。出版&電子出版、Webプロデューサー、PRコンサルタントとして活動。現在は、駒沢女子大学教授、桜美林大学非常勤講師を務める。専門は「コミュニケーション」「編集論」。

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