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お笑い番組 のトランプ政権批判に見る米メディアの気骨

立岩陽一郎InFact編集長
夫人と米赤十字の会合に出席したトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

トランプ大統領への抗議活動が各地で続く米国。米NBCテレビのお笑い番組「サタデーナイト・ライブ(Saturday Night Live)」で俳優のアレック・ボールドウィンさん扮する「大統領」のハチャメチャぶりが人気だが、その2月4日の放送が話題を呼んでいる。

サタデーナイト・ライブ(NBCテレビ)
サタデーナイト・ライブ(NBCテレビ)

この日、アレック・ボールドウィンさん扮する「大統領」とともに登場したのは死神。「大統領」は死神に「バノン」と話しかけ、何をしたら良いか指示を求める。そしてメキシコ、豪州、ドイツの首脳に次々に電話。

豪州との会話で、豪ターンブル首相役のタレントが次のように話を向ける。

「ところで、大統領閣下、オバマ大統領の時に約束した難民の受け入れはお願いします」

(参考記事:米記者から「出来レース」批判された安倍首相国連会見

顔をしかめた後に爆発する「大統領」。

「難民はあり得ない」

そして叫び始める。

「米国第一、くたばれ豪州。嫌なら戦争だ!」

そしてガチャンと電話を置き、死神に向かう。

「バノン、あれで大丈夫か?」

頷く死神。それを見て安堵する「大統領」。

言うまでもなく死神はバノン主席戦略官。トランプ大統領がバノン戦略官の指示に従って滅茶苦茶をやっているという筋立てだ。

極めつけはこれだろうか。「大統領」が最後に死神に、「大統領閣下、ではこちらへ」と話して席を空ける。そこに座る死神。そして横の席に退いた「大統領」はおもちゃで遊び始める。実はバノン主席戦略官こそがホワイトハウスの主であると痛烈に批判したものだ。

(参考記事:名誉毀損か言論封殺か DHC吉田会長訴訟始まる  被告が反論「社会的強者が批判を嫌っての訴訟」)

まだ続く。次はマスコミとの緊張した関係が続くホワイトハウスのスパイサー報道官がやり玉だ。扮したのは女性タレントのメリッサ・マカーシーさん。記者会見で、抗議活動の止まないイスラム教徒の入国禁止問題について話し始める。

サタデーナイト・ライブ(NBCテレビ)
サタデーナイト・ライブ(NBCテレビ)

ニューヨーク・タイムズ紙の記者が質問。

「その入国禁止の件ですが・・・」

「違う、入国禁止とは言っていない。それは勝手に君らが言っている言葉だ」

「いやいや、そうではないですよ。大統領はツイートで、『イスラム教徒の入国禁止措置について…』と書いています」

「いや、そう言ったのは君だ。君が言ったんだ。それは君の言葉だ」

言っていることは破たんしている。「報道官」は、「お前らもCNNのようになるぞ」と恫喝。

すると場面がかわって、CNN記者が檻に入れられている場面が出てくる。

メディア批判を続けるトランプ政権だが、以前紹介したABCテレビのインタビューの様に米メディアも黙っていない。その姿勢がお笑い番組にまで現れているところに米国社会の健全性を見る。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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