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小学校英語に関する世論調査、一覧

寺沢拓敬言語社会学者

「小学校英語に教員の半数近くが反対」―その意味は?(寺沢拓敬) - 個人 - Yahoo!ニュース

上記の記事で私は、小学校英語教科化に対し小学校教員の多くが反対していることを指摘した。

その中で「一般の人は賛成多数だが、現場の教員はそうではない」ということを書いたこともあり、読んだ方から「一般の人がどれだけ賛成しているのか知りたい」という質問を頂いた。

この問題については、拙著『「日本人と英語」の社会学』の第12章で扱っている。もっとも、同章の主たる目的は、小学校英語を支持する世論がどのような要因に左右されているか明らかにするというものであって、単にどれだけ賛成しているのかという問いとはちょっと違う。しかし、分析の「下準備」として、過去の世論調査を整理している部分があるので、この情報を紹介する。調査の詳細は、同書を参照して頂きたい。

注記

  1. 以下はすべて原則としてランダムサンプリング調査であり、インターネット調査にありがちな恣意的な回答者選択ではない。とくにバイラルメディアなどではネット調査による英語教育に関する世論調査(と称するもの)が出回っているが、本記事では意図的に除外している。
  2. 以下の調査はすべて比較的大規模である。最低でもサンプルサイズは2,000である。その点で各回答者のパーセンテージの標本誤差についてそれほど深刻に考える必要はない。
  3. 小学校英語教科化の賛否を問うたものはない。「教科化」がホットな話題になったのは最近のことなので無理もないことである。おそらくだが、今後、どこかの報道機関が「教科化」に焦点をあてた世論調査を実施するように思う。
  4. 以下のリストは完全ではない。最近の調査がとりこぼされている恐れがある。これは同書の執筆時期(2014年夏)のせいである。少なくとも2013年までの調査はサーベイしているが、とりこぼしがあるかもしれない。今後、新たなものが見つかったら、アップデートする予定である(もし取りこぼしているものをご存知の方がいたらご教示いただけるとありがたいです)

世論調査のリスト

各調査の調査名、調査次期、および結果を「賛成」がどれだけいるかという観点から要約した。見ると明らかな通り、基本的に世論は小学校英語(あるいは英語教育の早期化)に非常に好意的である。

読売新聞世論調査 1998年3月

27% の人が、積極的に進めるべきものとして「小学校からの英語教育開始」を選ぶ(多肢選択型・多重回答あり)

読売新聞世論調査 2000年04月

回答者の86%が、小学校で英語を教えるのを「望ましい」あるいは「どちらかといえば望ましい」と回答

NHK 放送文化研究所「英語第 2 公用語等に関する調査」2000年5月

回答者の81% が、小学校での英語教育に「まったく賛成」あるいは「どちらかというと賛成」

読売新聞世論調査 2004年01月

回答者の87% が、英語を正式な科目にすることに「賛成」あるいは「どちらかといえば賛成」

読売新聞世論調査 2005年01月

回答者の48% が、「国語や算数の力をきちんと身につける」ことよりも「早い時期から英語を学ばせる」ことを重視

読売新聞世論調査 2006年05月

回答者の67% が、英語を小学校 5 年から必修にすることに、賛成あるいはどちらかといえば賛成

朝日新聞世論調査 2008年3月

回答者の76% が、小 5 という開始時期は「適切」あるいは「遅すぎる」

日本版総合的社会調査 2010年 2-4月

「学校での英語教育は、どのくらいの時期から始めるのがよいと思いますか」という問いに対し、「小学校入学前から」が29%、「小1・2 」が27%、「小3・4」が17%、「小5・6」が15%、「中学校から」が11%。

詳細:大阪商業大学 JGSS研究センター

言語社会学者

関西学院大学社会学部准教授。博士(学術)。言語(とくに英語)に関する人々の行動・態度や教育制度について、統計や史料を駆使して研究している。著書に、『小学校英語のジレンマ』(岩波新書、2020年)、『「日本人」と英語の社会学』(研究社、2015年)、『「なんで英語やるの?」の戦後史』(研究社、2014年)などがある。

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