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日曜日に遊びたいから投票に行かないのは、同世代の仲間を裏切るカッコ悪い行為なんじゃなかろうか

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
結局、シニア世代しか投票にいかないという構図は変えられないのでしょうか(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

いよいよ明日は参議院選挙の投票日です。

相変わらずメディアの盛り上がりに比べて、世の中的には関心が上がらない選挙になってしまっているようですが、一方で東浩紀さんのこんな記事がネットでちょっと話題になっていました。

ぼくは民進党に入れる(東浩紀)|ポリタス

タイトルにインパクトがあることもあり、賛否両論の様々な反応があったようですが。

今までの選挙であれば支持政党を明言しないどころか棄権を匂わせてきた東さんが、ここまではっきりとあえてタイトルで投票する先を明確にして記事を書いたところに、東さんの既存の政治への深い失望や危機感がにじみ出ているように思います。

正直、私自身も、日本が二大政党制になれば万年政権与党だった自民党も危機感を持って、両方が切磋琢磨してもっと良い政治をやってくれるようになるかと期待していた口ですが。

いざ民主党が政権を取ってみたら失策続きで残念ながら空中分解し、二大政党制どころか一昔前よりも分かりやすい自民党公明党の安定政権になってしまい、民主党政権以前の雰囲気どころかそれ以上に硬直的な印象を受けるシーンもありますし。

野党側は新党ブームになってしまい、小学生が考えたような党名の政党が乱立するどころか、挙げ句の果てには「支持政党なし」という選挙制度のバグをついたような政党まで登場してくる始末。

おまけにこの政党に200万人ぐらい騙されてしまうんじゃないかという懸念もあるみたいですから世も末です。

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「支持政党なし」議席獲得の可能性――騙される有権者が200万人いるとも

ハッキリ言って、真面目に今の政治を考えている人ほど、今回の選挙は気持ちが盛り上がらないと思いますし、東さんが書いてたように消去法で考えれば考えるほど投票すべき政党が見つからず、投票に行くモチベーションが全くわきおこらない人は私だけではないはずです。

でも、それでも、やっぱり私たちは投票に行かなければ始まらない、と思います。

政治家がシニア世代を重視するのは当然

若い世代にとって、日本の今の政治の問題点はハッキリしています。

それはどこの政党の政治家も、日本の若い世代の未来よりも、シニア世代の今を重視してしまっている、ということです。

細かい点で言えば、そうではない人もいるかもしれませんが、例えばどこの政党も現在の高齢者向けの社会福祉をカットして、将来の世代の負担を減らすことを提言しません。どう見てもシニア世代重視の傾向があります。

参考:消費増税の延期は正しかったか 識者に聞く

で、この理由もハッキリしてるんですよね。

若い世代が投票に行かないから、です。

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総務省|国政選挙の年代別投票率の推移について

上の世代は別として、20代、30代は綺麗にワースト2を守っています。

まぁ、私はもう40代半ばですから、もはや若い世代ではないわけですが(涙)。 

ただでも20代、30代は60代に比べて人数で負けてるわけですから、投票率でも負けてたら投票人数では圧倒的に差がつくわけです。

「国会議員の仕事は日本の未来を考えることなのに、老人ばっかり重視する」と文句を言う前に、若い世代はまず投票に行かなければ、そもそも国会議員の視界に入ってこないわけですよ。

自分の来年の給料が投票で決まると想像して下さい。

100人のうち70人が投票してくれる60代向けと

100人のうち30人程度しか投票しない20代向けと

あなたならどっちの世代に対して良い顔しますか?

答えは明確ですよね。

国会議員の場合には給料どころか、クビになるか採用されるかどうかが投票で決まるわけですから、そりゃちゃんと投票してくれるシニア世代が喜ぶ政策に注力して当たり前なわけです。

だから、私たちは国会議員に日本の未来のために仕事をして欲しければ、とにかく投票をしなければいけないわけです。

「投票なんて行かないよ、格好悪いじゃん」

とか言ってること自体が、自分達の仲間の世代の未来に対して害をなす行為かもしれないわけです。

投票に行かないことを自慢している人に、それがカッコ悪い告白なんだと気づいてもらわないといけないわけです。

未来をかけた世代対抗綱引き大会が開催されているというのに、仲間がズル休みしたせいで負けたとしたら、本来は仲間たちから後ろ指さされても仕方ない話なはずなんですよね。

若い世代が政治に興味を持てないのは当たり前

とはいえ、若い世代が選挙に興味を持てないのは当たり前です。

だって政治家が若い世代の未来よりもシニア世代の今を重視してしまってるわけですから。

でも政治家が若い世代の未来を真剣に考えないのは、若い世代が投票に来ないからなんです。

若い世代がカッコいいと思える政治家が出てこなければ、若い世代が選挙に興味を持てないわけで、ここには実に根が深いスパイラルが存在します。

本当は、海外のどこかの国みたいに投票に行ったら何かもらえるとか、行かないと罰則があるとかすれば、日本でも間違いなく投票率は上がるわけですが。

残念ながら、今の既存の選挙の仕組みで選ばれた政治家が、わざわざ自分が不利になる可能性のあるルール改正なんかするわけ無いんですよね。

ネット選挙解禁ですら実現するのに10年以上の長い時間がかかってしまったわけですから。

そもそも、今の若い世代の投票率が低いのは、親世代であるシニア世代による教育が悪かったからでもあるわけですが、それを今更言っていても仕方がないわけです。現時点では結果的にシニア世代は綱引きの敵チームとして勝利し続ける結果になっているわけですから。

悪意があったかどうかは別として、結果的に敵になっている世代に騙されたと文句言ってても仕方がないんですよね。

そういう意味では、とにかく今の政治を変えるためには、シニア世代の投票で選ばれたと感じてる既存の政治家に頼るのではなく。

・若い世代の投票率をとにかく何とかして上げる

・政治家が若い世代のことも考えないと落選するかもと思う

・若い世代の方を向いて話し始める政治家が増える

・若い世代が政治家の話や政治に興味を持つ

(最初に戻る)

というサイクルをちょっとずつでも回し始めないとダメなんです。

投票に行くのは未来への投資

そりゃね、大事な日曜日ですからね、他のコトしたいですよね。

投票行くの面倒くさいですよね。

正直、私もそうです。

でも、一日遊ぶことを優先して自分達の世代の投票率が下がったために、政治家がますます若い世代のことを考えず、日本の未来よりも今のシニア世代のための施策ばかり優先してしまう、と思ってみて下さい。

そうするとシニア世代もその構造に問題意識を感じなくなっちゃうわけです。

本来シニア世代も若い世代の親世代なんですから、鬼じゃないんですから、正しい政治家が正しくリーダーシップをとって、シニア世代に対して「日本の未来のために、若い世代の将来のために、自分たちの子供世代、孫世代のために、今もう少し我慢してください」と訴えてくれれば、我慢してくれるはずなんですよ。

日本人は戦争中にあれだけ「欲しがりません勝つまでは」と我慢した(させられた)民族なんですから。

政治家が、本当に正しい未来のための「我慢」を提示してくれれば、シニア世代も一緒に若い世代の未来を考えられるはずなんですよ。

若い世代が投票に行かないという行為自体が、日本の政治家やシニア世代が未来の世代を考えない原因になってるわけです。

逆に言うと、投票に行くという行為自体が、日本の未来のための投資と言えます。

政治に全く興味無い、という人達こそが投票に行かないことには、私たちが興味を持てる政治はやってこないわけです。

ひょっとしたら今回の選挙では、投票したい政治家もいなければ、投票したい政党もいないかもしれませんが。

とにもかくにも投票率を上げないと始まらないわけで。

特に私よりも若い世代の方々には、とにかく投票するという行為自体が政治家へのメッセージになると思って、是非投票に行って欲しいなと思うわけです。

オバマ革命は20代が生んだ

8年前、アメリカでは、20代の若い世代が圧倒的にオバマを指示したことで、初の黒人大統領が地滑り的な勝利で選出されるという歴史的な出来事が起こりました。

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参考:オバマ大統領選挙とソーシャルテクノロジー

日本でも、いつか同じことが起こらないとは限らないわけです。

逆に、若い世代が投票に行かないと、イギリスでシニア世代の多くが離脱に投票した結果EU離脱してしまって若い世代の将来に禍根を残してしまったように、日本の政治がシニア世代の今を重視し続けることになってしまうわけです。

もし皆さんの中にも同じような問題意識をお持ちの方がいたら、是非投票した後にツイッターとかFacebookとかに「投票に行った」と報告したり、「#投票」とか「#投票したよ」とかハッシュタグつけてインスタとかに写真ポストしてみても良いと思うんですよね。

それを見て、投票日を忘れていた仲間が1人でも投票しに行ってくれるかもしれませんし。

投票をカッコ悪い行為だと思い込んでた仲間が思い直して投票しに行ってくれるかもしれませんし。

政治家の人達が、ソーシャルメディア使って日々ランチの写真ばかりシェアしてるような人も、ちゃんと投票に行くんだなと気がついてくれるかもしれないですし。

私たちが「未来の政治家のために投票した」というメッセージを出し続けてていれば、いつか日本にも本当の意味で、若い世代や私たちの子供達の未来を真剣に考えてくれる政治家が出てきて、私たちの方を向いて政治活動をしてくれるはずで。

その時には、今の私たちの投票用紙の一枚一枚が、未来の世代のための大事な寄付になったと振り返ることができるはず。

そう自分に言い聞かせて、日曜日は私も重い腰をあげて投票所に行きたいと思います。

まぁ、正直なところ、だからといって私自身は現時点でも一体全体誰に投票すれば良いのやら、残念ながら全く腹は決まっていないわけですが。

長くなりましたので、今日のところこの辺で。

noteプロデューサー/ブロガー

新卒で入社したNTTを若気の至りで飛び出して、仕事が上手くいかずに路頭に迷いかけたところ、ブログを書きはじめたおかげで人生が救われる。現在は書籍「普通の人のためのSNSの教科書」を出版するなど、noteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についてのサポートを行っている。

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