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【JAZZ】カナダが生んだ歌姫はジャズの振れ幅の大きさに気づかせてくれる女神として日本に降臨する

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

話題のジャズの(あるいはジャズ的な)アルバムを取り上げて、成り立ちや聴きどころなどを解説。今回はブリア・スコンバーグ『イントロデューシング・ブリア・スコンバーグ』。

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introducing BRIA SKONBERG
introducing BRIA SKONBERG

ブリア・スコンバーグはカナダ出身のトランペットも操るヴォーカリスト。ファースト・リーダー・アルバムをリリースしたのは2009年。その後にニューヨークへ移って、ウィントン・マルサリス一派と共演していることからもわかるように、トラディショナルなスタイルのジャズにリスペクトしているミュージシャンだ。女性でヴォーカル兼トランペット奏者というのも珍しいけど、チェット・ベイカーを通り越してサッチモまでいっちゃうのは、アメリカの隣でアメリカの文化を斜めから見ているようなところがあるカナダの出身ならではといえるかもしれない。

日本で歌手としてデビューした20代の女性が「ワタシ、神楽坂はん子さんに憧れてプロをめざしたんです」っていったら(おいおい、だいじょーぶかよこの子は…)となるだろうけど、動画サイトでブルンジに住んでいるアフリカンな少女が軽く小節を回しながら「みんな私が悪いのよ」を見事に歌いきったらアクセス数がスーザン・ボイルを抜いちゃった、みたいなことに近いんじゃないかと思ったんだけど…。

いや、つまらない揶揄はスコンバーグの魅力を損なうからいかんな。

つい、最近のジャズ系と称する女性ヴォーカルはアレンジやカヴァーの範囲が似通っていて「なんだかなー」と思っていたものだから、このブリア・スコンバーグの特異性を際立たせたくなってしまったよ。

後付けでは出せない個性に注目

で、本作は別の意味でも盛りだくさんで、2012年のアメリカ・デビュー作である『So Is The Day』と、最新録音の『Into Your Own』をカップリングさせた、日本に彼女を紹介するためのスペシャルなアルバム。

どちらのアルバムも彼女のオリジナルが中心で、そこでしっかりと前述の特異性を発揮しているから、標榜している個性が後付けでないことは明白。

スウィングに憧れた少女の付け焼き刃ではないと感じるのは、きっと彼女の波長がすっぽり100年ぐらいの振れ幅でジャズという波間を漂っていることができるシンクロニシティをもつ才能だからなのだろう。

♪Bria Skonberg EPK SO IS THE DAY

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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