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【ジャズ生】楽理がムードを包み込む新感覚派のデビュー・ステージ|北川とわ@JZ Brat

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、北川とわのデビュー・アルバム発売記念公演。

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北川とわ『Into a Mirage』
北川とわ『Into a Mirage』

全曲オリジナルというストイックな方針を貫くSonic Laboratoryという四人編成バンドが始動したのは2013年。

リーダーの北川とわは、国立音楽大学卒業後に桐朋学園大学研究科作曲専攻へと進んだ“理論派”と呼べる存在だ。

Sonic Laboratoryは2015年にトリオへと“トランスフォーム”してレコーディングを果たす。そして世に送り出されることになったのが、北川とわのファースト・アルバム『イントゥ・ア・ミラージュ』だ。

ジャズ専門誌でそのアルバムのレヴューを担当したボクは、彼女が繰り出すサウンドについて“プログレ感が強いにもかかわらず、メロディによるストーリー性を優先させる作風”と評した。

現在、日本の“ピアノ・ジャズ”のシーンでは、ビートを重視して疾走感を強調したものと、メロディを浮き立たせるためにナチュラル感を強調するものという、2つの勢力が台頭している。

北川とわき“ジャズ”は、その2つのあいだで意外に深く存在している“溝”を、まるで巨大なホチキスでバチッとつなぎ止めてしまったような印象を受けた。

それは強引であるものの、直感を裏打ちするだけの作曲家的かつ的確なアプローチによって絶妙なバランスを生み出そうとしているように感じたのだ。

アルバム発売を記念する当夜は、その“新触感”を体験できる貴重なステージになるだろう。

では、行ってきます!

●公演概要

4月5日(火) 開場17:30/開演 1st 19:30 2nd 21:00

会場:JZ Brat SOUND OF TOKYO(東京・渋谷)

出演:北川とわ(ピアノ)、箭島裕治(ベース)、岩瀬立飛(ドラム)

♪ 北川とわ 1st デビューアルバム Into a Mirage

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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