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【クッキングコンテストの今】独学者 杉本敬三氏が優勝した「RED U-35」は何が新しいのか?

東龍グルメジャーナリスト
RED U-35 2013優勝作品(杉本敬三氏)

オープンな料理コンテスト

RED U-35 2013決勝大会出場者
RED U-35 2013決勝大会出場者

「【クッキングコンテストの今】24回目を迎える日本系ホテルグループの料理コンクール」「【クッキングコンテストの今】実力ある若手料理人を辞めさせず育成するには?」で料理コンテストについてご紹介してきました。いずれとも、ホテル内の料理人を育成することが目的なので、ホテルグループに閉じています。

では、ホテルグループやレストラングループに閉じていない、オープンで大規模な料理コンテストはあるのでしょうか。

海外からも参加があるジャパン・ケーキショー東京

高級ホテルや一流レストランの料理人が積極的に参加したり、大きくメディアに取り上げられたり、食のジャーナリストから注目されたりするという意味において、日本ではオープンで大規模な料理コンテストは少ないと言えます。

唯一挙げるとすれば、料理ではなくお菓子になりますが、パティシエやショコラティエを対象とし、アジアを中心とした海外からも参加がある「ジャパン・ケーキショー東京」くらいでしょうか。

昨年初めて開催されたRED U-35

RED U-35 2014オープニングレセプション
RED U-35 2014オープニングレセプション

こういった状況の中で、若手料理人をターゲットにした本格的な料理コンテスト「RED U-35」が昨年初めて開催されました。

第1回目が評価されて注目されたので、2014年に第2回目を開催することになり、それに先駆けて4月3日にウェスティンホテル東京でオープニングレセプションが執り行われました。

RED U-35とはどういった料理コンテストなのでしょうか。

スターシェフを見いだす

RED U-35は「RYORININ's EMERGING DREAM UNDER 35」の略称・通称です。

夢と野望を抱く、新しい世代の、新しい価値観の料理人(スターシェフ)を見いだし、国内外を問わず世の中に後押ししていくため、これまでの料理コンテストとはまったく異なる視点で、日本の食業界の総力を挙げて開催するコンペティションです。(対象は35歳未満の料理人)

この大会を通じて、未来を担う若き料理人たちが大きな目標を抱くことで、これからの日本の料理界全体の価値向上・底上げにもつながることを願っています。

35歳未満の若手料理人からスターシェフの金の卵ならぬ「RED EGG(優勝者に授けられる称号)」を発掘することをミッションとしています。

第一回目は杉本敬三氏が優勝

RED U-35 2013優勝者 杉本敬三氏
RED U-35 2013優勝者 杉本敬三氏

第1回となった2013年大会は、応募総数451名からファイナルに6名が進出、グランプリであるRED EGGに杉本敬三氏(当時34歳)を選出し、盛況の内に幕を閉じました。その後もファイナリストらは様々なステージで飛躍しています。

第1回目大会では、新橋にあるフランス料理店「レストラン ラ フィネス」オーナーシェフである杉本敬三氏が見事優勝しました。

出場者の人数の多さもさることながら、決勝大会に残ったフランス料理「ミシェル・ブラストーヤジャポン」小岸明寛氏、フランス料理「L'ATELIER de Joel Robuchon」料理長 関谷健一朗氏、中国料理「Wakiya 迎賓茶樓」平賀大輔氏のように、有名料理店の料理人が出場していたのは大会に魅力があったということでしょう。

こういった有名料理店の料理人がいる中で、「師匠をつくらず、有名店のレシピを持たない独学者」であると本人も自負し、全く無名と言ってよい杉本氏が優勝したことは、大会の方向性を示すことにもなり、意味が大きかったです。

新しい時代の料理コンテスト

総合プロデューサ・放送作家 小山薫堂氏
総合プロデューサ・放送作家 小山薫堂氏

総合プロデューサであり放送作家の小山薫堂氏が「腕前・センス・人間力が問われる」と述べ、杉本氏が「付け焼きでは通用しない。普段の実力が試される」と振り返ったように、新しい時代のコンテストであることを印象付けました。

師匠の系譜やレストランのグループではなく個人単位で、課題の完成度だけではなくメッセージ性やプレゼンテーション力も、そして、スターシェフへの道を切り開くための人間性も審査しているところが新しいと言えます。

RED U-35 2014概要

第2回目となるRED U-35はどういった内容になるのでしょう。オープニングレセプションで発表された概要は以下の通りです。

テーマ食材

昨年は卵でした。今年は和食の料理人も扱い易い食材です。

審査員

審査員
審査員

料理界のカリスマ、著名なジャーナリストが審査員として参加しています。こういった方たちに審査してもらえるということだけでも、非常に価値はあると言えるでしょう。

  • 辻芳樹氏(辻調理師専門学校)
  • 落合務氏(LA BETTOLA)
  • 村田吉弘氏(菊乃井)
  • 吉野建氏(ステラマリスジャポン)
  • 田村隆氏(つきぢ田村)
  • 脇屋友詞氏(Wakiya一笑美茶樓)
  • 田崎真也氏(ソムリエ)
  • 門上武司氏(フードコラムニスト)
  • 太田進氏(オータパブリケイションズ)
  • 犬養裕美子氏(レストランジャーナリスト)

審査項目

技術はあくまでも1項目でしかありません。スターシェフになるための資質も問われます。

  • 料理人としての「情熱、想い、夢」
  • 技術力、考案力、表現力、センス
  • 将来性、可能性

スケジュール

映像審査があるところがユニークです。訪問審査で店を訪れ、普段どうやって仕事しているかを見定めることも新しいと言えます。

  • 1次審査 5月中旬~6月中旬

書類審査(50名選出)<BRONZE EGG>

  • 2次審査 7月

映像審査(25名選出)<SILVER EGG>

  • 3次審査 8月上旬~9月下旬

訪問審査(5名選出)<GOLD EGG>

  • 最終審査 11/3

実食・面接(1名選出)<RED EGG>

表彰

RED EGGとGOLD EGG
RED EGGとGOLD EGG

大きな賞金額もさることながら副賞1も料理人にとっては嬉しいでしょう。副賞2は、メディアに幅広い人脈を持つ小山氏や、アラアイアンスパートナーズおよびメディアパートナーズの協力を得て、テレビや雑誌、Webなどの出演を後押しするというものです。大会後にしっかりとフォローすることからも、スターシェフを育てるという想いが伝わってきます。

  • グランプリ(RED EGG)

賞金 500万円

副賞1「世界一憧れる料理店に食べに行ける研修!」

副賞2「REDメンバーが導くスターへの道!」

  • 準グランプリ(GOLD EGG)

賞金 50万円

協力

  • 主催

RED U-35実行委員会

  • 共催

株式会社ぐるなび

  • アラアイアンスパートナーズ

「アサヒビール株式会社」「味の素株式会社」「江崎グリコ株式会社」「キューピー」「ハウス食品株式会社」といった食品会社から、「エルキューイ」「株式会社ノリタケカンパニーリミテド」「レイノー」といったテーブルウェアの会社、「日本航空株式会社」「アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド」といった食とは関連のない会社まで、大きな企業が協賛しています。

  • メディアパートナーズ

「あまから手帖」「週刊ホテルレストラン」「専門料理」「料理王国」「料理通信」といった食の関連、「東京ウォーカー」「DIME」といった情報誌、「福島テレビ」「BSフジ」といった放送局など、協力な発信力があるメディアが協力しています。

  • 技術協力

辻調理師専門学校が全面的にバックアップしています。

誰が次のスターシェフとなるのか

小山氏は「第1回目は反響が大きかった」、それを受けて「第2回目の審査基準はどうするか審査委員と話し合ったが、90分では全然足りない」と運営側の気持ちが高まっていると話します。

料理人に対しては、小山氏が語る「才能ある若手料理人を発掘してスターシェフに育てたい」という本筋としてのミッションと「料理界の芥川賞や直木賞のようになりたい」というブランドの方向性が心に響いているからこそ、第1回目から多くの優秀な料理人が出場したのでしょう。

誰が杉本氏に続くスターシェフとなるのでしょうか。間もなく始まるRED-U35 2014に注目したいです。

情報

詳しくは公式サイトをご確認ください。

参考

レストラン図鑑

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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