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どこよりも早い初秋のクリスマスケーキ発表会2016年

東龍グルメジャーナリスト
どこよりも早い初秋のクリスマスケーキ発表会2016年

9月のクリスマスケーキ発表会

「どこよりも早い真夏のクリスマスケーキ発表会2016年」でご紹介したように、今年もホテルのクリスマスケーキ発表会は真夏の8月に始まりました。

しかし、ホテルのクリスマスケーキの発表会は8月が本番ではありません。9月の方が多く開催されるのです。

  • 2016/08/23 リーガロイヤルホテル東京/発表会
  • 2016/08/25 ハイアット リージェンシー 東京/発表会
  • 2016/08/29 京王プラザホテル/試食会
  • 2016/09/06 パレスホテル東京/発表会
  • 2016/09/06 アマン東京/発表会
  • 2016/09/15 マンダリン オリエンタル 東京/発表会
  • 2016/09/21 ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ/発表会

9月のクリスマスケーキ発表会を2回に分けて詳しくご紹介しましょう。

パレスホテル東京

ボノム・ド・ネージュ(パレスホテル東京)
ボノム・ド・ネージュ(パレスホテル東京)

リニューアル・グランドオープンしてから、非常に勢いのあるパレスホテル東京では、3連休なのでファミリー向けに8種類のクリスマススイーツを用意しています。昨年はもう1週間くらい早くクリスマスケーキ発表会を開催しました。今年も同じように早く開催するはずでしたが、使える会場の関係で少し遅くなったという事情があります。

昨年販売した煙突に入りきらないほどの大きなプレゼントを届けるサンタクロースを表現した「レーヴ」の続編となるサンタクロースが無事に煙突に入れたシーンを表現した「ヘクセンハウス」、新しい形のブッシュドノエル「ブッシュ・オペラ」、スノーマンを模った「ボノム・ド・ネージュ」、ツリーに見立てた背の高いスフレフロマージュ「サパン・ド・ノエル」が目を引きます。

ペストリーシェフ 窪田修己氏は「大きなクリスマスケーキは昨年1つだけだったが、今年は2つご用意した。ご家族に特に喜んでいただけるはず」と話します。

ブッシュ・オペラ(パレスホテル東京)
ブッシュ・オペラ(パレスホテル東京)

「ブッシュ・オペラ」のユニークなデザインについて尋ねると「子供と出かけた時に見た朽木にヒントを得た。ブッシュ ド ノエルは朽木の方が趣がある。箱をスライドして取り出せるのも他にはない」として、古典菓子を再解釈したと説明します。

「ヘクセンハウス」の中にはクッキーが、「ボノム・ド・ネージュ」は中にボンボンショコラが入っていてワクワク感がありますが、窪田氏は「昨年は割って食べるクリスマスケーキをご提供したが、今年は『割らないで食べるクリスマスケーキ』をテーマにした」と昨年とは異なる興味深い視点を披露します。

パレスホテル東京ではフレッシュケーキだけではなく焼菓子にも力を入れています。「シュトーレン」「ボーネン・シュトーレン」「加賀ほうじ茶のシュトーレン」と3種類物シュトーレンを販売していることに関して、ベーカリーシェフ星敏幸氏は「毎年3種類のシュトーレンを販売しており、1つは新作にしている。今年は『加賀ほうじ茶のシュトーレン』が新作」と説明します。

シュトーレン3種(パレスホテル東京)
シュトーレン3種(パレスホテル東京)

「加賀ほうじ茶のシュトーレン」は牛乳で煮出したほうじ茶だけではなく、粉末にした茶葉も生地に仕込み、さらにはマジパンの中にも茶葉が加えられているので、同じほうじ茶で味付けしながらも複雑な味わいに仕上がっています。2年も考えたという星氏の力作と言ってもよいでしょう。

また、パネトーネにも力を入れています。星氏は、本場のイタリアのパネトーネのおいしさを再認識し、5月にイタリア料理の知人から分けてもらったイタリアのパネトーネ種を育てています。「クリスマスの時期だけのために、1年間ずっと育てていかなければならない」と苦笑いしますが、「シュトーレンは私達ブーランジェ(パン職人)が作るもの。イースト菌を使う食べ物は全て私たちの専門。パティシエよりもおいしく作らないといけない」と真剣な眼差しで語ります。

ドライフルーツとナッツをたっぷりと使用して洋梨風味に仕上げた、サラミを模した形状のフランス・アルザス地方のイースト菓子「ベラヴェッカ・アン・ソシソン」も販売するなど、パレスホテル東京はフレッシュケーキはもちろん、焼菓子ぶも注目です。

マンダリン オリエンタル 東京

リュミエール(マンダリン オリエンタル 東京)
リュミエール(マンダリン オリエンタル 東京)

マンダリン オリエンタル 東京はクリスマスケーキ発表会で、クリスマスケーキに加えて、おせちやスパグッズも紹介しました。クリスマスケーキ発表会で、クリスマスの料理を発表することはよくありますが、おせちまで発表することは珍しいです。クリスマスケーキ発表会がそれだけ影響力のある場であるということでしょう。

また、昨年は会場にサンタクロースが現れましたが、今年はもっとケーキに注目してもらいたいということで、サンタクロースは現れませんでした。来場したメディアの人々はケーキに意識が集中していたようなので、この狙いは成功だったようです。

クリスマススイーツは5種類のクリスマスケーキを含む全12種あります。新作はクリスマスオーナメントをイメージした「リュミエール」とスコットランド・ダンディー地方の伝統菓子「ダンディーケーキ」。

「リュミエール」は昨年好評だった「スノーマン」をあえて出さず、新しく創った自信作です。美しい球型になっており、台にはクリスマスツリーをプリントするなどディテールも細かいです。「クリスマスプレゼントを開ける時のようなドキドキ感がある」とシェフパティシエ 大浦和也氏が説明するように、上の蓋を開けられるようになっています。いちごムースとフロマージュブランのムース、野いちごやブルーベリー、ラズベリーといった構成でフルーツのフレッシュさが感じられる一品でしょう。

ダンディーケーキ(マンダリン オリエンタル 東京)
ダンディーケーキ(マンダリン オリエンタル 東京)

「ダンディーケーキ」はラムに1ヶ月漬けたフルーツ、ナッツやスパイスに、スコッチのグレンモーレンジを加えて、重厚な大人のフルーツケーキに仕上げています。

定番となったショートケーキは今年もまた2種類を用意。独自ブレンドした北海道の生クリームや「あまおう」をふんだんに使った「プレミアム フレーズ ド ラックス エディション」、とちおとめを使用した「フレーズ ド ノエル」を用意し、より多くのニーズに応えています。

今年は「世界中のクリスマスを味わえる」をコンセプトにしたカラフルなマカロン(5個セット販売)にも注目です。5月から考え始めた力作で、スペイン(トゥロン、オレンジ色)、イギリス(クリスマス・プディング、緑色)、ベルギー(スペキュロス、ゴールド色)、ドイツ(グリューワイン、紫色)、日本(いちごのショートケーキ、赤色)をテーマにしています。

ベルギーのマカロンにはスペキュロスが入っているのかと訊くと大浦氏は「本当にスペキュロスが入っていたのでは、ありきたりでつまらない。他の素材でスペキュロスの味を再現した。どれも味を再現するのに苦労した」と答えます。

マカロン5種(マンダリン オリエンタル 東京)
マカロン5種(マンダリン オリエンタル 東京)

クリスマスのキャラクターをモチーフにした「クッキー」にも手間がかかっています。今年は全てのクッキーにアイシングして、昨年よりも凝ったものを作り上げています。特にクリスマスオーナメントを象ったクッキーは型がなく、生地を手でくっつけて成形しているので、作るのに時間を要しているのです。

シェフベーカー 大橋哲雄氏は「昨年と同じで『シュトレン』はプレーンとチョコレート味の2種類。温度を変えてみるなどして試行錯誤を重ね、さらにしっとり感が増している」と地道に追求してきたと述べます。

副総料理長 高木忠宏氏が「毎年新しいものをご提案し、お客様に飽きられないように励んでいる」と力強く話す通り、2016年7月シェフパティシエに就任したばかりの大浦氏による初めてのクリスマスケーキは非常に意欲的で楽しみです。

ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ

切り株(ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ)
切り株(ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ)

「世界最高峰パティシエ徳永純司氏が移籍、その裏側を読み解く」でも詳細を書きましたが、ホテル インターコンチネンタル 東京ベイは、徳永氏がエグゼクティブ シェフ パティシエに就任してから初めてのクリスマスケーキ発表会となります。それだけに今年は、クリスマスケーキ発表会を大々的に行うこととなりました。

また、9月15日から発売されたばかりのボンボンショコラも紹介しました。徳永氏がいちから作り上げた渾身の商品で、自身のデッサン入りの説明も添えられているほど力が入っています。

今年のクリスマスケーキについて総料理長 岸義明氏は「今年のクリスマスケーキはさらに進化したので、前年比150パーセントの販売を目標にしている」として、徳永氏、および、「ニューヨークラウンジ ブティック」マネージャーであり、ヴァンドゥーズでもある鈴木映氏に対して極めて高い期待を寄せます。

今年は徳永氏の新しいレシピで4種類のホールケーキとシュトーレンを販売します。徳永氏は「お子様からご年配の方まで、様々な方のお口に合うようにするため、アルコールは使わなかった。その代わり、香り付けするために、ピューレの糖度に気を遣うなど手間を掛けている」とこだわりをみせます。

「キャラメルショコラオランジュ」は徳永氏が「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー 2015」チョコレートピエス部門第1位に輝いた代表作で、人気商品のクリスマスバージョン。「ノエル ドゥ ラ タンタシオン」は「誘惑のクリスマス」を意味し、ブラックベリーとラズベリーを合わせたタイベリーとホワイトチョコレートと紅茶を合わせています。「切り株」はチョコレートの家、どんぐり、きのこ、葉っぱを飾ったファンシーなブッシュ ド ノエルです。バナナやイチゴ、カスタードクリームなど万人受けする味に仕上げています。「チョコレートボール」はサンタ、トナカイ、クリスマスボールと3種類を用意し、アマンドショコラを中に忍ばせています。「鑑賞用にもできる」という徳永氏の言葉通り、可愛らしいです。

クリスマスショートケーキ(ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ)
クリスマスショートケーキ(ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ)

主役の「クリスマスショートケーキ」は「特にスポンジにこだわった。生地は時間をかけて作り、食べ応えのある食感に仕上げた」と、徳永氏が自信を覗かせる一品。通常オペレーションを簡略化したいので、サイズの種類を増やしたくないものですが、「クリスマスショートケーキ」は3サイズも用意しています。鈴木氏は「お2人様から大人数様まで、等しくご満足いただきたいという想いが強かった」と動機を話し、「徳永シェフもお客様のことを第一に考えている。従って、手間がかかろうとも、3サイズ用意することにした」と、10センチ、12センチ、15センチのクリスマスショートケーキができた経緯を振り返ります。

徳永純司氏のクリスマスケーキ発表会(ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ)
徳永純司氏のクリスマスケーキ発表会(ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ)

実はこの発表会では、これまでに私が体験したことのないことが起きました。日本でクリスマススイーツと言えばショートケーキに加えて最近ではシュトーレンが定番となっていますが、そのシュトーレンが公開されず、試食もなかったのです。

その理由について徳永氏は「シュトーレンだけは、まだ納得できる完成度に至っておらず、試作している。クリスマスまでには必ず、お客様にご満足いただけるシュトーレンを完成させるので、お待ちいただきたい」と真摯に説明しました。

発表会を行う以上、普通は発表会に間に合わせるものです。しかし、発表会はそれ自身が目的ではなく、あくまでも商品を知ってもらうための手段です。発表会に合わるために、クオリティに納得がいかないものを商品化したのでは本末転倒でしょう。こういったことを当たり前のように実践することは難しいものです。徳永氏がホテル インターコンチネンタル 東京ベイで初めて生み出すクリスマスケーキの数々に期待が高まります。

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元記事

レストラン図鑑に元記事が掲載されています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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