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漁師が選んだ本当においしい魚「プライドフィッシュ」を食べたことがありますか?

東龍グルメジャーナリスト
伊豆の地きんめブイヤベース仕立て

プライドフィッシュとは

プライドフィッシュをご存知でしょうか。もしくは、プライドフィッシュを食べたことがありますか。

プライドフィッシュは魚の種類ではありません。

プライドフィッシュは、「漁師が選んだ、本当においしい魚」であり、県が春夏秋冬と季節ごとに選んだ、地元が誇る魚のことなのです。

そのプライドフィッシュの選定基準は以下の通りです。

  • 本当においしい漁師自慢の魚であること
  • 地元で水揚げされたものであること
  • 旬を明確にした魚であること
  • 各会員が独自に設けている基準(サイズ、水揚げ海域等)をクリアしている魚であること

出典:プライドフィッシュとは

地産地消が叫ばれて久しい中、地元の魚を知り尽くした漁師が季節毎の魚を選んだというのは消費者にとっても分かり易くてよいでしょう。

プライドフィッシュは海に面していない内陸の県を除いた県で選定されており、東京では伊豆諸島で漁獲量1位の「八丈春とび」が選ばれています。

どうして生まれたのか

全国規模となる大きなプライドフィッシュのプロジェクトは、どうして生まれたのでしょうか。以下の2点が記載されています。

  • 進む魚離れと、消費者が抱くイメージのギャップを埋めるため
  • 「週末に、旅行先で、おいしい魚を食べたい」というニーズに応えるため

出典:プロジェクトについて

プライドフィッシュが興味深いのは、水産庁が2012年から推進している、簡易的に調理できる水産加工品ファストフィッシュとは反対の方向性であることです。

ファストフィッシュはより手軽に簡単であることによって、プライドフィッシュは本当においしいということによって、魚離れを食い止めようとしています。

どちらか一方が正解ということはありませんが、質の高い魚があることを周知し、県のブランディングにつなげられるということでは、プライドフィッシュはよい取り組みです。

そして、この本当においしい「プライドフィッシュ」を使って、全館挙げたイベントを行っているホテルがあります。

それは、ホテルグランドパレスです。プライドフィッシュを使ってフェアを行った初めてのホテルになります。

ホテルグランドパレスでフェア

伊豆の地きんめブイヤベース仕立て
伊豆の地きんめブイヤベース仕立て

<フレンチ復権のヒントか? 夏に注目したいホテルのフランス料理>でも紹介したホテルグランドパレスは、2017年1月16日から2月28日にかけて、フランス料理、鉄板焼から日本料理や中国料理と色々なレストランで、以下の通り、プライドフィッシュを使用しています。

  • 日本料理 千代田/静岡県のプライドフィッシュ「伊豆の地きんめ」

伊豆の地きんめと新筍の山椒焼き

伊豆の地きんめの霙鍋 開業以来伝統の自家製ポン酢

  • 広東料理 萬壽苑/青森県のプライドフィッシュ「陸奥湾ほたて」

陸奥湾ほたてのブラックビーンズセイロ蒸し

  • フランス料理 クラウンレストラン/静岡県のプライドフィッシュ「伊豆の地きんめ」

伊豆の地きんめのブイヤベース 南仏の香り

  • 鉄板焼 千鳥/静岡県のプライドフィッシュ「伊豆の地きんめ」

伊豆の地きんめブイヤベース仕立て

  • レストラン&カフェ カトレア/青森県のプライドフィッシュ「陸奥湾ほたて」

陸奥湾ほたてのピラフ シャトーソース

特に注目したいのは、「千鳥」で隠れメニューとなっているブイヤベースを「伊豆の地きんめ」で作っていること、「カトレア」で人気の「帆立貝柱のピラフ」を「陸奥湾ほたて」でグレードアップしていることです。

ホテルグランドパレスが自信を持つメニューをプライドフィッシュによって質を高めています。

「伊豆の地きんめ」と「陸奥湾ほたて」

フェアで使われている「伊豆の地きんめ」と「陸奥湾ほたて」の詳細は以下の通りです。

  • 静岡県「伊豆の地きんめ」

静岡県を代表する魚の一つ、キンメダイ。伊豆の地きんめとして知られています。

伊豆の地きんめは、獲れたてで活きがよく、極めて高い鮮度が自慢です。

深海で育つ魚ならではの、たっぷりと身につけた皮下脂肪の濃厚な旨みをご堪能いただけます。

  • 青森県「陸奥湾ほたて」

陸奥湾には八甲田山系と白神山地の深いブナ林から清らかで栄養豊富な水が注がれているためエサとなるプランクトンが豊富です。この恵まれた自然環境の中で育てられた陸奥湾ほたては、柔らかく肉厚で、まろやかな甘みが特徴です。

出典:全国のプライドフィッシュ

3回目となるプライドフィッシュフェアを45周年記念に

伊勢海老をホテルグランドパレス伝統のニューバーグソースで
伊勢海老をホテルグランドパレス伝統のニューバーグソースで

ホテルグランドパレスによるプライドフィッシュフェアは、実は今回で3回目となりますが、最初のきっかけはプライドフィッシュを推進する「全国漁業協同組合連合会」から、プライドフィッシュの取り組みについて聞いたことでした。

2016年2月の1回目は「伊豆の地きんめ」を、2016年6月の2回目は「陸奥湾ほたて」を使ってフェアを行い、そして今回は「伊豆の地きんめ」と「陸奥湾ほたて」の2つを使うことになったのです。

プライドフィッシュは漁師が自信を持って勧めるというコンセプトなので、質が高いですが値段も高いです。

しかし、今年2017年に迎えるホテルグランドパレスの開業45周年を記念して、伝統の料理や期間限定のスペシャルメニューを提供するにあたり、コストは気にせず質の高い食材を使おうということになって、2種類のプライドフィッシュを扱うことにしたのです。

さらに多くのプライドフィッシュを

陸奥湾ほたてのピラフ シャトーソース
陸奥湾ほたてのピラフ シャトーソース

毎年3月になるとホテルグランドパレスの周辺で桜が咲き誇り、ホテルグランドパレス自身も注目されますが、ホテルグランドパレスの料理は、45年間受け継がれてきた味に定評があるものの、あまり目立っているとは言えません。

それだけに、県に焦点を当てるために選定されたプライドフィッシュによって、ホテルグランドパレスの伝統の食にも焦点が当てられるようになったのは素晴らしいことです。

今後のプライドフィッシュフェアの展開について訊くと、料飲部 支配人 大山潔氏は「これからも続けていく。今後はさらに種類数も増やしていくので期待していただきたい」と力を込めますが、ホテルで初めてプライドフィッシュフェアを行ったホテルグランドパレスが、どのようにしてプライドフィッシュを広めていくのか、それによって、ホテルグランドパレスの料理がどのようにして注目されていくのか、見守っていきたいです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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