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デザートブッフェの炎上を通して、店と客に理解してもらいたい、何よりも重要な1つのこと

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

デザートブッフェで炎上

札幌PARCOにあるカフェで以下のようなお詫び文が掲載されました。

このカフェでは、平日の15時から17時まで、90分限定でフォンデュがオーダー方式のブッフェとなる「デザートフォンデュビュッフェ」を行っています。

これを利用した客が、店の対応がよくなかったと憤り、Twitterに投稿して炎上しています。

私はこれまでにも客と店の関係性について以下の通り述べてきました。

今回の件も話題にはなっているものの、残念ながら、ブッフェの仕組みも含めて考察されたものがほとんどありません。

従って、ここでは一つ一つ冷静に考えてみたいです。

客の不満点

客が不満を持ったのは以下の点です。

  • 同行者が小麦アレルギーと申告したのに小麦メニューを提供された
  • オーダーすると1回目は10分、2回目は12分も待たされた
  • 待たされたにも関わらず、提供されたものはイチゴが1粒だけであった

最初に盛り合わせが出てきて、これを食べてから好きなものを食べられるというシステムになっています。客は同行者が小麦アレルギーだから食べられないと伝えましたが、全く対応されず、ワッフルやケーキなど小麦を使った盛り合わせが提供されたというのです。

同行者が食べられないため、件の客が1人でこの盛り合わせを全て食べてから、好きなものをオーダーしたところ、90分の制限時間があるにも関わらず、10分や12分といった長い時間待たされたということです。

そして、ようやく提供されたものがたったイチゴ1粒だったということで、不満が爆発してTwitterへの投稿に至りました。

デザートブッフェの仕組み

まず、この店の「デザートフォンデュビュッフェ」の仕組みについて整理してみましょう。

  • オーダー方式で従業員が運んでくる
  • 最初に盛り合わせが提供される
  • 90分の制限時間がある

それぞれの仕組みについて説明します。

オーダー方式で従業員が運んでくる

ブッフェにはバイキング形式(ブッフェ形式)とオーダー形式とがありますが。今回については後者です。アラカルトと同じような感覚で、客が従業員にオーダーして、運んで来てもらいます。デザートブッフェや中国料理のブッフェで多い形式です。

1回のオーダーに付き、1人あたり3品程度が標準ですが、こちらでは特に品数の上限は設けられていなかったようなので良心的でしょう。ただ、イチゴを注文して、その内容量がたった1粒というのは少な過ぎます。

最初に盛り合わせが提供される

最初に盛り合わせが提供されるのは、ブッフェでは珍しくありません。これには2つの理由があります。

1つ目は混雑を緩和するためです。最初から自由にオーダーできるとなると、オペレーションが滞ってしまい、客を待たせる時間が長くなってしまうからです。

特にファーストオーダーが中々運ばれてこないと、客の不満は高まります。従って、最初はお勧めの盛り合わせを提供する手法はよく採られているのです。

2つ目は、店側の事情となります。最初から単価の高いものばかりをオーダーされると困るので、それなりにコストが計算できるものが提供されることが多いのです。

90分の制限時間がある

最後に制限時間が設けられているのは、今の時代では全く普通のことです。優雅なホテルのブッフェでさえ制限時間が設けられていることがほとんどで、制限時間がないブッフェを探す方が難しいくらいでしょう(もちろん、実際にはいくつかあります)。

また90分という時間は短くありません。町場であれば60分や70分というのも見掛けられるだけに平均以上の長さです。

問題点

これまで「デザートフォンデュビュッフェ」のシステムについて考えてみた上で、店の問題点は以下の通りです。

  • 適切なアレルギー対応がされていなかった
  • 1品あたりの分量が少なかった

それぞれについて説明しましょう。

適切なアレルギー対応がされていなかった

最初の盛り合わせを提供すること自体は全く問題ありませんが、 適切にアレルギー対応がされていなかったのは残念です。最初の盛り合わせに何を盛り合わせるかは店が決めてよいことなので、小麦を使っていなものを提供すればよかったのではないでしょうか。

ただ、ほとんどがアルバイトで構成されたカフェの従業員にとって、デザートフォンデュに相応しい盛り合わせを例外的に提供することは難しいことも配慮しなければなりません。

何故ならば、デザートブッフェを廉価な780円で提供できるということは、店側もそれなりの定型的な対応しかできないことを意味しているからです。換言すれば、最初の盛り合わせが店側の都合によるものだからこそ、この価格でデザートブッフェを行うことができていることも一考に値します。

1品あたりの分量が少なかった

1品あたりの分量に関しては、明らかに少ないと考えられます。分量というのは、オーダーしてから提供できる時間も考慮しなければならないからです。

混雑している時にオーダー方式で10分前後要するのは珍しいことではありません。

しかし、そうであれば、10分程度は持つようなボリュームを提供するべきです。そう考えれば、イチゴ1粒で10分持たせるというのは無理があるでしょう。

冒頭の店のお詫び文には「1種類につき1個は間違った運用で、本来は複数個を提供」という旨がありますが、10分程度の提供時間であれば、複数個でも少ないかも知れません。そうであれば、従業員は、提供までに時間を要するので、複数種類の注文を勧めるべきだったのではないでしょうか。

ブッフェにおいて店と客に理解してもらいたいこと

店の対応がまずかった点がいくつも見受けられますが、ブッフェはアラカルトやコース料理とは違って非常に特殊なシステムであるだけに、店と客によく理解してもらいたい点があります。

それは、店は「ブッフェであれば、客が訪れる」、客は「ブッフェであれば、得ができる」と浅慮することです。

ブッフェにはブッフェなりの仕組みがあるので、店はアラカルトやコース料理の延長で考えず、ブッフェならではの信念を持って提供しなければなりません。客は客で、店は慈善事業ではなく営利事業であることを念頭に置きつつ、ブッフェのお得感を享受しなければならないのです。

店だけが楽して儲けられるシステムもなければ、客ばかりが必ず得できるシステムも存在しません。今回の件は、安易にブッフェを行う店と、幻想を抱く客に対する、ひとつの示唆となっているように思えます。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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