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おそらく一生復帰できないチノパン。他人事ではまったくない

大宮冬洋フリーライター

●今朝の100円ニュース:元フジアナに略式命令(朝日新聞)

愛知県に引っ越して以来、車の運転をするべきか否かで迷い続けている。ほとんどのスポットに最寄り駅がある東京都内とは異なり、車でしか行けない魅力的な場所が多いからだ。友人におすすめの店を聞くと、「駅からも近いよ。10分ぐらい」といった返事だが、徒歩10分ではなく車で10分だ。歩いたらどれぐらいかかるのか想像もできない。

老若男女を問わず、成人の大半が車を運転しているのが地方都市の実情だ。子どもの頃から親が運転する車に乗り、高校卒業直前に免許を取る。ほとんど自転車感覚だ。ここに住んでいると自転車に乗れない中学生になった気分になる。知り合って仲良くなった人たちと気軽に集まって遊ぶこともできない。

このまま年齢を重ねるとますます寂しく不便なことになりそうだ。妻に助手席に乗ってもらい、たまに運転の練習をしている。毎週のように繰り返していると少しずつ慣れてきて、道順を覚えた田舎道ならば落ち着いて走れるようになった。

しかし、ヒヤリとすることも少なくない。僕は妄想癖があるので運転中に現実感がなくなってしまうことがある。信号で右左折をするときに、横断中の歩行者がいる可能性を考慮に入れずにアクセルを踏んだことも一度や二度ではない。

とっさの判断にも自信がない。焦るとおかしな行動をしてしまうのだ。混雑している駐車場で、後ろで待っている車を気にして慌てて駐車しようとして、歩行者をひきそうになったこともある。

今朝の朝日新聞で、「チノパン」の愛称で人気だった元フジテレビアナウンサーへの罰金100万円の略式命令が出たと報じられていた。今年1月に静岡県沼津市のホテル駐車場で38歳の男性をはねて死なせ、自動車運転過失致死罪で起訴されていたのだ。当時は大ニュースとなったが、昨日の命令で法的には一区切りついたことになる。

だが、チノパンはおそらく一生、社会の表舞台には立てないだろう。麻薬や傷害ぐらいの罪ならば復帰する人は少なくないが、日本社会における「人殺し」への忌避感は桁違いである。亡くなった被害者が一番悲惨だが、チノパンも社会的には死んでしまったようなものだ。彼女は100万円どころではない贖罪をすでに済ませていると思う。

他人事ではまったくない。日常生活で誤って人を殺してしまうほどの力を持ちうるのは、車の運転時に集中している。そして、チノパンのような有名人ではなくても、死亡事故を起こしたら一巻の終わりだ。

冒頭の迷いに結論が出そうだ。運転に慣れた人が助手席に座っていない限り、ハンドルを握るのは控えようと思う。友だちと遊びにくい程度のデメリットでは、死亡事故を起こすというハイリスクは背負えない。運転練習よりも仕事に精を出して、必要なときはハイヤーを頼めるぐらいに稼ぎたい。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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