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潮干狩り、タケノコ掘り、雑魚釣り…。地方暮らしを楽しむ鍵は「狩猟採集生活」

大宮冬洋フリーライター

●今朝の100円ニュース:乗っ込み秒読みクロダイ(中日スポーツ)

低山と三河湾に囲まれた陸の孤島のような地方都市、愛知県蒲郡市で暮らし始めて2回目の春を迎えている。交通の便は悪くない(名古屋まで在来線で40分、東京まで新幹線で2時間)ので、仕事がある平日は都会で過ごすことが多い。

僕はインタビューを中心に仕事をしているので、良くも悪くも意欲的な人が全国から集まる都会は効率が良い。地下鉄とタクシーを使ってちょこちょこ移動して多様な人と会い、おいしい各国料理を食べながら話を聞いていると気分が高揚してくる。

しかし、1週間も滞在していると心身が疲れて来てしまう。「人酔い」するような感覚だ。人口密度が低くて空が広い蒲郡に帰りたくて仕方ない。子どもの頃、西武グループが開発する前の埼玉県所沢市で雑草に囲まれて育った記憶が体に残っているのだろうか。

人口8万人の蒲郡にも魅力的な同世代はいるし、居心地もセンスも良い店はある。ただし、質はともかく量は都会とは比較にならない。昨日は新しくできたカレーショップに友だちと出かけてみたら、知り合いを3人も見つけてしまった。閉じられた人間関係が落ち着くとも言えるし、刺激に乏しいとも言える。

地方暮らしの場合、数の限られた人間や人工物だけに楽しみを見出すのは無理がある。都会と比べると閉塞感が募ってしまうからだ。

その代わり、都会ではありえない自然環境が近くにある。先月は無人島で潮干狩りをして、今月は竹やぶでタケノコを掘りまくった。今朝の中日スポーツによると、上手な釣り人はすでにクロダイやカサゴを磯釣りしているようだが、もう少し水温が上がってくれば僕でも堤防からの雑魚釣りを楽しめるだろう。

幼い頃、2歳上の兄にくっつくようにしてザリガニや虫取りをし、野蒜や桑の実をつまんで食べていた日々を思い出す。30年近く経ったいま、あの頃とほぼ同じ感覚で遊べている。近くに海がある分だけ「食べられるもの」が多く獲れることは驚きだ。同好の仲間との物々交換を含めれば、食卓の1割ぐらいは農耕と無縁の食べ物でまかなえるようになるかもしれない。

車の運転が苦手で寂しがりの僕は、兄貴分の親族や友だちに「狩場」に連れて行ってもらうことが多い。性格や行動パターンも兄と一緒に遊んでいた小さい頃と変わっていない。

気の合う友だちや仕事仲間と都会の洗練された店で会食するのは無性に楽しい。一方で、面倒見のいい「兄」や「姉」と狩猟採集に熱中するのもかけがえのない時間だ。向き合って言葉を交わすのではなく、同じ方向を見て言葉少なに作業に集中する心地良さ。そして、獲物を家族の食卓に並べるときの誇らしさ……。

安心感と期待感に包まれながら自然の恵みを得ることは地方暮らしの特権だと思う。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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