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筆者はなぜ「ベビーカー」で炎上したのか。最大の失火原因は文章の嫌み。

大宮冬洋フリーライター

今月6日にプレジデントオンラインに掲載したコラム「日本男子は、なぜベビーカー女子を助けないのか」は、24時間で1万件を超えるツイートがなされた。内容の9割以上が筆者の僕に対する非難・抗議・罵倒。「これが炎上というものなのか」と気づいたときは遅かった。

炎上の具体的な経緯と心境については本日発売の『週刊文春』に書いた。ベビーカーに関する考え方の変化(変化のなさ)は、ベビーカー使用者であるフリー編集者の洪愛舜さんとの対話を11月頭に「エコン-マグ」に載せる予定だ。ここでは、「なぜ炎上したのか」について文章論に限って書いておきたい。今後の「火の用心」のために……。

コラムは3ページ構成になっている。1ページ目は「僕は手助けしますよ」という小見出しで、ベビーカーなどを持っている女性を僕自身は手助けしている様子を描いた。善意のページである。

2ページ目は一転して「ベビーカーは親のためのもの」との小見出しで、ベビーカーは親の負担を軽減する便利な道具に過ぎず、混雑した都会では乗っている子どもには危険で周囲の通行人には迷惑だと主張している。ベビーカー使用者に対する悪意をむき出しにしたページだ。

さらに3ページ目では、ベビーカーの運搬を手助けするという自分の善行の内側には「おぶってあげればいいのに」という反感が潜んでいると書いた。悪意を善意で包んだページである。

わかりにくい構成になっているが、全体としてのメッセージは3ページ目に凝縮されている。「混雑した都会でのベビーカーの使用は避けるべきだ」という悪意をそのまま発するとさすがにマズイと感じて、自分は手助けしているという善意で衝撃度を和らげたつもりだった。

しかし、結果は逆効果であった。言葉は丁寧だけれど内容は攻撃そのもの。つまり「嫌み」であり、受け取った人のショックは単なる悪口よりも深いものになる。嫌みを発した僕への反発と反撃が強まるのは当然だ。

テレビで人気の毒舌芸人たち(特に有吉弘行とマツコ・デラックス)を見ていると、僕とは正反対の言動をしていることがわかる。言葉は鋭くて荒っぽい。怒りや敵意を露わにしているように聞こえる。一方で、善意や温かい感情はできるだけ押し隠している。

彼らは善意を悪意で包んでいるのだ。よく練られた人柄に加えて高度なトーク能力があり、それでも「言葉が独り歩きして炎上する」リスクがあることを十分に覚悟しているのだろう。その緊張感のある芸が彼らの人気を支えているのだと思う。

僕は不用意に「善意で包んだ悪意」を不特定多数に向けて発信してしまった。その毒は1万倍になって我が身に返ってくる。

子なし既婚男性の立場ながら「混雑した時間帯や場所でのベビーカーの使用はできるだけ避けるべきだ」と主張したことには後悔はない。しかし、嫌みを発するべきではなかった。炎上によって内臓が縮み上がるような恐怖を味わい、まさに「肝に銘じる」体験となった。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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