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男が結婚を決めるとき。au「桃太郎とかぐや姫」CMに見る危機と希望のダブルパンチ

大宮冬洋フリーライター

桃太郎なら小栗旬が演じるペプシのCMのほうがカッコいいのにな、と最初は思っていた。しかし、今ではauのCMで新しいシリーズが流れるたびに画面を凝視している自分がいる。

鬼退治というシリアスな目的は果たし終え、ひたすらブラブラして男友だちと遊んでいる桃太郎(松田翔太)も平和でいいなと感じる。友だちの浦島太郎(桐谷健太)と金太郎(濱田岳)とのやりとりが、ひたすら軽くてバカっぽいのも微笑ましい。

そんな桃太郎が年貢を納めるときが急にやってきた。出生の秘密(植物から誕生)を共有しているかぐや姫(有村架純)と恋人になって浮かれていたら、竹林の中でプロポーズする羽目になったのだ。

「桃ちゃん」

「何? かぐちゃん」

「私と家族になろ?」

「いや、まあ、いつかはね」

「今すぐじゃダメなの!?」(ウソ号泣)

「ええっ、じゃ、いますぐなろう」

「はい、家族」(満面の笑顔)

この様子を覗き見していた浦島と金太郎が「鬼嫁だな~」と感想を漏らすと、聞きつけたかぐや姫は一瞬彼らをにらみつける。か、次の瞬間には「主人がお世話になっております~」と女房モードで桃太郎の親友二人を歓待する。

当然の展開に呆然とする桃太郎。「家族になっちゃった…」と立ち尽くす。自由と放埓の日々がいきなり終わってしまったことを後悔しているのかもしれない。だが、妻となるかぐや姫に迎え入れられた浦島と金太郎から、「幸せになっちゃったな」と祝福され、少しだけ安心したような、これからの結婚生活を楽しみにしているような表情を浮かべる。

この短い映像に、独身生活を楽しんできた男性が結婚を決める際の2要素が凝縮されていると僕は思う。すなわち、「危機」と「希望」である。

いつまでもフワフワと自由気ままに生きていたいと思うのは男も女も変わらない。男性の場合は、「そろそろ家族を作りたい」と感じるタイミングが女性よりも10年ぐらい遅れる。ジョージ・クルーニーのようにモテる男性であればなおさらだろう。

そんな男性でも激しい恋はする。付き合っている女性のうち3人に1人ぐらいには、「絶対に手放したくない」と無意識のうちに感じる時期がある。付き合いが長くなると気持ちの高まりが静まってきて、他の女性にも目が向くようになったりするのだが……。

かぐや姫のような手堅い女性は、この「男が盛り上がっている時期」を見逃さない。そして、「しっかりつかまえてくれないと(結婚しないと)パッと消えてしまいますよ」と揺さぶりをかけるのだ。ほとんど逆プロポーズである。結婚したい女性はこれを恥ずかしがってはいけない。

自分が恋する彼女から結婚相手に選ばれた喜びと、その人がいなくなってしまうかもしれない危機感に挟まれて、男性の頭は混乱する。先のことはよくわからないけれど、とにかく彼女を失いたくない。絶対に後悔する予感がするからだ。

そして結婚を決めるのだが、直後に哀しみが襲ってくる。独身の自由気ままな日々を永遠に失ってしまうのか。場合によっては、「結婚すると明言したわけではない」と逃げ出してしまうケースもある。

かぐや姫はこの揺り戻しもきちんと掌握している。桃太郎にとって楽しい独身生活の象徴ともいうべき親友2人を笑顔で受け入れ、味方にしてしまっているのだ。桃太郎としては、「結婚しても友だちを失うわけではないんだ。家族になったかぐや姫も含めて、4人で楽しく過ごせるかもしれない」と希望を見出す。

男同士で遊ぶことが好きな男性にとって、妻となる女性が自分の男友だちとどのように接するのかは重要である。無理をせずに自然に溶け込み、「たまには男だけで遊んできなよ」と送り出してくれる妻であったら、どんなに安心するだろう。

逆に言えば、恋人の友だちや家族と会ってみて、「どうもそりが合わない」と感じることが多いのであれば、二人だけの恋愛に留めておいたほうがいい。親しい人たちが離れていくような結婚生活は豊かなものになりにくいからだ。

かぐや姫の場合、まずは自分のほうから心を開いた浦島と金太郎の反応を鋭く観察したことだろう。軽いノリだけど情に厚くて清々しい英雄たちである。桃太郎をやっかむことなく、彼の幸せを心底願って笑っている。かぐや姫も「この人たちとなら仲良くなれる。月での結婚式にも招待しよう」と思ったことだろう。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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