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au CMの桃太郎、浦島太郎、金太郎、鬼に見る「男性にこそ求められる女子力」とは? 

大宮冬洋フリーライター

録画したテレビ番組を観るときはCMを飛ばすのが普通だが、auのCMシリーズだけは巻き戻して鑑賞してしまう。桃太郎、浦島太郎、金太郎の3大英雄が「中2ノリ」で遊んだり恋をするという内容だ。確かな演技力のある人気俳優たちによるひたすら明るく軽いやりとりは確かに面白い。しかし、同シリーズに長く惹きつけられるのは別の要素があると思う。それは、「悪人が出てこない。誰とも戦わず、むしろ積極的に仲良くなる」という設定である。

数少ない「戦い」は昔の思い出話として語られる。ただし、金太郎のライバルである熊は「すぐに手をついちゃうので相撲にならない」として片づけられ、桃太郎の仇敵・鬼は鳥アレルギーで倒されたという笑い話になっている。そして、彼はすでに5児のイクメンで、同じく「鬼嫁」を持つ桃太郎とは親しく交際している。

よく笑い、聞き上手で、可愛げがあり、心優しい――。auCMの桃太郎たちに共通するのは育ちの良さを感じさせる「女子力」であろう。

筆者は30代40代の男女関係を取材することが多いが、近年は成人女性の集まりを「女子会」などと呼ぶことが古くなったと感じる。男性の経済力が落ち、共働きが当たり前になっている現在は、女性に求められるのは女子力ではなく男気である。いざとなれば一家の大黒柱になるという気概と実力がなければ、本当の意味での共働きにはならないからだ。

一方の男性は、「稼いでいればすべて許される」「亭主元気で留守がいい」という時代ではない。たとえお金があったとしても、女性たちは夫との間に温かい人間関係を求めるようになっている(考えてみれば当たり前だ)。人間関係は夫婦だけで成り立つものではなく、それぞれが大切にしている人たちをお互いに尊重することが重要である。つまり、妻の家族や友人とも仲良くなり、近所づきあいも気兼ねなくできなければ、家庭での責任を果たしたといえない。逆に言えば、桃太郎たちのような女子力がある男性は、多様な人間関係の中に身を置く安らぎと豊かさを十二分に味わうことができるだろう。

現状はどうか。仕事場では明るくて前向きに振る舞っていても、プライベートではむっつりと無愛想な男性は少なくない。偏屈で、人の話を聞かず、高慢で、意地悪。謙虚を通り越して卑屈だったりして、一緒にいると居たたまれない気持ちになる男性もいる。桃太郎たちとは対極の存在だ。

桃太郎たちはリアルな中2男子や女子高生を決定的に凌駕している部分がある。中高生は特定の誰かをいじめることで結束を深めることが多いのに対して、桃太郎たちには仮想敵がいないのだ。仲間と一緒に過ごせることを純粋に喜び、励まし合う関係。もちろん、新しい友人も大歓迎だ。恐怖と排除ではなく好奇心と融和を友情の前提としているところが、大人の関係だと言える。

男気には気概と実力の両方が必要なのと同じく、「大人の女子力」も今日からすぐに身につくものではない。「新しい英雄」である桃太郎たちを見本とし、日常生活での実践が不可欠だ。利害関係で結びついている会社を離れたところで、誰も傷つけないくだらないおしゃべりを楽しめる友だちを作ることが試金石となるだろう。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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