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40代で本気で結婚したい女性がすべきこと~連載インタビュー(7)西口敦さん~

大宮冬洋フリーライター
名著『普通のダンナがなぜ見つからない?』の西口敦さん。現実的かつ論理的な人だ

「私はいま40歳です。結婚相手を見つけるのは大変だとはわかっています。でも、婚活をがんばっているんです。『あきらめろ』なんて言わないでください」

ある女性から抗議をされた。筆者が本連載で書いた「結婚のあきらめ適齢期。女性は39歳、男性は44歳で婚活をやめて自由になろう」を読んだらしい。ちょっと冷たい印象を受ける内容だったかもしれない。お詫びというわけではないが、識者を訪ね歩いて「40代の女性が本気で結婚したくなったらどうすればいいのか」を考えていきたい。

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結婚に関する取材を続けていると、取材対象者などから「この本は面白いですよ。婚活のバイブルです」とお勧めされることもある。その一つが『普通のダンナがなぜ見つからない?』(文藝春秋)だ。

著者の西口敦さんは、経営コンサルティング会社や金融機関でキャリアを積んだ後、大手結婚情報サービ会社のオーネット(現・楽天オーネット)に転じ、マーケティングと経営企画の責任者を務めた。その知識と経験をもとに、「普通の」女性が婚活して「普通の」男性と結ばれることの難しさを冷厳な数字と事実をもとに明らかにし、具体的な問題解決策を披露している。5年前に発行された本だが、独身女性を取り巻く環境(男性の低収入化など)は厳しさを増しており、この本の有効性はさらに高まっていると感じる。

西口さんは現在、経営コンサルタントおよびビジネススクールや経営幹部育成研修の講師として活躍している。本業の傍ら、婚活に関するセミナーや講演もときどきやっているらしい。結婚する意志のある40代女性についてアドバイスを聞きたい。かなり鋭角な回答が予想されるので、当事者となる女性は覚悟して読んでほしい。

――ご著書で、35歳の女性が5歳年齢を重ねるとお互いの希望がマッチする男性が3分の1に激減する、という指摘がありました。つまり、40歳以降の女性が結婚相手を探すのはとても難しいということですね。

私は「だから妥協しろ」とは言いません。妥協という言葉は嫌いです。ただし、(社会における)自分の立ち位置を正確に知ることは大切だと思っています。自分が希望する独身男性の数がどれぐらい少ないのか。そして、希望する男性が結婚相手に求める要件から、自分はどれほど外れてしまっているのか。ちゃんと把握することが第一歩です。特に40代前半の女性は、ある意味では一番厳しい状況に置かれていると言えるでしょう。

――キレイで働き者で性格も良いアラフォーの独身女性は少なくありません。でも、結婚になると大いに苦戦するのです。なぜなのでしょうか。

もはや構造上の問題ですね。需要と供給に大きなギャップが生じているのです。40代前半の女性は子どもを産み育てることをあきらめ切れていません。すると、相手の男性にも「若さ」を求めます。自分より5歳上までが精一杯のところでしょう。10歳も年上の男性だと、子どもが中高生ぐらいのうち彼は年金生活に入ってしまいますから。

では、安定的に稼いでいて、会話も普通にできて、人間的に尊敬できる40代後半の独身男性は何を求めるか。恋愛ではなく結婚の動機づけとしては、やはり「自分の子どもが欲しい」が真っ先に来ます。彼らにも最低限の医学的知識はあるので、40代の女性がどれだけ妊娠しにくいかは知っており、30代半ばまでの女性を探すことになるのです。

こうして、自分の希望と、希望する相手が求めるもののギャップが最も大きくなるのが40代前半。婚活が非常に難しいのは当然です。

――彼女たちはまったくモテないわけではありません。デートする相手はいたりします。

語弊を恐れずに言いますよ。それは結婚相手として見られているのでしょうか。それとも一時的な恋愛相手として見られているのでしょうか。もし「複数の独身男性からプロポーズされていて困る」のであれば、本当にモテているのでしょう。

でも、複数の男性からしつこくLINEが来るぐらいでモテていると勘違いしないでほしい。30代半ば以降の女性によくある現象ですが、結婚をする気はなくて一時的な恋愛だけが目的の男性、すなわち既婚者や遊び人からのアプローチが急激に増えるのです。それは彼女たちが求めているはずの「モテ」ではありません。

――では、一時的な恋愛ではなく結婚がしたい40代女性はどうすればいいのでしょうか。

結婚したい40代前半女性の希望を3つのパターンに分けて考えましょう。

(1)結婚して子どもがほしい

(2)(結婚はともかく)とにかく子どもがほしい

(3)人生のパートナーがほしい

以上の3つです。すでに申し上げた通り、(1)は大変に難しい。何としてでもこの狭い道を通りたいのであれば、自分の立場が弱いことをちゃんと認めて、たくさんの独身男性と会うしかありません。結婚相談所に登録する必要もあるでしょう。好きになっては振られることを繰り返さなければなりません。金と時間と気持ちを惜しみなく投入するしかないのです。

――出会いの数を増やし、自分から好きになる。ご著書で紹介されていた「成果=出会いの機会×交際成功率×決断力」の方程式ですね! しかし、合コン数が激減し、結婚相手としては見られにくくなり、男性を見る目は肥えているアラフォー女性は、掛け算をするほど厳しくなりそうです……。

そうですね。ですから、(2)に関しては、好きな男性と結婚せずに子どもを作る道が考えられます。40代前半の女性が「尊敬できる」のは、自分よりも年収が高くて会話も楽しい男性でしょう。彼らの95%ぐらいは既婚者です。ならば、セックスをして子どもを作って、婚外子として自分だけで育てる道もあります。

現実問題として、尊敬もできない男性と結婚して子どもができたとしても、3年後には離婚してシングルマザーになっていたりします。養育費もろくにもらえないこともあるでしょう。だったら、最初から一人で子どもを産み育てるのと大きな違いがあるでしょうか?

――おっしゃる通りですけど、現実にこの道を選択する人は少ない気がします。

もちろん、そうでしょう。実は大事なのは、この選択肢を一度は真剣に検討してみること。そして、やっぱり自分は1人では子どもを育てる経済力も根性も気合もないことをまずは認識することです。その認識がないと、厳しい(1)の道を歩むことはできません。

(2)は無理だから(1)をがんばったとします。それでも結婚できないまま3、4年が過ぎることも大いにあり得ます。残念ながら子どもを産むのはほぼ無理な年齢です。すると、今度は良いことも起きます。子どもを持つという呪縛から解放されて、結婚相手選びのハードルが大きく下がるのです。

――(3)の「人生のパートナー選び」に集中できるのですね。

そうです。まず、相手に求める年齢の枠が取り払われます。子どもが20歳のときに相手は何歳か、なんて考えなくてもいい。20歳上の男性とでも結婚できます。2人で助け合って自活できるだけの稼ぎがあればいいので、年収が自分よりも低い男性を選ぶこともできる。相手への許容範囲が広がり、恋愛を楽しんでパートナーを選べるようになるでしょう。

――この3つのパターンでは、結婚相手候補となる男性も異なりそうですね。

(1)の「結婚して子どもがほしい」を希望する女性は、実は、純粋なパートナーすなわち相方ではなく、家庭の「守護神」であり「家父長」を探していることが多いのです。共働きであっても、基本的には男性が家族の安心と安全と健康に最終責任を負う立場だと思っている。それが「普通のダンナ」を求める女性の実態です。でも、(3)であれば、もっとシンプルに相手を選ぶことができます。

ただし、(1)で苦労した経験をせずに、いきなり(3)に行くのは無理があります。痛い思いを避けていると、結局は経済的にすがる相手を求めてしまったり、過去の「パーフェクトな恋人」を基準にして相手の足りないところばかりを見てしまったりするからです。婚活で傷つくことで、相手の足りないところも許せるようになり、助け合う気持ちも生まれるのだと思います。

――最後に、40代の女性が「出会いの数」を増やす方法について教えてください。合コン、ではありませんよね。

合コンの機会などはもはや皆無でしょう。無料もしくは格安のネット婚活もおすすめできません。以前はちゃんとした男性が入っていたネット系のサービスでも、最近は遊び目的の人たちが急増しているからです。相手の女性を選ぶ基準も、ネットの場合はパッと見たビジュアル×年齢の要素が強すぎます。20代の女性たちにはとてもかなわないでしょう。

40代にもなると、生活や会話のレベルなど「自分の世界」が出来上がっているものです。異質なものを許容しにくくなっています。だからこそ、自分の所属する趣味や学校縁などのコミュニティをもう一度見直すべきです。コミュニティに、長年の友だちだけど恋愛対象ではない独身男性がいたとします。よく考えてください。絶対に、どう考えても、ありえない相手なのか、と。

――いいヤツなんだけど異性には見えない、という旧友がいたりしますよね。

そこで、いったん大手結婚情報サービスに入りましょう。数万円の入会金や月会費を惜しんではいけません。むしろ、結婚に真剣でない人を排除するためのスクリーニングフィーだと思ってください。40代女性にとって一番貴重な資源は時間です。結婚する気のない遊び人に振り回されるのは最大のリスクですから。

高所得者や医者など属性を絞った結婚相談所に入るのもNGです。引く手あまたの彼らは女性への要求水準がとても高いので40代女性は極めて不利であり、金と時間の無駄です。

数万人の会員がいる結婚情報サービスは「婚活市場そのもの」なのです。様々な男性と会うことができ、自分の立ち位置を知ることができるでしょう。ただし、やっぱり振られまくることを覚悟してください。何度も痛い思いをして、絶望する可能性もあります。

そのときにもう一度これまでの自分のコミュニティに戻って、気のおけない旧友男性と会ってみましょう。婚活市場では会話がまったくかみ合わずに苦しんだのに、彼とは話が弾みます。楽しい。決してドキドキするような好みのタイプではないけれど、真面目に働いている。彼がどんなに素敵な男性なのかを改めて知ることになるかもしれません。

学生時代の就職活動で数社から落とされただけで気持ちが深く沈んだことを思い出す。自分を否定されたような気分になった。くじけそうになった。全人格をさらすことになるお見合いで「お断り」されることが続いたら、就活とは比較にならないほど傷つくはずだ。あえてその道を選ばず、一人で豊かに生きていくことを決意するのもありだと思う。

一方で、本気で結婚したいのであれば、「金と時間と気持ちを惜しみなく投入する」道を避けて通ることはできない。それでも希望する成果は出ないかもしれないが、決して無意味ではない。「傷つくことで、相手の足りないところも許せるようになり、助け合う気持ちも生まれる」と西口さん。その言葉は真実だと筆者も思う。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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